「アート思考」を調査やレポートにも取り入れよう
2023/07/28株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。
世の中には、デザイン思考やロジカル思考、アート思考など、様々な役立つ思考法やフレームワークがあります。これらの思考法は、仕事やビジネスにおいてだけではなく、日々の成長や問題解決にも役立ちます。今回は、「アート思考」にスポットを当て、どんな考え方なのか、デザイン思考やロジカル思考との違い、身に着け方などについて解説していきます。
アート思考とは、創造性やアートの手法をビジネスや問題解決に応用するアプローチのことを指します。従来のビジネスのアプローチでは、問題解決や意思決定において合理性と論理的な手法が重視される傾向がありましたが、アート思考では、感性や直感を重要視します。簡単に言うと、既成概念にとらわれず、自分の感情や考え方を何らかの形にし、0から1を生み出す思考法のことです。
たとえば絵を描くときに色を付けますが、この「色」は自分の考え方のことです。他の人が赤を使おうが青を使おうが、自分は紫を使うということが、一つのアートになります。これを仕事などに置き換えると、人の意見ではなく、自分が考えた意見を取り入れて、それを言葉にして表現するということです。
今は価値観が非常に多様化していますが、何か独自のものを出そうとする際に、アート思考を取り入れることが有効となります。
その他の代表的な思考法として、ロジカル思考(論理的思考)やデザイン思考がありますが、これらとの違いはなんでしょうか。
ロジカル思考とは、合理的かつ論理的な分析と推論に基づいて問題を解決し、意思決定を行う思考プロセスのことを指します。たとえば、ある現象に対して、定量調査で統計的な数値として評価したり、定性調査で本当にこのような現象が起こっているのか、その要因は何なのかをしっかり測定、分析したりしながら改善策を出すことです。
デザイン思考は、自分の考えはあまり入りません。対象者や顧客のニーズや要求を理解し、顧客の視点を重視します。顧客の視点から問題を捉え、その解決策を考えていきます。対してアート思考は、他人の要求や意見ではなく、自分の感性や、考えていること、思ったことを表現します。ここが大きな違いです。
私なりに解釈してみたのですが、デザイン思考は、デッサンと似ており、いろいろな人が言ったことを、下描きしていきます。様々な人の意見を取り入れて、描き直しても構いません。アート思考は、たとえばデッサンで描いたものを自分の色として表現することです。
顧客のニーズをベースにアイディアを創出し、そのアイディアに独自性、創造性をつけて表現していく。この、デザイン思考とアート思考の組み合わせは、仕事にも活かせる考え方だと思います。
これは、京都大学と凸版印刷株式会社の共同研究による「アートイノベーションフレームワーク」です。アーティストが作品を生み出す際の思考ロジックをもとに、その作品作りのプロセスを5段階に分けてビジネスシーンに応用し、全く新しい価値を生み出すことを目的とした思考法として開発されました。
このフレームワークによると、アート思考には「発見」「調査」「開発」「創出」「意味付け」の5段階のプロセスがあります。まず、自身の主観で面白い、美しいと感じるものを「発見」することから始まります。次の「調査」では、そのアートが何を語っているかということを考える時間を持ちます。忙しい中でも、時間があれば美術館や博物館へ行き、何か目を引いたアートに触れて、30分でも10分でもいいので、それが一体何を語っているのか、自分自身で考えてみる時間を持つことをおすすめします。
そして、なぜ自分がそのアートに取りつかれたのかということを自分自身で考えて、その感情を言語化していきます。芸術家や画家の場合は、それを絵にしますが、我々の場合は、言葉として表現するのです。その言葉として表現したものを、人に説明するということが大事なポイントです。これを1人で持っていても何も役に立たないのですが、自分で言語化したものを人に説明することで、人に感動を与えるということが一つのアート思考となります。これは、プレゼンテーションを行うことや、調査結果をクライアントにレポートすることも、言語化したものを説明するという点で共通しています。
メディリードでは、調査レポートに新しい視点を盛り込む、調査企画に新たな案やアイディアを入れるなど、アート思考を日々の仕事、調査にも活かしていきたいと思います。
Medilead Oncology Expert Advisor 外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
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