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健康診断結果の見方を解説Vol.5 成人の8人に1人は慢性腎不全。回復不可の腎臓は必ず健康診断で検査して

2023/12/14
吉良文孝先生 / 東長崎駅前内科クリニック 院長

尿をつくる臓器として知られる腎臓は、病気になっても症状が現れにくく、進行に気づけないことが多いといわれています。そんな腎臓は、一度悪くすると治療を受けても元の状態には戻せないことをご存じですか?
今回は、腎臓の機能や健康診断結果の見方、病気の原因となる生活習慣などを内科医の吉良先生監修のもとご紹介します。

■腎臓は、血液を濾過して不要なものを排出してくれる臓器

腎臓は、腰の上あたりに左右ひとつずつある、にぎりこぶしくらいの大きさの一対の臓器です。腎臓が担うおもな役割としては、以下のようなものがあります。

①尿をつくり、老廃物を排出する
腎臓には、血液を濾過して不要な老廃物を含んだ尿(原尿)をつくる機能があります。1日につくられる量は、なんと約150リットル。腎臓でつくられた原尿は尿細管をとおり、その過程で体に必要な栄養素や水分が吸収され、残ったものが尿として排出されます。


また、尿をつくって不要なものを体外に排出することは、水分量や電解質濃度、血圧の調整にもつながります。

②ビタミンDを活性化させる
腎臓には、食事から摂取したビタミンDを活性化させ、体内で機能できるようにする働きがあります。ビタミンDは骨を強くするために必要な栄養素で、丈夫な体を維持するために欠かせません。

③造血ホルモン「エリスロポエチン」をつくる
エリスロポエチンは、赤血球をつくる造血ホルモンです。腎臓に何らかの不調があると、エリスロポエチンが不足し、「腎性貧血」が起こることがあります。

このように、腎臓にはさまざまな機能があります。そんな腎臓の特徴のひとつに、病気になっても自覚症状が出にくいことがあります。気づいたときには病気が進行しているケースも多いので、毎年必ず検査を受け、異常を早期発見・改善できるよう努めることが大切です。

■腎臓機能検査のおもな項目の見方

健康診断で腎臓の機能を検査する際は、超音波による形態変化の観察のほか、尿と血液を調べます。おもなチェック項目は以下の6つです。

①尿蛋白
尿中のタンパク質の量を検査します。タンパク質の量が多いと、腎臓の障害や尿路疾患が疑われます。

②クレアチニン
アミノ酸の一種であるクレアチニンは体に必要のない物質なので、通常は腎臓で濾過されて尿と一緒に排出されます。この数値が高い=うまく排出できていない場合は、腎機能の障害や慢性腎臓病などの可能性があります。

③eGFR
eGFRとは「腎機能の働き」を示す数値で、血液検査で調べます。基準範囲は「60 mL/分/1.73m²以上」となっており、この「60」の数字が小さくなるほど働きが悪化していることを表します。基準範囲を下回るときは、慢性糸球体腎炎や糖尿病腎症、腎硬化症を疑います。

④尿潜血
尿に血液が混ざっている場合、慢性糸球体腎炎や、尿路結石、膀胱炎などの病気が原因になっている可能性があります。

⑤尿沈渣
尿に沈澱した物質を顕微鏡で調べ、どんな成分がどれくらいあるかによって病気の有無を検査します。赤血球が基準範囲を超える場合は慢性糸球体腎炎や間質性腎炎、白血球が超える場合は腎盂腎炎、膀胱炎と診断されるケースが多いです。

⑥尿素窒素
尿素窒素は老廃物のひとつで、尿と一緒に排出されるべき物質です。この数値が基準範囲(8〜20mg/dl)を超える場合は腎機能障害や慢性腎臓病(CKD)を、下回る場合は肝機能不全を疑います。なお、脱水やタンパク質不足、絶食などでも基準範囲を外れることがあります。

■損なわれた腎機能は元に戻らないことがほとんど

腎臓の機能は、早期の慢性腎不全や原因を解消できる急性腎不全である場合を除き、一度低下すると回復しにくいといわれています。つまり、今以上に悪くならないように対処していくことが治療の方針になるのです。このことからも、早期発見が非常に重要であることがわかるでしょう。
しかし、先にも少し触れたとおり、腎臓病の自覚症状は末期にならないと現れないケースが珍しくありません。腎臓病が悪化すると、最終的には透析や腎移植が必要になることも多く、治療による心身、そして時間や金銭の負担はとても大きくなります。
そんな中、近年は成人の約8人に1人は慢性腎不全(腎機能が慢性的に低下している状態)であることがわかっています。他人事と考えず、必ず定期的に検査を受けるようにしてください。

■高血圧や肥満、運動不足……腎不全の危険因子とは

腎不全の危険因子には以下のようなものがあります。

高血圧

糖尿病

脂質異常症

肥満

喫煙

多量の飲酒

不規則な生活

運動不足

ストレス

腎不全のリスクは、食事や運動、睡眠といった生活習慣が乱れることによって上昇します。染みついた生活習慣の改善は簡単ではありませんが、健康診断の結果を見ながら医師に相談するなどして、腎臓が悪くなる前に手を打つようにしてください。


ヘルスケア
この記事の監修者
吉良文孝先生 / 東長崎駅前内科クリニック 院長
東京慈恵医科大学を卒業後、東京警察病院での臨床研修を経て、同病院の消化器内科に入局。その後、JHCO東京新宿メディカルセンターにて消化器内科医長、株式会社サイキンソーにてCMEO(Chief Medical Officer)を経験後、2018年6月に東長崎駅前内科クリニックを開業。 胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査を得意とし、すべての患者さんを「おなかの悩み」から解放することを目指して診療にあたっている。 https://umeoka-cl.com/higashinagasaki/

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