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2023.02.21

キャンサーペアレンツ座談会

みんなががんについて「知る」ことの大切さ | 【キャンサーペアレンツ×メディリード座談会】Vol.2

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3回に分けてお送りしている、キャンサーペアレンツ×メディリード座談会。
2回目の今回は「みんなががんについて「知る」ことの大切さ」がテーマとなっています。がん患者さんの就労の話から、職場への伝え方、そして、いかにがん患者さんとそうではない方の垣根を低くし、がん患者さんがより生きやすい社会をつくっていくかについて話が及びました。

キャンサーペアレンツ×メディリード座談会

座談会の参加者

竹鼻 淳
たけはな じゅん

株式会社メディリード 取締役
マーケットインテリジェンス部 部長
メディリードの立ち上げ当初から携わる。
山家 汐理
やまや しおり

株式会社メディリード マーケットインテリジェンス部
キャンサーペアレンツの案件を担当することが多く、会員の皆さんに配信する研究や調査に数多く取り組んだ経験をもつ。


高橋 智子
たかはし ともこ

キャンサーペアレンツ理事。キャンサーペアレンツの創設者である西口洋平氏と元同僚であった関係から、キャンサーペアレンツが誕生した2016年4月より運営に携わっている。


志賀 俊彦
しが としひこ

キャンサーペアレンツ会員。茨城県在住。妻、中学3年生の娘、小学4年生の息子の4人家族。2001年に肝臓がんに罹患したロングサバイバー。キャンサーペアレンツの活動の他、茨城で独自に患者会を立ち上げ活動している。


関 直行
せき なおゆき

キャンサーペアレンツ会員。妻、中学1年生の娘、5歳の息子の4人家族。2013年に膵臓がんに罹患し、手術と治療をするも、2017年に再発。現在も治療継続中。キャンサーペアレンツを通じて発信活動にも取り組んでいる。


座談会Vol.2 みんなががんについて「知る」ことの大切さ

山家 : 会員さま同士の会話や投稿のやり取りの中で、興味深いトピックスやテーマがありましたら教えてください。

志賀さん : 私は告知やイベントの案内のような形でしか使っていないのですが、会員さんの日記に目を通していると、いろいろなタイプがあります。愚痴を吐き出す方や、家族の出来事の話をする方、医療情報を出してくれる方、いろいろな意見や情報があるなと思いながら見ています。

(写真:コミュニティサイトの日記一覧)

関さん : 家族とともに生活するには仕事をしてお金を稼がなければならないので、仕事とお金にまつわるテーマにはとても興味を持っています。やはり治療を長く続けていると、治療費以外にもいろいろお金がかかるため皆どうやって捻出しているかは気になるところです。そのため、がん保険や医療費の公的制度の話は結構しています。

仕事に関する話では、メンバーから「一度仕事から離れてしまうと再就職は難しい」、「同じ仕事をしていても病気を理由に段階を踏むことができなくなった」などという話を聞いたりもします。

~がん患者と仕事〜職場にどこまで伝える?どう伝える?~

竹鼻 : お仕事に関しては我々も大きなテーマだと思っています。片や、治療中で辛いので仕事量をセーブしたいという方もいらっしゃれば、一方で、自分は全然働けるのに軽い仕事のほうに異動させられてしまったとか、働けるのに気を遣われすぎて困るという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのあたりの情報の共有は、日頃どんな感じで行っていらっしゃるのでしょう。

関さん : 僕は再発する前に転職をしたのですが、そのときは2人目の子どもが生まれたタイミングでした。当時勤めていた会社は過酷な労働条件のままで、手術したあとも通常業務に戻り、残業、土日出勤が当たり前というところでした。これから子育てが始まることや、がんという病気が薄れている時期だったということもあり、思い切って転職したのです。幸いにしてすぐに再就職をすることができたのですが、再就職をした3か月後に再発してしまいました。

ただ、ちゃんと病気だということを伝えた上で就職をしたので、「再発したので入院期間がこれくらいかかります」とか、「抗がん剤治療で数日休ませてください」など、直属の上長にその都度話をすることができ、それほど違和感なく5年目を迎えることができました。

一方で、直接耳に入ってはきませんが、病気だから特別待遇されているという先入観を持たれている部分もあると思います。僕も前職では採用面談をやっていた時期もありましたが、がんの人か、がんの人じゃないかといったら正直がんじゃない人を採用する気持ちもわかるので、就労については非常に難しいテーマだなと身をもって感じています。

竹鼻 : そうですよね。それぞれの患者さんの置かれている状況や、治療の状態や体力の状態、そしてもともと仕事が人生の中でどのくらいを占めているかによっても違うでしょうし、なんといっても会社側の体制や理解度が大きいと思うので、恵まれた方もいらっしゃれば、なかなか会社側の理解がないという方もいらっしゃると思います。

一概にこうだと言い切ることはできないかもしれませんが、世間の会社の人事などを担当されている方に、これはぜひわかってほしいということはありますか。

関さん : 人事に関わる方や経営者の方は、より多くがん患者に触れ合い、理解することが一番大切かなと思っています。そしてできれば雇用側も従業員もお互いに本音で話してもらった方がいいと思います。先ほどの話でもあったように、下手に気を遣われてしまうことを望んでいないケースもあると思いますし。一方で、がん患者にはわがままな部分もあると思っています。例えば僕もそうですけど、体調や調子の波で、急に病人っぽくなったり、急に元気だからできるとなったり。

従業員も雇用側も様々な面をお互い理解して、うまく折り合いがつけられるような関係になれればいいなと思います。
会社がやるべきことはたくさんあると思いますが、人事や会社だけに求めるのは少し違うのかなと個人的には思っています。

竹鼻 : 自分ががんという病気になったということをどこまでの人に伝えるかで悩むという患者さんからの声をよく聞くことがあります。直属の上司には言わなければならないけれど、全員には知ってほしくないとか、逆にオープンにしたほうがいろいろやりやすくなるなど様々だと思いますが、志賀さんはそのあたりで悩まれたり迷われたりしたことはありますか。

志賀さん : 私の場合は、病気をしてから3回転職をしているのですが、そのうち2回は病気を伏せていました。今の職場は自分がキャンサーペアレンツと出会ったあとに転職した職場なのですが、こういった活動もしたいと伝えた上で転職したので、会社のほうには全部オープンにしています。その前までオープンにしていなかったのは、20年前当時は、まだまだがんという病気が偏見に満ちていたからです。当時は営業をやっており、もちろん直属の上司や部署内の人は私ががんだということを知っていたのですが、半年くらい休職して出ていったら、取引先の方に「あれ、死んだんじゃないの?」と言われたこともありました。今はまた少し変わっているのかなと思いますが、そういった偏見もまだあるので、どこまで伝えるかというのはなかなか難しい問題だと思います。

~がんという病気を正しく「知る」こと~

山家 : がん患者とがん患者ではない人という垣根や区別があるとしたら、どのような取り組みがその垣根や区分けをなくしていけるでしょうか。

関さん : これは非常に難しい質問ですね。考えてみたのですが、僕はなくならないと思います。ただ何かするとなると、さきほどお話しした経営者と従業員の関係と一緒で、がんではない人が、がん患者の生活や行動をよく目にする機会が増えたほうが理解度が増すので、それが区別や垣根を低くする一つの行動なのかなとは思いますね。

志賀さん : 私も関さんと同じで、基本的に垣根はなくならないと思っています。その垣根を少しでも低くする一つの方法は、今キャンサーペアレンツでも力を入れている、がん教育だと思います。ちょうど今学校では、文部科学省の教育指導要領が変わり、小学校のうちからがんについて学んでいるのですが、確かな知識をつけることで、少しでもがんというものに対して正しく怖がれるようになるのではないかと思います。

<< 文部科学省のがん教育についてはこちらもご覧ください。 >>

高橋さん : 私も、がんに限らず、そこの垣根がなくなるというのは難しいと思っています。ただ、一人ひとり違うということがベースにあれば、そもそも偏見・先入観は生まれにくくなると感じています。想像力が大切とよく言われますが、そのためには、いかにいろいろな経験をし、いろいろな出会いがあるかが大切だと思います。

私自身、キャンサーペアレンツに関わるまでは、親戚はじめ、身近にがんに罹患した人がいませんでした。活動に携わるにあたり、まずは現場を知らなければ何もわからないと思い、近くの患者会に伺ってお話を聴かせていただいたり、ピアサポーター研修を受けたり、病院のボランティアをさせていただきました。生の声を聴かせていただき、知って、体感することで、意識や感じ方が確実に変わっていったという経験があります。

生の声を知ることの大切さ、感じることの大切さを強く実感していますが、なかなか日常生活の中でそうした機会を得ることは難しいかと思います。だからこそ、志賀さんもお伝えくださったがん教育や、学校や地域、企業でも、自分とは異なる経験を持つ方々、様々な立場の方々と接する意見交換のような機会をつくることで、自分自身の想像力を働かせられ、区別や垣根を少しでも解消していけるきっかけになるのではないかと思っています。

竹鼻 : ありがとうございます。先日の調査でがん患者さんの話を聞いたのですが、何人もの方の口から出ていたのが、「今2人に1人はがんになる」というフレーズでした。

自分ががんになったときは、「まさかそんなはずない」、「がんのことなんて何も知らない」と思ったけど、調べていくと、今2人に1人はがんになるということがわかり、全然特別なことではないということが初めてわかりましたとおっしゃっている方が多かったんです。

先ほど学校教育の話もありましたが、がんという病気にかかることは特別なことではないということをもっと事前にわかっていれば、患者さんになる方の受け止め方も違うでしょうし、周囲の方の理解も進んでいくと思います。我々も情報を発信していく側なので、そういうことをうまく伝えられるお手伝いができればいいなと思ってお話を聞いていました。


(Vol.3 キャンサーペアレンツがあり続けるためにできること に続きます。)


キャンサーペアレンツの皆さんが口を揃えておっしゃっていたのが、「知ること」「感じること」の大切さでした。
対人関係においては、「相手の立場に立って考える」想像力が大切ですが、知らないことに対してはなかなか想像力を働かせることができません。
知ることで、お互いが歩み寄り、がん患者さんにとってより暮らしやすい世の中になるよう、私たちもお手伝いができたらと改めて思いました。



【団体概要】
法人名:一般社団法人キャンサーペアレンツ
創設者:西口 洋平
設立:2016年9月
主な事業:こどもをもつがん患者コミュニティ「キャンサーペアレンツ」の企画・運営
URL:https://cancer-parents.org/

【会社概要】
会社名:株式会社メディリード
代表者:代表取締役社長 亀井 晋
所在地:東京都新宿区西新宿3丁目20番2号
設立:2015年4月
主な事業:医療関連領域の調査業務
URL:http://www.medi-l.com/
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株式会社メディリード 広報担当
TEL:03-6859-1192  FAX:03-6859-2275  E-mail:mr@medi-l.com

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