見えづらい介護者の負担の実態とは?疲れや負担を軽減する方法も解説
2023/08/16株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するデータベースであるMedilead Healthcare Panel(以下MHP)のデータを活用し、ニュース等で取り上げられている事象をコラム記事としてお届けいたします。今回のテーマは「介護」です。
介護を必要とする人の数は年々増加しており、それに伴って介護をする人の数も増えています。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査(※)によると、介護をしている15歳以上人口は653.4万人となっており、今後も増えていく見通しです。家族の介護が始まると、仕事や日常生活に加えて介護が上乗せされ、身体的・精神的な負担や疲れを感じる人は少なくありません。しかし、実態はなかなか見えづらいことも現状です。この記事では、MHPの調査から見えてくる介護者の負担の実態を探り、あわせて負担や疲れを軽減する方法も解説いたします。
(※)https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/gaiyoua.pdf
目次
家族など、身近な人の介護をする方の多くが、様々な負担や悩みを抱えています。MHPの調査によると、「介護は全く負担ではない」と回答した人は、全体のわずか1割程度です(図1)。
<図1>
具体的にはどのような負担を抱えているケースがあるのでしょうか。
介護は、様々な場面で介護者に身体的な負担がかかります。患者さんの状態によっては、入浴介助、移動時の介助、体位を変えるための介助などが必要になり、患者さんの介護度が高くなるにつれ、その負担は大きくなります。夜間におむつ交換やトイレ介助のために起きなければならない場合もあり、充分な睡眠がとれず、疲れがたまってしまう介護者も多いのです。
<図2>
MHPの調査でも、「介護のために体調を崩したと思ったことがありますか」という質問に対し、全体の約5割の方が、あると回答しています(図2)。中心となって介護をしている人に関してはさらに割合が高くなっており、6割近くの方が、介護のために体調を崩したと思ったことがあると回答しています(図2)。
家族の介護には、精神的な負担も大きくかかります。家族が健康上の問題を抱えていることに対して強い不安が付きまとうことに加えて、ケア方法や必要なサポート方法がわからず、ストレスや負担に感じることもあるでしょう。特に、認知症や終末期のケアを提供する場合は、心理的なストレスが非常に大きくなる傾向にあります。他にも、患者さんとのコミュニケーションの相違や、介護をめぐって他の家族との関係悪化に悩むケース、さらに介護によって人との接触機会が減り、孤立してしまうケースも。悩みを誰にも相談できずに1人で抱え込んでしまい、介護者自身がうつ病を発症してしまうケースも珍しくありません。MHPの調査からも、大きくわけて、「介護そのもの対する負担やストレス」と「自分の時間や生活に影響が出ることへのストレス」があることが見受けられました。
前者の例で言えば、約76%の方が、「患者さんに対して、どうしていいかわからない」と思うことがあると回答しています(図3)。
<図3>
また、約83%の方が、「患者さんの行動に対し、困ってしまう」と思うことがあると回答しています(図4)。
<図4>
在宅で介護している場合、介護は24時間続くことになります。夜間や週末、休日も対応が必要になるため、気が休まらないと感じている方も多いようです。約70%の方が、「患者さんのそばにいると、気が休まらない」と感じることがあると回答しています(図5)。
<図5>
介護者が思うように時間を使えないことや、仕事や生活に影響が及ぶことでも、ストレスや負担につながります。実際に、約77%の方が、「自分の時間が十分にとれない」と感じています。特に、中心となって介護している人がいる方はその傾向が高く、約82%にのぼります(図6)。
<図6>
また、約74%の方が「自分の思い通りの生活ができなくなった」と思うことがあることもわかっています。こちらも、中心となって介護している方はその傾向が高く、約81%にのぼります(図7)。
<図7>
身体的、心理的負担だけではなく、経済的な負担や不安を抱えている人も少なくありません。介護保険を利用していても、おむつ等の介護用品や介護食品などの費用は発生します。介護によって仕事を辞めたり休んだりせざるを得なくなるケースもあるため、それが金銭的な余裕のなさにつながっていることも考えられます。MHPの調査では、約7割の方が、「今の暮らしを考えれば、介護にかける金銭的な余裕はない」と思うことがあると回答しています(図8)。
<図8>
介護にかかる費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
【2023年最新】介護にかかる費用はどれくらい?データを用いて解説
介護者の負担を少しでも軽くするためには、どのような方法があるのでしょうか。
要介護認定をされていてまだ介護サービスを利用されていない場合は、まず地域包括センターやケアマネージャーに相談しましょう。ケアマネージャーは、介護を必要としている方がサービスを受けられるよう、利用者の状態やニーズを評価し、介護プランを作成してくれます。また、利用者の要望や状況に合わせた適切な介護サービスを提案し、利用先を紹介してくれます。すでに介護サービスを利用している場合も、ケアプランの見直しをしてもらうことで、現状が改善することも見込めます。
また、悩みを聞いてもらうことで、自分の気持ちを整理することができ、気持ちが楽になるというメリットも期待できます。
要介護度や状態によっては、施設入居を検討したほうがいい場合もあります。施設に入居しない場合でも、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど、様々な介護サービスを利用することができます。介護者の時間を確保し、ストレスを軽減するためにも、ケアマネージャーに相談しながら、ぜひ積極的に利用することをおすすめします。
介護で多くの時間を使っていると、周囲とコミュニケーションをとる機会がなく孤立してしまい、それにより悩みやストレスを溜め込んでしまう例も少なくありません。
実際にMHPの調査でも、約6割の方が、「家族や友人と付き合いづらくなっている」と思うことがあると回答しています(図9)。
<図9>
デイケアやショートステイを利用し、なるべく自分の時間をもち、友人や地域とも積極的に交流をもつことをおすすめします。また、同じ境遇の人と悩みや経験を分かち合ったり、情報交換をしたりするだけでも気持ちが楽になることがあります。地域には、「介護家族会」などのコミュニティが存在しますので、参加してみるのもいいでしょう。今では、インターネット上で介護者同士が交流できるオンラインコミュニティも多数存在しますので、上手に活用することもおすすめです。
介護の技術を身に着けることで、ストレスが軽減することもあります。たとえば、患者さんを抱きかかえる際の介護者の負担を減らす方法を学んでおけば、それから先の介助が楽になることでしょう。地域の「家族教室」などに参加することもおすすめです。さらに、今では様々な便利な介護用品があります。介護用ベッドや椅子などの家具はレンタルすることも可能です。被介護者の状態やニーズに合わせて、適切な介護用品を導入することで、患者さんだけではなく、介護者の負担も軽減することができますので、上手に活用していくことをおすすめします。
家族の介護をしている方は、外からは見えづらい様々な負担を抱えていることが、MHPの調査からもわかりました。介護者は知らず知らずのうちに無理をしてしまい、体調を崩してしまったり、仕事を続けられなくなってしまうケースもあり、介護疲れは深刻な問題となっています。介護は、いつ終わりがくるかわからないものです。頼れるサービスなどを活用し、悩みやストレスを上手に発散しながら、無理なく続けていくことが大切です。
■ Medilead Healthcare Panel(MHP)について
MHPは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。
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