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全身性エリテマトーデス(SLE)とは?データに基づく治療の現状と課題

2025/01/17
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するヘルスケアデータベースを活用し、コラム記事としてお届けしています。

全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身の様々な臓器や組織に影響を及ぼす自己免疫疾患です。多くの患者が、日常生活に支障をきたす症状や課題を抱えています。本記事では、SLEの概要や特徴、患者の状況、治療の現状や課題について、当社が保有するMMP(Medilead Market Place)に基づいてまとめています。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫系が誤って自身の細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。この病気は、炎症や損傷を引き起こし、皮膚、関節、腎臓、血液、心臓、肺など、全身の様々な臓器や組織に影響を与える可能性があります。そのため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。

日本全国に約6~10万人程の患者がいると言われています。(※)

(※)https://www.nanbyou.or.jp/entry/53

性別の傾向

<図1>


SLE患者300人に性別を尋ねたところ、男性が49人、女性が252人で、男女比は1:9という結果となりました。また、女性は年代が上がるにつれ罹患割合が上がる傾向が見られます。

年代

<図2>


<図2>の左側は診断された年齢、右側は各年代別に診断からの平均経過年数を示したものです。

診断された年齢は31歳~37歳で一番多く診断されていることがわかりました。中央値は32.8歳となっています。診断が集中する年齢層は、働き盛りや家庭生活の中核を担う時期であり、生活への影響が大きい可能性があります。

診断からの経過年数を見ると、60代では平均29.2年と最も長く、長期間に渡って病気と向き合っている人が多いことがわかります。

診断までにかかった医療機関の数

SLEは、症状が多岐にわたるため、初期の診断が難しい病気とされています。そのため、診断までに時間がかかることも特徴です。

<図3>

<図3>は、診断に至るまでにかかった医療機関の数を、全体とSLE患者で比較したものです。全体では70%以上が1か所の医療機関で診断を受けていますが、SLE患者では28.1%にとどまっています。SLE患者の44.6%が2か所の医療機関を訪れており、3か所以上訪れている人も約27%います。このデータからも、診断が難しく、時間を要することがうかがえます。

併発している疾患

<図4>

併発している疾患では、高血圧症が最も多く、19.3%でした。次に多いのがシェーグレン症候群で、15.7%のSLE患者が併発しています。SLEもシェーグレン症候群も自己免疫疾患であり、免疫系の異常が共通するメカニズムを持つため、併発しやすいと考えられます。

SLEが日常生活へ及ぼす影響

SLE患者は、日常生活でどの程度痛みや困難を抱えているのでしょうか。

<図5>

<図5>は、痛みや不快感について、その日の状態をもっともよく表しているものを選んでもらった結果です。

「痛みや不快感はない」と回答したSLE患者は33.3%で、3人に1人の割合でした。これは全体と比較すると約半分の割合です。また、「少し痛みや不快感がある」と回答した人は43.3%で最も多いという結果でした。中程度以上の痛みを訴えるSLE患者も約2割以上となっており、生活の質(QOL)の低下につながっている可能性があります。

<図6>

<図6>は、ふだんの活動について、その日の状態を最もよく表しているものを選んでもらい、SLE患者と全体を比較した結果です。ふだんの活動を行うのに問題はないと回答したSLE患者は65.3%で、全体の86.3%と比べて少ない割合となっています。SLE患者の3分の1が、ふだんの活動になんらかの問題を抱えていることがわかります。

<図7>

<図7>は、不安やふさぎこみについて、その日の状態をもっともよく表しているものを選んでもらい、SLE患者と全体で比較したものです。「不安でもふさぎ込んでもいない」と回答した人は、全体では7割を超えているのに対し、SLE患者では56.3%にとどまっています。SLE患者の約4割は、なんらかの不安やふさぎこみを感じていることがわかります。これまで見てきたとおり、身体的な痛みや不快感により、日常生活の負担が増大し、それが精神的な不安やふさぎこみにつながっていると考えられます。

SLE治療の現状と課題

ここでは、SLE治療の現状と課題についてデータをもとに解説します。

治療の現状

<図8>

<図8>は、SLE患者に、これまで経験した治療をすべて選んでもらった結果です。飲み薬を処方された人が98.1%で、ほぼすべての人が経験していることがわかります。
「注射をしてもらった」(12.1%)、「自宅で投与する注射薬を処方された」(15.9%)、「点滴をしてもらった」(36.4%)は、生物学的製剤が含まれている可能性がありますが、一定の割合を占めていることがわかります。

今までに処方された飲み薬の具体的な薬剤名は以下の通りです。ステロイドと免疫抑制剤がほぼ同じくらいの割合で使用されています。

薬剤名

n数

分類

プレドニン(プレドニゾロン)

103

ステロイド

プラケニル(ヒドロキシクロロキン硫酸塩)

52

免疫抑制

プログラフ(タクロリムス水和物)

29

免疫抑制

セルセプト(ミコフェノール酸 モフェチル)

23

免疫抑制

リンデロン(ベタメタゾン)

19

ステロイド

ネオーラル(シクロスポリン)

16

免疫抑制

ブレディニン(ミゾリビン)

14

ステロイド

メチコバール(メコバラミン)

12

末梢神経障害治療

イムラン(アザチオプリン)

10

免疫抑制

トラムセット(トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン)

10

慢性疼痛

今までに処方された注射薬を尋ねた結果は以下の通りです。

薬剤名

n数

ベンリスタ(ベリムマブ(遺伝子組換え))

17

エンドキサン(シクロホスファミド水和物)

10

水溶性プレドニン(プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)

6

パルクス(アルプロスタジル)

2

デカドロン(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)

1

リツキシマブBS(リツキシマブ(遺伝子組換え)[リツキシマブ後続1])

1

服薬アドヒアランス

<図9>

<図9>は、病気を治療していく上で、薬を指示通りに使用する必要性について納得しているかを尋ね、SLE患者と全体で比較したものです。

「とても納得している」と回答した人は全体では31.8%であるのに対し、SLE患者では43.6%と、全体に比べて高い割合を示しています。「あまり納得していない」「まったく納得していない」と回答した人もSLE患者では全体に比べて低い割合を示しており、薬の指示通りの使用が治療に不可欠であると理解している傾向が強いことがわかります。

<図10>

<図10>は、「薬の使用は、食事、歯磨きのように自分の生活習慣の一部になっている」かどうかを尋ね、SLE患者と全体で比較したものです。「いつもなっている」と回答した人は全体では41.0%であるのに対し、SLE患者では67.5%で、高い割合を示しています。SLE患者にとって、薬の使用は生活を支える基盤であり、日常生活の一部として強く定着していることがうかがえます。

<図11>

〈図11〉は、「薬を日々使い続けることをわずらわしいと感じることがある」かどうかを尋ね、SLE患者と全体とで比較したものです。
「いつも感じる」と回答した人は19.0%で、全体に比べ約2倍高い結果となっています。また、「あまり感じない」「まったく感じない」と答えた割合も全体と比べてやや低く、わずらわしいと感じている人が多いことがわかります。

SLEは慢性疾患であることから、薬の使用の重要性を理解しつつも、長期間にわたる薬物療法に心理的な負担を感じやすいことがうかがえます。

医師とのコミュニケーションの現状と課題

SLE患者の医師とのコミュニケーション状況はどうなっているでしょうか。

<図12>

<図12>は、医師とのコミュニケーションについて尋ね、SLE患者と全体で比較したものです。

SLE患者の約25%が、「非常の満足できる」と回答しており、全体の約2倍の割合となっています。「やや満足できるコミュニケーションができている」と回答している人と合わせると、7割の人が医師とのコミュニケーションにおいて満足していることがわかります。

SLEのような慢性疾患では、医師との密接なコミュニケーションが求められることが関係していると考えられます。これは、薬の使用の理解度が高かったことからもうかがえます。

SLEのような慢性疾患では、医師との密接なコミュニケーションが求められることが関係していると考えられます。これは、薬の使用の理解度が高かったことからもうかがえます。

ただし、「全く満足できるコミュニケーションはできていない」と回答した人はほぼいなかったものの、「あまり満足できるコミュニケーションはできていない」と回答した人も1割ほどいます。

<図13>

<図13>は、「あまり満足できるコミュニケーションはできていない」と回答した人に、さらに詳しくお聞きしたものです。

特に「自分が一番辛い症状は何かを医師は理解してもらえない」「症状や病気の今後の見通しについて自分はわからない」「質問しづらい雰囲気の医師である」で「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人が多くなっており、症状や治療についての情報不足や不安、質問しづらさが顕著であることが読み取れます。

SLEは慢性的な疾患であるため、医師との信頼関係が治療の鍵となります。患者が症状や治療法を理解し、不安を減らすには、医師がわかりやすい説明や質問しやすい環境を提供することが重要です。

まとめ

全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫系が全身の臓器や組織を攻撃する慢性疾患で、特に女性に多く見られます。約43.3%の患者が日常的な痛みや不快感を抱え、活動や生活の質に支障を抱える人が約3割、さらに4割の人が精神的不安を抱えています。治療では、薬の使用が生活習慣として定着している一方、長期的な服薬に心理的不安を感じる人が多いのが現状です。こうした状況において、医師との信頼関係を構築するためには、患者が症状や治療法を十分に理解できるわかりやすい説明や、質問しやすい環境が重要です。包括的な支援により、身体的、精神的ケアを充実させることで、患者のQOLを向上させることが課題となっています。

「全身性エリテマトーデス患者」についてのレポートは、以下の記事よりダウンロードいただけます。

■メディリードの ヘルスケアデータベースについて
 
メディリードのヘルスケアデータベースは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。

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ヘルスケアコラム
この記事の監修者
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部
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