【キャンサーペアレンツ・メディリード共同自主調査】がん患者さんのアピアランス変化の実態
2024/02/14株式会社クロス・マーケティンググループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:五十嵐 幹、東証一部3675)のグループ会社である株式会社メディリード(本社:東京都新宿区 代表取締役 亀井 晋、以下「メディリード」)と、こどもを持つがん患者のコミュニティサービスを運営する一般社団法人キャンサーペアレンツ(創設者:西口 洋平、以下「キャンサーペアレンツ」)は、がん患者におけるアピアランス(見た目)に関する共同自主調査(2023年)を行いました。
メディリードとキャンサーペアレンツは「がんになっても生きていきやすい社会の実現」に向けて、働き盛り世代、子育て世代のがん患者の方々の声を集めて、世の中へ発信していきたいと考えています。
以前行ったメディリードメンバーとキャンサーペアレンツ会員の座談会において、今後、世の中に発信していきたい「がん患者に関する様々なテーマ」について話をする機会がありました。ここで出た、いくつかのテーマについて、本調査を第一弾として、今後も共同自主調査を通して発信していくことで、がん患者さんが本当に抱えている思いや課題を知っていただければと思っています。
今回は、キャンサーペアレンツ会員を対象に「がん患者のアピアランス(見た目)に関する調査(2023年)」を実施し、男女128人のうち、117人の方から見た目に変化があったと回答を得ました。
がん治療は、患者さんのアピアランス(見た目)に様々な変化をもたらします。
見た目が変化したことで、「周囲の人からどう思われているか気になる」「自分らしさが失われたような気がする」と感じている患者さんは少なくありません。
もちろん、患者さんご本人がアピアランスの変化を気にしていない場合、特別なケアを必要としないこともあります。
しかし、実際にどれくらいの患者さんがアピアランスの変化に直面し、それに伴うケアを必要としているのかについては、十分に理解されていないのが現状です。そこで私たちは、こどもを持つがん患者のピア(仲間)サポートサービス「キャンサーペアレンツ」にご協力をいただき、がん患者さんのアピアランスに関する変化とその実態についての調査を実施しました。
※調査結果は、端数処理のため構成比が100%にならない場合があります。また数値についてはそれぞれの回答数を元に算出をしており、小数点以下第2位を四捨五入した数値を記載しております。
目次
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見た目の変化の有無をお聞きしたところ、9割以上の方がなんらかの変化を経験していることが明らかとなった。 |
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見た目の変化を経験した人のうち、変化を感じている箇所として最も割合が高かったのが手術や注射などの医療処置による変化で93.2%、次いで体形(91.5%)、皮膚(88.0%)、脱毛(78.6%)という結果が出た。4種類すべてを経験されている方は65.8%という結果となった。〈図2〉 |
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手術や注射などの処置による変化:「手術による乳房切除など、組織切除」により「とても困った」「やや困った」と回答した方は55.5%で、経験した方の中では78.3%の方が「とても困った」「やや困った」と回答した。〈図3〉 |
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体形に関する変化:約6割の方が「人相が変わった」ことを経験していると回答した。〈図4〉 |
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皮膚に関する変化:「爪囲炎/爪周りの皮膚トラブル」により「とても困った」「やや困った」と回答した方は47.0%で、経験した方の中では71.4%の方が「とても困った」「やや困った」と回答した。〈図5〉 |
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脱毛に関する変化:頭髪の脱毛に関する変化は約8割の方が経験していると回答した。〈図6〉 |
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見た目の変化によって、つらいと感じること:「いつまで続くのかわからないこと」がつらいと回答した方の合計は76.0%であった。〈図7〉 |
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見た目の変化による日常生活への影響:「憂鬱な気分になりやすい」について59.8%の方が「日常生活に影響した」と回答した。〈図8〉 |
今回の調査では、キャンサーペアレンツ会員である男女117人の回答を得ました。
〈図1〉
〈図2〉
見た目の変化の有無をお聞きしたところ、9割以上の方がなんらかの変化を経験していることが明らかとなりました。
最も割合が高かったのが手術や注射などの医療処置による変化(93.2%)で、体形(91.5%)、皮膚(88.0%)、脱毛(78.6%)と続きます。また、見た目の変化を経験している方は、ほぼすべての方が、1種類ではなく2種類以上経験されていることがわかりました。最も多いのが4種類すべてを経験されている方で、65.8%という結果となりました。
経験している見た目の変化に対して、どの程度困っているかについてもお聞きしました。
〈図3〉
手術や注射などの医療処置による変化としては、具体的には、注射痕や傷の形成、手術による乳房切除などを含みます。「手術による乳房切除など、組織切除」により「とても困った」「やや困った」と回答した方は55.5%で、経験した方の中では78.3%の方が「とても困った」「やや困った」と回答しました。
〈図4〉
体形の変化に関しては、「痩せた」よりも、「太った/浮腫んだ」のほうに「とても困った」「やや困った」と回答している方が多いという結果となりました。経験した人ベースの困り度(経験した人のうち、とても困った、やや困ったと回答した人の割合)でも、「太った/浮腫んだ(体形)」が最も高く67.9%、「太った/浮腫んだ(顔面)」が60.6%で3番目に高い結果となりました。
一方で、「痩せた(体形)(顔面)」ことでも、割合は低いものの一定数の方が困ったと回答しています。また、約6割の方が「人相が変わった」ことを経験しており、そのうち61.4%の方が「とても困った」「やや困った」と回答しています。体重の増減により、多くの方が、もともとの自分の姿からの変化に戸惑い、悩んでいることがうかがえます。
〈図5〉
皮膚に関する見た目の変化には、乾燥、色素沈着、爪周りのトラブルなどが含まれます。
「爪囲炎/爪周りの皮膚トラブル」により「とても困った」「やや困った」と回答した方は47.0%で、経験した方の中では71.4%の方が「とても困った」「やや困った」と回答しました。
その他には27名から回答がありました。しみ、湿疹、蕁麻疹、皮膚炎など、様々な変化を経験しており、それぞれの困り度も高いことがうかがえました。
〈図6〉
脱毛の中でも、頭髪の脱毛は全体の約8割の方が経験しています。さらにその中でも80.2%の方が「とても困った」「やや困った」と回答しており、全体を通しても最も高い困り度となっています。
さらに、まつ毛の脱毛、眉毛の脱毛においても、それぞれ経験した方の7割以上が「とても困った」「やや困った」と回答していることから、顔周りの変化については特に困り度が高いことがうかがえます。
〈図7〉
見た目の変化によってつらいと感じることをお聞きしたところ、上記の結果となりました。
最も高かったのが、「いつまで続くのかわからないこと」で、「とてもつらい(52.1%)」と「ややつらい(23.9%)」を合わせると76.0%の方がつらいと感じていることがわかりました。「対処に費用が掛かること」「自分が変わってしまったように感じること」「対処方法がないこと」「家事や育児などに影響が出ること」と続きますが、いずれも70%前後の方が「とてもつらい」「ややつらい」と回答していました。また、60%前後の方が、「周囲に気を遣われること」「仕事に影響が出ること」「人付き合いに影響が出ること」が「とてもつらい」「ややつらい」と回答しています。大きな差はありませんが、周囲からの見られ方や人付き合いよりも、自分自身が変化したと感じることがつらいと感じている方の方が若干多いという結果になっています。
〈図8〉
また、見た目の変化によって生じた精神的な変化と、日常生活への影響を聞いた結果が上記となります。「憂鬱な気分になりやすい」が最も高く、59.8%の方が日常生活に影響したと回答しています。「他人の視線が気になる」「誰も辛さを理解してくれない、共感してくれないと感じる」「孤独を感じる」と続きますが、見た目の変化により、周囲の視線が気になるということに加え、憂鬱な気分や孤独にまでつながっていることがうかがえます。
〈図9〉
それぞれの精神的な変化は、どの見た目の変化によるものかを聞いた結果が上記となります。ほぼすべての精神的な変化において、「脱毛に関する見た目の変化」が影響していると回答した方が最も多いという結果となりました。特に、「他人の視線が気になる」「がん患者だと思われるのが嫌だ」「見た目の変化を受け入れられない」において、高い割合となっています。
がん患者さんの見た目の変化に関する体験談を自由に記載いただいたところ、実際に経験された患者さんにしか分からない貴重な声をいただくことができました。その一部をご紹介いたします。
“爪が割れたりかけたりするのが困っていましたが、今は治療中でもできるネイルがあることを知って嬉しかったです”
“爪に優しいマニキュアを探すのに苦労した。足の爪は、抗がん剤の影響で巻き爪になり、辛い。”
“化学療法の影響でシミができやすくなりました。シミが消えやすい処方薬や、レーザー治療が保険診療で受けられたらいいなと思う。”
“「手を洗ってきたら?」色素沈着状態を知らない方から掛けられた言葉です。汚れている、そんな風に見えたことがとてもショックでした。抗がん剤の副作用だと説明してる際に涙が止まらなくなったのを覚えています。”
“がん手術で不可逆の顔面神経麻痺となりました。手術前に比べて明らかに人相が変わりましたので、顔をさらす事に抵抗を感じ人付き合いは苦手になりました。”
“ホルモン療法で顔がいっきに老けたように感じます。美容を皮膚科の先生と相談しています。”
“手術の後遺症で生涯、顔面神経麻痺になりましたが、サポートしてくれる家族や職場に恵まれ、皆、顔が歪み変容した私を受け入れて寄り添ってくれた。必要な人へ体だけでなく心のサポートが十分行き渡る社会になることを望みます。”
“手術の痕が大浴場などで他の利用者から気にされると思うと、気軽に利用できなくなった。”
“人工肛門でパウチの膨らみなどが気になり、これまでの服が着られなかったり、服を選ぶのに時間がかかることが辛い。”
“傷跡が少しでも目立たなくなるスキンケアの方法を、ちゃんと教えてほしかった。”
“抗がん剤で起きた変化は時間の経過とともに忘れる部分もあるが、手術で起きた変化は普遍。生きられるから良しとしようでは割り切れない気持ちもある。まだ痛いの?と思われるのも、もやもやする。”
“髪の毛はまた生えてくるが、髪質が全然違うので戸惑った。”
“まつ毛が抜けてしまったので、つけまつげをしていたが、接着剤でかぶれてしまい、大変だった。”
“ウイッグのメンテナンスが大変で、高額。自治体によって補助金などのサービスの差が大きい。”
“11年経ってもウイッグ生活をしている。こういうケースがあることを事前に知っておきたかった。”
“乳がん治療に使う抗がん剤は全て脱毛が起こると説明を受け、当時は絶望した。どんなに悩みのある髪でも、自分の髪がなくなることは耐え難いこと。”
“自分も気になるが子供たちが周りの友達に何か言われないか心配だった。治療は再発防止のために必要だと分かっていたが、時折感情が爆発することもあった。愚痴を吐ける場所がたくさんあったらいいなと思う。”
“脱毛にさほど抵抗はなく、帽子をつけて過ごせばいいかと思っていたが、人付き合いで病気を隠し切りたいわけではないけど、全ての人にオープンにしたい訳ではないし、難しいと思った。”
“フルタイムで働いていると見た目が重要なので、ウイッグ代とメンテナンスで既に80万円ほどかかっている。”
がん治療に伴うアピアランス(見た目)の変化は、患者さんにとって単なる外見上の問題に留まらず、深刻な心理的、社会的影響を及ぼすことが明らかになりました。特に、脱毛や体形の変化は、自己認識に大きな影響を与え、日常生活における自信の喪失や孤独感を引き起こす可能性があります。特に患者さんの体験談からは、見た目の変化が日常生活に与える影響の深刻さが浮き彫りとなっています。
これらの変化に対する患者さんの困り度や精神的な苦痛は、医療提供者や支援者にとって重要な考慮事項です。治療の物理的な側面に加えて、患者さんの精神的な健康と生活の質を支えるための継続的、包括的なケアが必要であることを、改めて認識しました。
キャンサーペアレンツ、メディリードとがん関連の共同研究を行っている国立がん研究センター東病院 緩和医療科 小杉 和博先生のコメント
がん治療を受けながら社会生活を送るがん患者さんが増加しており、治療後も同様の生活を維持する上で、治療に伴うアピアランス(見た目)の変化に対するサポートが重要です。昨年策定された第4期がん対策推進基本計画にもサバイバーシップ支援の重要な項目のひとつとして明記されております。これまで患者さんを対象とした実態調査などが行われてきましたが、今回の調査は気持ちの変化などにも着目した調査がなされており、今後のサポートの充実に向けた貴重な資料のひとつとなると思われます。
調査手法: |
インターネット調査 |
調査地域: |
全国 |
調査対象: |
キャンサーペアレンツ会員の皆様 |
調査期間: |
2023年9月1日(金)~2023年9月22日(金) |
有効回答数: |
117 |
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