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乳がんとは?罹患率から予防、治療まで知っておきたいこと

2024/10/09
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するヘルスケアデータベースを活用し、コラム記事としてお届けしています。

現代は、2人に1人ががんに罹患すると言われる時代です。その中でも、女性が最も罹患しやすいがんの一つとされているのが乳がんです。この記事では、乳がんの罹患率、予防法、治療法、再発リスクなどを、35万人の患者アンケートからなるメディリードマーケットプレイス(以下、MMP)のデータも交えながら解説いたします。

乳がんとは

乳がんは、乳房にある乳腺に発生するがんの一種です。乳腺は、母乳を分泌するための腺組織であり、乳管と小葉から構成されています。多くの乳がんは乳管から発生しますが、一部は小葉から発生することもあります。また、乳腺以外の乳房の組織からがんが発生するケースもあります。
乳がんは主に女性に多く見られますが、稀に男性にも発生することがあります。
乳がんの発生には、女性ホルモンであるエストロゲンが深く関与していると考えられていますが、それ以外にも、加齢、遺伝、生活習慣(喫煙、飲酒、不健康な食生活)などがリスク要因とされています。特に、乳がんの家族歴がある場合や、エストロゲンに長期間さらされることが乳がんリスクを高める要因とされています。

乳がんの罹患率

国立研究開発法人国立がん研究センターの調査によると、2019年の診断数は女性が97,142例で、女性が罹患したがんの中では最も多くなっています。人口10万人あたりの罹患率は、女性が150例で、割合は0.15%です。

〈図1〉


出典:国立がん研究センターがん情報サービス

MMPの最新調査における、各婦人科がんの罹患率は以下の通りでした。

〈図2〉


こちらでも、乳がんの罹患率が最も高いという結果となりました。

〈図3〉


乳がん患者の年代を尋ねた結果が〈図3〉です。
50代が最も多く、全体の44.04%を占めています。続いて40代が26.46%、60代が16.46%と続いており、比較的中高年層に多く見られることが示されています。これは閉経など、ホルモンバランスの変化が関係している可能性もあります。

乳がんのステージ

乳がんは、がんの進行度に応じてステージ0からステージIVに分類されます。ステージが低いほどがんが小さく、他の臓器やリンパ節に広がっていない状態を指します。各ステージの特徴は以下の通りです。

ステージ0: 非浸潤がん(がんが乳管や小葉にとどまり、周囲の組織に広がっていない)
ステージI: 小さな浸潤がん(乳腺内にとどまっている)
ステージII~III: がんが乳房周辺のリンパ節に転移している可能性がある
ステージIV: 遠隔転移(肺や骨、肝臓などに広がっている)

〈図4〉


乳がん患者にステージを尋ねたところ、〈図4〉の結果となりました。
ステージIが最も多く33.8%、次にステージIIが29.4%で続きます。ステージ0の割合も12.6%と比較的高く、全体の約45%が初期段階(ステージ0およびI)で乳がんが発見されていることがわかります。ステージIIIは8.8%、ステージIVは5.8%と、進行がんの割合は低めですが存在しており、早期発見ができなかったケースもあることが示唆されています。

乳がんの予防と早期発見のためにできること

乳がんは、早期に発見することで、がんが周囲の組織に広がる前に治療が可能となり、ほぼ完治が期待できます。
乳がんの5年生存率は、ステージI で100%、ステージII でも96.1%です。10年生存率を見ても、ステージI で97.6%、ステージII で87.4%と、他のがんに比べ比較的高くなっています。しかし、その割合はステージが上がるにつれ減少し、ステージIVでの5年生存率は40.0%、10年生存率は、18.3%まで低下してしまいます。そのため、いかに早期に発見できるかが重要です。

5年生率

10年生存率

ステージI

100.0%

97.6%

ステージII

96.1%

87.4%

ステージIII

80.0%

61.9%

ステージIV

40.0%

18.3%

データ参照元:国立がん研究センター

定期的な検診

早期発見における最も効果的な方法は、定期的な乳がん検診です。具体的には、次のような方法があります。

・マンモグラフィ

乳房専用のX線撮影(レントゲン)検査。圧迫板で乳房を挟み、薄く引き延ばして撮影します。乳房全体の画像を残せる、初期症状である微細石灰化の発見がしやすいなどのメリットがありますが、妊娠中は受けられない、痛みを感じるなどのデメリットも。

・超音波検査(エコー)

ゼリーを塗った乳房の上にプローブという器具をあてて、反射する音波を画像化し、乳房内を映し出す検査。妊娠中でも受けることができ、小さなしこりの診断が得意な一方、微細石灰化は見つけづらく、乳房全体の記録を残せないというデメリットがあります。

より正確な診断のためにはマンモグラフィ検査と超音波検査の併用が推奨されています。

定期検診については、こちらの記事で詳しく解説しています。

いつから受ける?頻度は?30代から受けておきたい乳がん検診のススメ/

2022年の乳がん検診の受診率は47.4%となっており、年々上昇してはいるものの、未だに半数以上は受診をしていないという現状があります。

〈図5〉


出典:国立がん研究センターがん情報サービス

では、定期検診で乳がんを発見している人はどのくらいいるのでしょうか。
乳がん患者の人に入通院したきっかけを尋ねたところ、回答者356人のうち、約42%にあたる149人が「健康診断や人間ドッグで指摘された」と回答しています。〈図6〉

〈図6〉


自己検診

定期検診とともに大切なのが、自己検診です。
自己検診は、自宅で定期的に自分の乳房をチェックし、異常の有無を確認する方法です。早期発見に役立つとされており、乳がんの診断前に気づく手段として重要です。具体的な方法は以下の通りです。

視覚的検査

鏡の前で乳房を観察し、次のような変化がないか確認します。

  • 形や大きさの変化
  • くぼみやしこり
  • 乳頭からの異常な分泌物(血液など)
  • 乳房や乳頭の皮膚の変化(赤み、腫れ、ひび割れ)

触覚的検査

立った状態で、シャワー中など、手が滑りやすい状態で乳房を指の腹で円を描くように触れ、しこりや硬さがないか確認します。また、仰向けの状態で、片方の手を頭の後ろに置き、反対側の手で乳房を触って同じようにチェックします。

自己検診は、月に1回を目安に定期的に行うことが効果的です。月経終了後1週間くらいが適していると言われています。

実際に自己検診によって症状に気づいた方はどれくらいいるのでしょうか。
〈図6〉のとおり、入通院したきっかけとして、「気になる症状が出てきた」「気になる症状が悪化した、進行した」と回答した人が52.8%でした。そのうちの82.2%が、決定打となった症状として「乳房にコブ、シコリができる」「しこりができた」と回答しています〈図7〉。

〈図7〉


それを自己診断と捉えると、回答者全体の46.6%の人が自己検診をきっかけとして入通院したということになり、定期検診での指摘がきっかけで受診した人の割合(41.9%)よりも高くなっています。

自己検診がきっかけで入通院した人(乳房にコブ、しこりができると回答した人)を、ステージ別に見たものが〈図8〉です。

〈図8〉


自己検診で乳房にコブやしこりを感じた人では、ステージ0とステージIの割合がそれぞれ7.63%と23.66%で、全体(12.60%と33.80%)に比べて低くなっています。また、自己検診でしこりを感じた患者の41.98%がステージIIで、全体の29.40%を大きく上回っています。このことは、しこりやコブを自覚する段階では、多くの患者がステージIIに達しており、乳がんがある程度進行してから症状として現れることを示しています。

自己診断で乳房にコブやしこりを感じることは、乳がんが進行しているサインであることが多いと考えられます。このことからも、定期検診も合わせて受診することが早期発見のためには重要であると言えます。

もし乳がんに罹患してしまったら

ここでは、乳がんに罹患した場合の治療や治療薬について解説いたします。

乳がんの治療

乳がんの治療は、進行度や患者の状態により異なりますが、どのような治療があるのでしょうか。MMPで乳がん患者にこれまでに受けた治療をすべて尋ねたところ、〈図9〉の結果となりました。

〈図9〉


一番多いのが手術療法で、9割近くの患者が経験しています。続いて、ホルモン療法、放射線治療、化学療法と続きました。それぞれについて解説いたします。

  • 手術: 乳房や周囲のリンパ節を部分的または全摘出する手術が行われます。
  • 放射線治療: 手術後に残存するがん細胞を破壊するために使用されることがあります。
  • 化学療法: がん細胞を殺すために抗がん剤を投与する治療法です。
  • ホルモン療法: ホルモン依存性のがんの場合、ホルモンの作用を抑える薬を使います。
  • 分子標的治療: がん細胞の増殖を促進する特定のタンパク質を標的とする薬剤を使用します。

乳がんの治療薬

乳がん患者に、これまでに処方された飲み薬を尋ねたところ、上位は以下の結果となりました。

薬剤名 分類 回答数
ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩) ホルモン療法薬 144
デカドロン(デキサメタゾン) 副腎皮質ホルモン製剤 54
アリミデックス(アナストロゾール) ホルモン療法薬 47
フェマーラ(レトロゾール) ホルモン療法薬 42
ベージニオ(アベマシクリブ) 分子標的薬 18
イブランス(パルボシクリブ) 分子標的薬 12
エンドキサン(シクロホスファミド水和物) アルキル化剤 8
5-FU(フルオロウラシル) 代謝拮抗薬 6
フェアストン(トレミフェンクエン酸塩) ホルモン療法薬 5

ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、アリミデックス(アナストロゾール)、フェマーラ(レトロゾール)がよく使用されています。それぞれについて解説します。

ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)

ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)は、エストロゲンの働きを抑える薬で、特にホルモン依存性の乳がんに使用されます。
タモキシフェンは、エストロゲン受容体に結合してエストロゲンの働きを抑える「選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)」に分類されます。エストロゲンは、特定のタイプの乳がん細胞の増殖を促進しますが、タモキシフェンはその作用をブロックし、がんの進行を抑える効果があります。

アリミデックス(アナストロゾール)

主に閉経後の女性のホルモン受容体陽性乳がんの治療に使用される薬です。アナストロゾールはアロマターゼ阻害薬と呼ばれる薬の一種で、エストロゲンの生成を抑えることで、エストロゲン依存性のがんの成長を阻止します。

フェマーラ(レトロゾール)

閉経後の女性のホルモン受容体陽性乳がんの治療に使用される薬で、アリミデックスと同じくアロマターゼ阻害薬の一種です。レトロゾールは体内でエストロゲンの生成を抑え、エストロゲンに依存する乳がんの進行を防ぐ働きを持っています。

乳がんの再発リスク

乳がんに限らずほとんどのがんでは、一度寛解しても再発するリスクがあります。がんのステージなどにもよりますが、乳がんの再発率はおよそ30%とも言われています。

今回の調査においては、初発、再発の割合は以下の通りでした。

〈図10〉


初発および再発時におけるステージ分布を示したものが〈図11〉です。

〈図11〉


初発の乳がん患者で最も多かったのはステージIで、35.4%でした。再発の場合、ステージIの割合は26.8%と初発時より少し減少していますが、一方で、ステージIVの割合が23.2%と初発時より大きくなっている点が目立ちます。これは、回答者全体におけるステージIVの割合(5.8%)と比較しても非常に高い数字です。このことから、再発時には進行した状態で発見されるケースが多いことが推測されます。ただし、初発時ですでに進行している状態が多いのか、再発時により進行した段階で見つかるケースが多いのかは、このデータだけでは明確には分かりません。

再発を防ぐためには、治療が終了した後も、定期的に医師の診察を受け、画像診断(マンモグラフィーや超音波など)や血液検査を行うことが重要です。早期に再発を発見することで、治療の成功率が高まります。

まとめ

乳がんは女性に多く見られるがんであり、特にエストロゲンなどのホルモンや遺伝的要因などがその発生に影響を与えます。早期発見が治療の成功率に大きく関わるため、定期的な検診と自己検診が重要です。本調査結果によると、自己検診で乳房にしこりを感じた場合、多くはすでにステージIIに達していることがわかり、症状が現れる前の定期検診が早期発見に効果的であることが示唆されています。乳がんは早期発見すれば90%は完治すると言われています。定期検診は年1回、自己検診は月1回を目安にしていきましょう。

「婦人科がん」についてのレポートは、以下の記事よりダウンロードいただけます。

婦人科がん患者に関するヘルスケアレポート

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ヘルスケアコラム
この記事の監修者
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部
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