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健康診断結果の見方を解説Vol.3 中高年は健康診断で「血糖値」を要チェック。増加傾向にある糖尿病の恐ろしさと改善方法

2023/10/30
吉良文孝先生 / 東長崎駅前内科クリニック院長

近年は糖質制限ダイエットが一大ブームになっていることもあり、「炭水化物の摂りすぎは体によくない」という認識が世間に広く浸透してきています。実際に、糖質を過剰に摂取する生活を続けていると、ただ太るだけではなく「糖尿病」になる可能性も……。その診断基準となる血糖値は、健康診断を受けたら特に注目してほしい項目のひとつです。
今回は、そんな血糖値の見方や、血糖値が高い状態が続く=糖尿病のリスク、改善方法についてご紹介します。

中高年の3人に1人は糖尿病or予備軍!知っておきたい血糖値の正常値

私たちの体は、炭水化物を消化・吸収すると、「ブドウ糖」という物質に変換します。そのブドウ糖を血中に溶かし、さらに膵臓でつくられる「インスリン」というホルモンの働きによって細胞に取り込み、エネルギー源に変えるのです。血糖値とは、この「血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度」のことを指します。つまり、血糖値は食後に高くなり、逆に空腹時には低くなるのが普通です。

では、健康な人の血糖値は、具体的にどれくらいなのでしょうか? 血糖値の正常値は、空腹時で「80〜90mg/dL」となっています。これが「110〜125mg/dL」だと糖尿病予備軍、「126mg/dL以上」だと糖尿病と診断されます。また、40歳以上で空腹時の血糖値が「100mg/dL以上」の場合は、特定保健指導(※)の対象となります。
なお、近年ではなんと中高年の3人に1人は糖尿病、もしくは糖尿病予備軍です。糖尿病は、決して他人事ではありません。
※特定保健指導:生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる方に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートを行うもの。

失明や命を落とす病気につながることも。糖尿病にひそむ恐ろしいリスク

糖尿病は、先ほど触れた数値からもわかるように、血中のブドウ糖濃度が常に高い状態になります。その原因は、「インスリン」が十分に分泌されない、もしくは働かないため。インスリンは、ブドウ糖を細胞に行き渡らせるだけでなく、血糖値が過剰に増えないようにコントロールする機能ももっているのです。
インスリンが分泌されない、もしくは機能しなくなる主な理由としては、肥満、食べすぎや飲みすぎ、運動不足などの生活習慣の乱れが挙げられます。

そうして糖尿病になると、体内で「活性酸素」と呼ばれる血管の内壁を傷つける物質が発生します。その活性酸素が血管につけた傷に血小板などが集まり、血流を妨げる「かたまり」をつくり出すのです。

その「かたまり」が細い血管にできた場合は、糖尿病網膜症や糖尿病腎症、糖尿病神経障害の、太い血管にできた場合は動脈硬化の引き金となります。動脈硬化は、脳卒中(脳梗塞、脳出血)や心筋梗塞、狭心症などの命に関わる病気につながる血管の異変です。
目が見えなくなる。足が壊疽する。透析が必要な体になる。血管が切れて命を失う……糖尿病は、そんな恐ろしい末路を招きかねない深刻な病です。

カギは食事!生活習慣を見直して血糖値を下げよう

糖尿病を予防する、また改善するためには、以下のような方法で生活習慣を見直して血糖値のコントロールに取り組むことが必要です。特に重要なのは、やはり食事。食べるものだけでなく、食べ方にも注意しましょう。

①食事の改善
米やパン、麺類などの糖質の摂取量を減らしましょう。甘いお菓子やジュース、フルーツにも糖質が多く含まれるため、摂りすぎは厳禁です。反対に、たんぱく質や野菜は積極的に摂るようにしてください。特に野菜には、糖質の吸収を遅らせる食物繊維が豊富に含まれているため、1日に350g以上食べることが推奨されています。
また食べ方の観点では、野菜やたんぱく質を先に、糖質は最後に摂るようにするといいでしょう。食べはじめてからインスリンが分泌されるまでにはタイムラグがあるため、最初に糖質を摂ると血糖値が急上昇し、血管に大きなダメージを与えてしまうからです。これと同じ理由で、早食いも避ける必要があります。

②運動習慣の改善
糖尿病予防には、毎日30分以上の有酸素運動を習慣にすることが推奨されています。ベストは、食後1〜2時間以内に行うこと。インスリンの効果を得られにくい状態でも、運動によってブドウ糖を消費できるので、血糖値を下げられます。
また、有酸素運動で筋肉への血流がアップしたり、筋トレで筋肉量を増やしたりすると、インスリンの効果が高まることも確認されています。

なお、血糖値の状態によっては、投薬が必要になる場合もあります。医師と相談しながら、自身に合う方法で血糖値をコントロールしていきましょう。ただし、薬を服用している場合でも、生活習慣の改善は必須です。

生活習慣の改善には周囲を巻き込みながら取り組んで

血糖値を下げるためには生活習慣の改善が欠かせませんが、成功させるには食事や運動の知識、そして強い意志が必要になるので、独力で取り組むのは難しいものです。そこでポイントになるのが、家族や主治医など、周囲の方たちの力を借りること。自分の体のことを理解してもらい、また協力を仰いで、近しい人々を巻き込みながら血糖値改善を目指しましょう。


ヘルスケア
この記事の監修者
吉良文孝先生 / 東長崎駅前内科クリニック院長
東京慈恵医科大学を卒業後、東京警察病院での臨床研修を経て、同病院の消化器内科に入局。その後、JHCO東京新宿メディカルセンターにて消化器内科医長、株式会社サイキンソーにてCMEO(Chief Medical Officer)を経験後、2018年6月に東長崎駅前内科クリニックを開業。 胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査を得意とし、すべての患者さんを「おなかの悩み」から解放することを目指して診療にあたっている。 https://umeoka-cl.com/higashinagasaki/

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