ブレインフォグとは? | 発症する割合や継続期間についての最新情報
2023/03/25株式会社メディリードでは、保有している国内最大規模の疾患に関するデータベースであるMedilead Healthcare Panel(以下MHP)のデータを活用し、ニュース等で取り上げられている事象をコラム記事としてお届けいたします。当初のテーマは「コロナ後遺症」です。これから何回かに分けてコラム記事をお届けいたします。
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ブレインフォグとは? | 発症する割合や継続期間についての最新情報(この記事)
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「ブレインフォグ(brain fog)」という症状をご存知でしょうか。脳にモヤ(霧)がかかっているかのように頭がぼんやりし、考えがまとまらない、気分が上がらない、思い出せないといったことが続く症状のことです。コロナ以前から存在した症状ですが、2021年3月頃、新型コロナウイルス感染症の後遺症として発表されて以来、注目されるようになりました。
出典:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第2.0版(厚生労働省)
目次
「ブレインフォグ」を定義する明確な基準はないと言われています。厚生労働省が作成している資料には、
brain fog は,「脳の中に霧がかかったような」広義の認知機能障害の一種で,記憶障害,知的明晰さの欠如,集中力不足,精神的疲労,不安などを包含する.「頭がボーっとする」などの症状は特徴的であり,初めて経験する記憶障害,集中力低下などを伴うと戸惑いや焦りだけでなく,日常生活や就学・就労,職場復帰などの妨げにもなり得る。
とあります。(※1)具体的な症状としては、「頭がボーっとする」ことの他に、「物事が思い出せなくなる」「なかなか考えがまとまらない」「集中することが難しい」「何をするのも億劫で気力が湧かない」「人の話が入ってこない」「言葉がうまく出てこない」等がみられるようです。ただし、ブレインフォグはこのような症状の総称のことで、医学用語ではないため、うつ病のように診断名がつくことはありません。エビデンスが少なく、実際にうつ病や認知症との判断が難しいことも多いようです。先ほどの資料にも、
Brain fogはうつ病の部分症状である場合や、高齢者ではアルツハイマー病などの早期病態を反映している場合もある
とあります。
ブレインフォグの症状を引き起こす原因は様々あると言われています。たとえば、うつ病や双極性障害、脳疲労、ADHD、生理や更年期なども原因として挙げられます。最近では、これらに加えて新型コロナウイルス感染症の後遺症としても発症することがわかっています。これは、感染症やワクチン接種によって体が免疫反応を起こし、その免疫反応が脳を含めた全身に炎症を起こすためという説がありますが、明確な原因は現段階ではわかっていません。
当社が毎年調査を行っているMHPにおいても、新型コロナウイルスの後遺症の経験について聴取をしております。
2022年11月に実施した最新の調査によると、新型コロナウイルス感染症にかかったことのある18,255人のうち、ブレインフォグと思われる後遺症を経験したと回答した方は、2%でした。(※図1)
持続性の咳(12.5%)や味覚障害(7.8%)などの代表的な症状に比べると割合は低いものの、一定数の割合でブレインフォグの症状が発生していることが伺えます。
そもそもブレインフォグは、思考力低下、抑うつ症状、集中力低下、記憶障害といったさまざまな要素を合わせたものと考えられています。関連する症状を見ると、集中力の低下が5.7%、不安が2.8%、うつ病が1.5%、認知障害が0.6%となっており(※図1)、それらも含めると、ブレインフォグに関連する後遺症で悩んでいる方が多いことが伺えます。
次に、継続期間をみていきましょう。
上の表(図2)は、後遺症経験があると回答した方に、その症状がどのくらい続いたかを回答していただいたものです。
こちらによると、ブレインフォグの症状があった方のうち、3か月以内に症状が治まった方の割合は、約68%となっています。半年以内では85.2%となり、8割を超える方は半年以内に症状が治まることが伺えますが、一方で、1年以上続く方も7%みられます。
次に、ブレインフォグに関連する症状もみていくと、3か月以上症状が続いた方は、認知障害で53.9%、うつ病で47.6%、不安で37.7%でした。さらに1年以上続いた方は、それぞれ20.9%、17.8%、11.5%となっています。
発熱や頭痛、持続性の咳、味覚障害などの代表的な症状では、約9割近くの方が3か月以内に症状が治まったと回答しているため、これらに比べると、ブレインフォグや関連する症状は長く継続する傾向にあることが伺えます。
新型コロナウイルス感染症の後遺症によるブレインフォグは明確な原因がわかっていないため、現時点で有効な治療法は確立されていないのが現状です。今後の研究に期待したいところです。
ブレインフォグの症状が疑われる場合は、まずはかかりつけの医療機関や後遺症対応医療機関を受診してください。重症が疑われる場合や緊急性がある場合、脳神経内科や精神科などの専門医療機関を紹介してくれます。各自治体が発表している後遺症対応医療機関を参考にするとよいでしょう。
たとえば東京都の場合、以下のページにて確認できます。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/link/iryokikan.html
症状別に対応の可否を確認することもできますので、ブレインフォグに対応しているお近くの医療機関を受診してください。
新型コロナウイルス感染症の後遺症としてのブレインフォグについて解説いたしました。当社の調査では、コロナ後遺症としてブレインフォグの症状を発症している割合は2%だったものの、関連する症状を含めると決して少なくはない数字です。さらに多くの割合で発症しているという調査報告もあります。また、他の代表的な症状と比べると比較的長く継続する傾向がみられ、課題が多い状況にもかかわらず、まだエビデンスが少なく、明確な原因や有効な治療法は明らかになっていないのが現状です。もしブレインフォグの症状が疑われる場合は、まずはかかりつけの医療機関や後遺症対応医療機関を受診するようにしましょう。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、政府は、2023年5月8日に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を正式に決定しました。感染者の外出自粛や医療費の負担、マスク着用、医療機関への受診など、これまでと対策が大きく変わります。
今後も新型コロナウイルス感染症関連含め、わたしたちを取り巻く環境変化とMHPの調査結果を紐づけ、発信してまいります。
(※1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第2.0版(厚生労働省)27ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000952747.pdf
■ Medilead Healthcare Panel(MHP)について
MHPは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。
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