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摂食障害とは?データから読み取れる現状を解説

2023/10/27
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するデータベースであるMedilead Healthcare Panel(以下MHP)のデータを活用し、ニュース等で取り上げられている事象をコラム記事としてお届けいたします。

近年よく耳にするようになった摂食障害は、食事量や食べ方など、食行動を中心に様々な問題があらわれる精神疾患です。死亡率が他の精神疾患と比べて高く、深刻な病気の一つとされています。この記事では、摂食障害についての解説に加え、当社が所有しているMHP(Medilead Healthcare Panel)のデータから読み取れる現状について解説いたします。

摂食障害とは

摂食障害は、前述したとおり食行動に関する重篤な障害です。大きく分けて、拒食症(神経性やせ症)、過食症(神経性過食症)、過食性障害に分類されます。
それぞれの疾患について解説します。

拒食症(神経性やせ症)

拒食症は、医学的には神経性やせ症と言われ、痩せるため、もしくは太ることに対して恐れを抱くことから過度に食事量を制限し、極度な低体重となっている状態を指します。
必ずしも食欲がないわけではなく、食事制限をした反動で過食をし、嘔吐や下剤の大量使用をする場合もあります。

症状としては、脈拍数の減少、低体温、低血圧、骨粗しょう症、貧血、肝機能障害、低血糖、運動障害や意識障害などが挙げられます。女性の場合は無月経もみられます。死亡率も6~20%と高く、早期の対応が求められます。

過食症(神経性過食症)

いわゆる「過食症」と呼ばれる神経性過食症は、過食衝動をコントロールできず、短期間に大量の食べ物を詰め込むように摂取します。この過食は「むちゃ食い」とも呼ばれます。
過食に加え、嘔吐や下剤の乱用など、体重を増やさないための排出行為が見られることも特徴です。拒食症(神経性やせ症)の場合も過食嘔吐がみられる場合がありますが、厳密には区別ができないようです。
ただし、標準の健康状態より低い体重を維持していれば「神経性やせ症」、嘔吐や下剤乱用があっても標準体重あるいは過体重の状態にあれば「神経性過食症」だとする考えもあります。

また、拒食症(神経性やせ症)の場合は、病気であることを認めようとせず、治療を拒否するケースが多いことに対し、過食症(神経性過食症)の場合は、過食に対して罪悪感や自己嫌悪感を持っており、治療を希望するケースが多いと言われています。

過食嘔吐をし続けると、低カリウム血症や慢性腎不全、肝不全、急性腎不全などの合併症を引き起こす場合があります。最悪の場合、低カリウム血症から不整脈が起こり、突然死してしまうケースもあります。

過食性障害

過食性障害とは、明らかな過食を繰り返す病気です。大量に食べること、食べたあとに自己嫌悪や罪悪感をもつ点は神経性過食症と似ていますが、神経性過食症では、食べたあとに排出行為、絶食、過度の運動などの埋め合わせ行為があることに対し、過食性障害ではその行為はみられないことが特徴です。
過食性障害は、過体重、または肥満傾向の人によくみられるようです。
また、双極性障害、抑うつ障害、不安症などの精神障害を併発していることもあります。

摂食障害の原因

摂食障害になる要因は一つではなく、心理的要因、文化・社会的要因、性格的要因、家庭環境など、様々な要因が絡み合うと考えられます。
拒食症(神経性やせ症)と過食症(神経性過食症)は、根底に「痩せたい」という願望があることは概ね共通していますが、そこに至る原因は様々です。多くの患者さんは、自己評価の低下、傷ついた経験、不安、疎外感や孤独感、周囲の期待に応えられない罪悪感などを抱えています。
特に拒食症(神経性やせ症)になりやすい人は、家族間のコミュニケーションに問題を抱えていたり、ストレスに適切に対処できなかったりする傾向もみられます。その場合、痩せることを通して間接的に自身の気持ちを表現し、周囲に助けを求めているのです。また、まじめで努力家な性格であるがゆえに、体重減少という目標に向かって着々と努力し、目に見える成果を得ることでさらにダイエットにのめりこむケースなど、様々です。

過食症(神経性過食症)や、過食症障害の場合、職場や学校、家庭内などで過度なストレスを抱え、その解消方法として過食にいたるケース、ダイエットの失敗により過食にいたるケースなどがよくみられます。また、うつ病などが原因となり発症するケースもあるようです。

摂食障害の治療

これまでみてきたとおり、摂食障害は心理的な要因が大きく関係しているため、精神療法や認知行動療法、必要に応じて薬物療法が用いられます。
特に拒食症の場合は、生命に危険が及ぶこともあるので、低体重の有無を確認しつつ、精神療法と薬物療法に加え、場合によっては栄養補給剤も用いて治療します。

当社が保有する疾患情報パネルであるMHPによると、摂食障害で入院・通院された方108人のうち、処方薬を服用・使用している方は約43%でした。半数以上は薬物を用いずに、認知行動療法などが中心であることが伺えます。

日本における摂食障害の現状

現在の日本において、摂食障害とされている人の割合などの現状はどうなっているのでしょうか。MHPから読み取れることをまとめてみました。

摂食障害の内訳

MHPでは、気になる症状、1年以内に入通院した症状を聞いています。それによると、摂食障害と回答した人のうち、拒食症・過食症・過食性障害のそれぞれの内訳は、上図の通りとなりました。どちらも拒食症が一番多く、過食症、過食性障害と続いています。また、該当数に対し回答数は約2倍となっており、多くの方が、拒食症と過食症など2つ以上の疾患を併発していることも伺えます。

性別・年代別の発症率

摂食障害は一般的に若い女性に多いとされていますが、MHPの調査から、性別・年代別に発症率をみてみました。全体の回答数336,987人のうち、気になる症状として「拒食症」「過食症」を挙げている方の割合を示したのが下のグラフです。

拒食症については、10代女性で0.55%と最も高くなっており、年代が上がるにつれ、発症率は低くなっていきます。過食症についても同様に、10代女性が最も高く0.47%、年代が上がるにつれて下がっていきましたが、各年代で拒食症より発症率が高いという結果となりました。
男性については、10代の拒食症発症率が0.39%と最も高かったものの、それ以外の年代での拒食症発症率は0.1%未満でした。しかし、過食症については10代から50代まででそれぞれ0.1%台となっており、拒食症よりも発症率が高いことが伺えました。

まとめ

摂食障害は、食事量や食べ方など、食行動を中心に様々な問題があらわれる精神疾患です。大きく分けて拒食症(神経性やせ症)、過食症(神経性過食症)、過食性障害に分類され、心理的要因、文化・社会的要因、性格的要因、家庭環境など、様々な要因が絡み合って引き起こされると考えられます。当社の保有するMHPからも、10代から40代の女性に多く、10代女性の拒食症の発症率は0.55%と、約200人に1人の割合であることがわかりました。特に拒食症の場合は食事摂取に関して強い抵抗を抱えており、家族や周囲の手助けが必要な病気です。また、自身では病気を認めないことも多く、周囲が気づいてあげることも大切です。


ヘルスケアコラム
この記事の監修者
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部
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