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13人に1人が苦しんでいる化学物質過敏症。洗剤や柔軟剤の「香り」が体調不良の原因に!?

2023/11/26
山崎明男先生 / 京橋クリニック 院長

空気中に漂う洗剤や柔軟剤の香りを吸い込んで、頭痛や吐き気などの症状が出て体調を崩す人がいます。化学物質過敏症といわれる病気で、ひょっとすると、あなた自身が使っている洗剤や柔軟剤の香りが原因かもしれません。お酒が全くだめな人がいるのと同じで、私たちがいい匂いだと思っていても、それを全く受け付けない人がいることを理解する必要があります。化学物質過敏症について、京橋クリニックの山崎明男院長に詳しくお伺いしました。

■化学物質過敏症とは?

化学物質過敏症は、空気中を漂う化学物質を吸入することで症状が出ます。有病率は13人に1人といわれ、患者数は1千万人にものぼります。
匂いや香りに敏感な人に対して「それって気にし過ぎじゃない?」と思う人もいるでしょう。決してそんなことはありません。化学物質過敏症は30〜50歳代の女性に多いとされていますが、小児から高齢者まで誰もが発症しうる病気です。しかも、症状が数値化できないため、なかなか周囲の理解が得られず、辛い症状のために仕事を辞めざるを得ない人もいます。化学物質過敏症の人にとって、匂いや香りはまさしく「香害」なのです。

■自分の「いい香り」が周囲の人を体調不良に

近年は、洗剤や柔軟剤などに香料付きのものが数多く出回っていて、中には、長時間香りが消えないものもあります。これは、数μm〜数千μmの微小のマイクロカプセルに香料が入っていて、衣服に香りを定着させ、空中を浮遊して長時間香りを持続させるためです。
家庭以外にも、職場や学校、電車の中など、人の集まる所には必ずといっていいほど、香り付きの服を着ている人が増えました。香水よりも手軽に楽しめて、いい香りはマナーであるかのような風潮が背景にあると考えられます。
ところが、洗剤や柔軟剤に含まれる香料や、マイクロカプセルに使われているイソシアネートは化学物質なので、化学物質過敏症の人はこれらに触れたり吸入したりすると具合が悪くなります。症状は、頭痛や吐き気、咳、目がチカチカする、皮膚の痒み、筋肉痛、思考力の低下、月経異常やうつなど多岐に渡り、全身に及びます。
一度発症すると、微量の香りを吸い込んだだけで症状が出るようになり、最初は一つの香りだけだったのが、制汗剤や化粧品、シャンプー、殺虫剤の匂いなど、複数の香りに反応して症状が出てしまうようになり、これを多種類化学物質過敏症といいます。

■香料の何が有害なの?

前述したように、洗剤や柔軟剤に使用される香料は、いくつもの化学物質を組み合わせて作られています。成分は企業秘密で公表する義務はないので、成分表には「香料」と記載するだけでいいことになっています。
そのため、どのように体に影響があるのか、詳しくわかっていません。
匂いは危険を察知するために必要な原始反射のひとつで、生きていく上で欠かせない感覚です。鼻腔に入った匂いは、天井部分にある嗅粘膜の粘液に溶け込み脳神経へと伝わり、脳の奥にある記憶や意識を調整する視床下部に伝えられて、安全な匂いか危険な匂いかが判断されます。この部分に障害があるのではないかといわれています。

また、新型コロナウイルス感染症の後遺症、線維筋痛症や慢性疲労症候群といった他の病気と関連するのではないかと推測する研究者もいます。
さらに、マイクロカプセルの成分に使われているイソシアネートは、皮膚や粘膜を傷つけ、神経系に影響を及ぼすといわれていて、使用率の自主規制があります。

■未解明なことが多い化学物質過敏症。何科を受診すればいい?

不調の原因がわからずに医療機関を転々とする人も多く、医師の間でも化学物質過敏症の周知が徹底されていないため、専門的な検査と診療を行っている医療機関は全国でも数えるほどしかありません。診断がつくまでに平均して3年以上かかるといわれています。
少し大変ですが、化学物質過敏症に詳しい、内科、アレルギー科、耳鼻咽喉科などを根気よく探して受診してみましょう。放置をすると受け付けなくなる匂いや香りが増えてしまうので、早期に対処することが重要です。
医療機関では、どのようなシーンで具合が悪くなったか、その際、どのような対処を行なったかを詳しく問診します。化学物質過敏症は、症状に該当する考えられる病気をひとつずつ排除していくことが必要で、その上で「原因物質の除去で、症状が改善または治癒する」ということが診断の決め手になります。

■原因物質を取り除くことから。化学物質過敏症の治療法

基本的な治療は、原因物質を遠ざけることから始めます。ビタミンや亜鉛などが不足している人もいるため、医療機関によってはそれらを補う薬や、代謝を促し、解毒作用がある薬を処方してくれる所もあります。
匂いや香りは空気中から分離することができません。家の中に化学物質を分解する専用の空気清浄機を導入したり、洗濯には無香料で自然素材の石鹸を使ったり、化学物質を使用しない化粧品に変えたりする人もいます。いろいろな工夫をしてみましょう。
また、周囲のサポートも必要です。「こんなにいい香りなんだから、嫌だと思う人はいないはず」という考えは禁物。「化学物質過敏症」という病気があり、自分の香りが相手にとっては不快な匂いで、体調を崩す人がいるということを覚えておきましょう。


ヘルスケア
この記事の監修者
山崎明男先生 / 京橋クリニック 院長
呼吸器内科をはじめ、一般内科、循環器内科の診療、また、アレルギー疾患や睡眠時無呼吸症候群、禁煙治療など、数多くの臨床経験を持ち幅広い診療に対応する。また「化学物質過敏症」の診断と治療を行う数少ないドクターでもある。医学部の予備校で長年指導にあたってきた経験から、患者さんの全体像を捉えて診療に生かすことを得意としている。地域医療を通して、一人ひとりに合ったベストな医療を提案している。 https://kyobashi-clinic.com/

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