マージナル・ゲインとは?仕事や日常生活にも活用しよう
2024/05/14株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。今回のテーマは「マージナル・ゲイン」です。
マージナル・ゲインという言葉をご存知でしょうか。これは1%の改善を積み重ねることで、最終的には大きな成果を得るというアプローチです。この考え方は、ここ数年で製薬業界に限らずビジネス業界全般で使われるようになりました。
簡単に言うと、状況を改善するために大きな変革を試みるのではなく、ほんのわずかな改善を継続することで、全体として大きな成果につながるという考え方です。
大規模な変更にフォーカスすると、具体的に何が問題なのかを見失うリスクがあります。たとえば、あるクライアントの製品の市場シェアが伸び悩んでいるとします。調査を行うと、様々な疑問点や解決すべき問題が明らかになるでしょう。しかし、問題を大きく捉えすぎると、実際に何が原因であったのかが分からなくなってしまうことがあります。ですから、マージナル・ゲインの考え方では、小さな改善点を一つひとつクリアにしていくことが推奨されます。
実例ではありませんが、例を考えてみました。日常生活において、たとえば「寝てもすっきりしない」という悩みがある場合、現在の習慣を列記してみて、それをやめた場合にどうなるのかを検証していきます。
この例では、「寝る1時間前にスマホを見るのをやめる」ということをまず試したところ、熟睡までの時間が早くなり、改善がみられたため、この習慣は継続します。次に、「食べてすぐ寝るのをやめるために、夕食を午後6時前はとる」ことを試したところ、逆にお腹が空いて眠れなくなってしまい、あまり改善には繋がらなかったため、これは特に実行しなくていいということになります。
このように一つひとつ検証していくということです。その結果、3つの改善点を実行していくという結果が得られました。大雑把になぜ眠れないのかを一生懸命考えるよりも、一つひとつやっていることを列記し、それに対して検証し、改善効果のあるものだけを続けていけばいいということです。
次に、これも私なりに考えた例ですが、RCT(Randomized Controlled Trial/無作為比較試験)を使った例をご紹介します。
これは臨床試験などでもよく使われるもので、介入(治療、教育プログラム、施策など)の効果を評価するために使用されます。この実験では、参加者がランダムに介入群(処置を受ける群)と対照群(処置を受けない群または標準処置を受ける群)に割り付けられます。介入群は新しい治療法やプログラムを受け取り、対照群は通常の治療法や既存のプログラムを受け取るか、何も受け取らない場合があります。そして介入前と介入後の時間ポイントで、介入群と対照群の両方で効果を測定するというものです。
この実験をわかりやすくわんこ蕎麦の早食い競争に例えてみました。チャンピオンは300杯を3分で食べることができるとします。チャンピオンになりたいというAさんは、3分17秒かかるため、Aさんがチャンピオンになるためには18秒縮めなくてはなりません。そこで18秒縮めるための方法(介入)を上図のように一つずつ試し、効果を測定します。
このように比較検証していくことで、その方法が効果的であるかどうかを評価することができるため、確実性を高めて無駄を省き、成果につなげることができます。ざっくりととにかく18秒縮める方法を考えたり、練習に練習を重ねたりするだけでは、縮めることはできないのではないかと思います。
では、ビジネスの世界で、マージナル・ゲインはどのように使われているのでしょうか。
ビジネスの世界では、製品デザインからマーケティング戦略、顧客サービスに至るまで、すべての側面で少しずつ改善を加えていくことが求められます。このプロセスにおいて、マージナル・ゲインのアプローチが非常に役立ちます。
ただしクライアントによっては、短期間でシェアを5%改善したいなど、短いスパンで依頼してくるケースも多いのではないかと思います。それよりも、長期的な戦略の場合にマージナル・ゲインのアプローチは適しています。
具体的なプロセスの例は以下の通りです。
まず、定量調査を用いて、企業の目標と現実との間に存在するギャップを分析します。
次に、根本原因分析(Root Cause Analysis = RCA)を行い、どのギャップが最も大きな影響を及ぼしているのかを解析します。たとえば、クライアントが特に伸ばしたいと考えている要素を3つ挙げたとします。その中で最も大きなギャップが見つかるかもしれませんが、予想外の要素でさらに大きなギャップが存在することもあります。このようにして、問題点を6つほど特定した後、それぞれの問題に対して改善策を提案し、一つひとつ検証を進めていきます。
その他にも、たとえばAという営業所ではある対策をとっているけれどBという営業所では、その対策をとらなかった場合に、AとBでどういう結果につながったかを検証し、そのやり方を全国的に広げていくというような方法でも使われます。
マージナル・ゲインは、1%の改善を積み重ねることで大きな成果を生むという考え方です。このアプローチはビジネスだけでなく、日常生活にも応用できます。たとえば睡眠の質を高めるために、自分の行動を一つひとつ見直し、何かを止めたり、ある行動を強化したりすることが効果的です。このように少しずつ改善を重ねることで、自然と生活が向上することがあります。このプロセスも、マージナル・ゲインの一例と言えるでしょう。
Medilead Oncology Expert Advisor 外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
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