ホーム > 自主調査一覧 > ブレインフォグとは? | 発症する割合や継続期間についての最新情報

ブレインフォグとは? | 発症する割合や継続期間についての最新情報

2023/03/25
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

初稿:2023/03/25
更新:2025/08/29

株式会社メディリードでは、保有している国内最大規模の疾患に関するデータベースであるメディリードマーケットプレイス(Medilead Market Place:以下、MMP)のデータを活用したコラム記事をお届けしています。今回のテーマは「コロナ後遺症としてのブレインフォグ」です。

MMPコラム(新型コロナ後遺症)の他の記事もご覧ください。
ブレインフォグとは? | 発症する割合や継続期間についての最新情報(この記事)
コロナ後遺症の発症率と継続期間は?症状別・年代別のデータを用いて解説
新型コロナが5類に移行したことによる変化まとめ|体調に異変を感じたらどうする?

「ブレインフォグ(Brain fog)」という症状をご存知でしょうか。脳にモヤ(霧)がかかっているかのように頭がぼんやりし、考えがまとまらない、気分が上がらない、思い出せないといったことが続く症状のことです。コロナ以前から存在した症状ですが、2021年3月頃、新型コロナウイルス感染症の後遺症として発表されて以来、注目されるようになりました。

出典:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第2.0版(厚生労働省)

ブレインフォグとは

「ブレインフォグ」を定義する明確な基準はないと言われています。厚生労働省が作成している資料には、以下のようにあります。(※1)

Brain fog は,「脳の中に霧がかかったような」広義の認知機能障害の一種で,記憶障害,知的明晰さの欠如,集中力不足,精神的疲労,不安などを包含する.「頭がボーっとする」などの症状は特徴的であり,初めて経験する記憶障害,集中力低下などを伴うと戸惑いや焦りだけでなく,日常生活や就学・就労,職場復帰などの妨げにもなり得る。

具体的な症状としては、「頭がボーっとする」ことの他に、「物事が思い出せなくなる」「なかなか考えがまとまらない」「集中することが難しい」「何をするのも億劫で気力が湧かない」「人の話が入ってこない」「言葉がうまく出てこない」等がみられるようです。ただし、ブレインフォグはこのような症状の総称のことで、医学用語ではないため、うつ病のように診断名がつくことはありません。エビデンスが少なく、実際にうつ病や認知症との判断が難しいことも多いようです。先ほどの資料にも、

Brain fogはうつ病の部分症状である場合や、高齢者ではアルツハイマー病などの早期病態を反映している場合もある

とあります。

ブレインフォグを引き起こす原因

ブレインフォグの症状を引き起こす原因は、さまざまな要因が関係していると考えられています。たとえば、うつ病や双極性障害、脳疲労、ADHD、生理や更年期なども関連があるとされてきました。

近年では、これらに加えて新型コロナウイルス感染症の後遺症としての発症が注目されており、感染やワクチン接種によって生じる免疫反応が、全身、とくに脳に炎症を引き起こす可能性があるとされています。

さらに最近の研究では、

・神経炎症
・脳血流の変化
・ミクログリア(脳内免疫細胞)の活性化

といったメカニズムが、ブレインフォグの背景にある可能性が指摘されています。
新型コロナウイルスの後遺症との関連や、うつ病・認知機能障害との鑑別の難しさについても解析が進んでおり、今後の診断基準の整備や治療法の開発が期待される領域となっています。

新型コロナウイルス感染症の後遺症におけるブレインフォグの割合

当社が毎年調査を行っているMMPにおいても、新型コロナウイルスの後遺症の経験について聴取をしております。

2022年11月に実施した最新の調査によると、新型コロナウイルス感染症にかかったことのある18,255人のうち、ブレインフォグと思われる後遺症を経験したと回答した方は、2%でした。(※図1)
持続性の咳(12.5%)や味覚障害(7.8%)などの代表的な症状に比べると割合は低いものの、一定数の割合でブレインフォグの症状が発生していることがうかがえます。
そもそもブレインフォグは、思考力低下、抑うつ症状、集中力低下、記憶障害といったさまざまな要素を合わせたものと考えられています。関連する症状を見ると、集中力の低下が5.7%、不安が2.8%、うつ病が1.5%、認知障害が0.6%となっており(※図1)、それらも含めると、ブレインフォグに関連する後遺症で悩んでいる人は決して少なくないことがわかります。

ブレインフォグや関連する症状はいつまで続く?

次に、新型コロナウイルス後遺症の継続期間をみていきましょう。

上の表(図2)は、後遺症経験があると回答した人に、その症状がどのくらい続いたかを回答していただいたものです。
こちらによると、ブレインフォグの症状があった人のうち、3か月以内に症状が治まった人の割合は、約68%となっています。半年以内では85.2%となり、8割を超える方は半年以内に症状が治まることが伺えますが、一方で、1年以上続く人も7%みられます。
次に、ブレインフォグに関連する症状もみていくと、3か月以上症状が続いた人は、認知障害で53.9%、うつ病で47.6%、不安で37.7%でした。さらに1年以上続いた人は、それぞれ20.9%、17.8%、11.5%となっています。
発熱や頭痛、持続性の咳、味覚障害などの代表的な症状では、約9割近くの人が3か月以内に症状が治まったと回答しているため、これらに比べると、ブレインフォグや関連する症状は長期化する傾向が見られました。

ブレインフォグの治療

現時点では、新型コロナウイルス感染症の後遺症として現れるブレインフォグに対して、確立された治療法は存在していません。
そのため、症状の重さや生活への影響に応じて、対症療法的なアプローチや、必要に応じて専門医への相談が行われています。

一方で、近年の研究により、ブレインフォグに関与している可能性がある生理学的メカニズム——たとえば神経炎症、脳血流の変化、脳内免疫細胞(ミクログリア)の過剰活性化など——が明らかになりつつあります。
これらの知見は、今後の診断技術の進歩や、根本的な治療法の開発につながることが期待されています。

ブレインフォグの症状が疑われる場合は、まずはかかりつけの医療機関や後遺症対応医療機関を受診してください。重症が疑われる場合や緊急性がある場合、脳神経内科や精神科などの専門医療機関を紹介してくれます。各自治体が発表している後遺症対応医療機関を参考にするとよいでしょう。

たとえば東京都の場合、以下のページにて確認できます。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/link/iryokikan.html
症状別に対応の可否を確認することもできますので、ブレインフォグに対応しているお近くの医療機関を受診してください。

まとめ

本記事では、新型コロナウイルス感染症の後遺症のひとつとして注目されている「ブレインフォグ」について解説しました。

当社が実施した調査では、コロナ後遺症としてブレインフォグの症状を自覚している方は全体の約2%でしたが、関連する認知機能の不調(記憶力・集中力の低下など)を含めると、決して少なくない割合が影響を受けていることがわかりました。他の報告では、さらに高い発症率を示す調査結果も出ています。

また、ブレインフォグは他の後遺症症状と比較しても、長期間にわたり持続する傾向がみられます。しかしながら、現時点では明確な原因や治療法が確立されておらず、エビデンスの蓄積も途上にあります。

そのため、もしご自身や周囲の方に「思考がぼんやりする」「集中できない」「言葉が出てこない」といった症状が見られる場合は、早めにかかりつけ医や、自治体が案内する後遺症対応医療機関に相談することをおすすめします。

2025年現在、新型コロナウイルス感染症は以前のような社会的影響は落ち着いてきたものの、感染自体は完全に収束したわけではなく、一定の割合で後遺症が報告され続けている状況です。ブレインフォグのような症状に心当たりがある方は、我慢せず、まずはかかりつけ医や専門医に相談することが大切です。

今後も、感染症を取り巻く社会環境の変化や、当社が行う継続的な調査データをもとに、医療・健康に関する有益な情報を発信してまいります。

(※1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第2.0版(厚生労働省)27ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000952747.pdf

■メディリードの ヘルスケアデータベースについて
 
メディリードのヘルスケアデータベースは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。

≪引用・転載時のクレジット表記のお願い≫
本リリースの引用・転載時には、必ずクレジットを明記いただけますようお願い申し上げます。
<例> 「医療関連調査会社のメディリードの同社が保有する疾患に関するデータベースを用いたコラムによると・・・」


ヘルスケアコラム
この記事の監修者
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部
メディリードは、「私たちの幸せな生活とヘルスケアの未来のため」という事業理念のもと、医療領域の調査を通じて患者さんのアウトカム改善を目指しています。ヘルスケアの解像度を高めることで、多くの方々の幸せな未来の生活に貢献したいと考えています。革新的な医療ソリューションを提供し、患者さんのQOL(生活の質)向上を実現していくことを目指しています。

ご相談やご依頼、および資料請求についてはこちらからお問い合わせください。

お問い合わせ
LOGO

〒163-1424 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー24F

TEL : 03-6859-2295 FAX : 03-6745-1168