キャンサーぺアレンツ×株式会社メディリード対談
2016/09/28
相談できる相手が一人も見つからない、その状況を変えたい
竹鼻 当社は「すべての患者さんの今日、明日の生活をより良いものにする」ということを社是に掲げています。「キャンサーペアレンツ」(以下CP)の活動を支援することは、まさにこれに合うものだと考えています。西口さんはがんを患われているさなか、「CP」を立ち上げられました。大変過酷な状況にあって、なぜ、このような行動に出られたのかをまずお伺いしたいと思います。
西口 僕ががんの告知を受けたのは2015年2月。一人娘は幼稚園の年長で、春に小学校入学を控えていました。がんだと聞いたときにはとにかく頭が真っ白になって……少しして、いろいろなことを考えました。“娘の結婚式に立ち会えるかな”、“成人式は見られるかな”、“それより春の運動会に行くことができるかな”、など……。
当時の僕は、がんについての知識がまったくなかった。わからないことだらけだし、心細いしということで、話がわかる人に相談できたらと痛切に思いました。調べてみると、毎年新たにがんに罹患する方の中で、18歳未満の子どもを持つ方は、約6万人いることがわかりました。また、がん患者の5年生存率は約60%なので、患者自体はどんどん増え続けている。すぐに相談できる人が見つかると思っていました。ところが、身近でまったく出会わないし、話も聞かない。それって、おかしいと思いませんか?
“がんについて、より気軽に相談ができる環境がつくりたい! それも、世代が同じだったり、子どもの年齢が近かったり、似た立場の人と話せる環境があったら、どんなにいいだろう!”。そんなことを切実に感じて立ち上げたのが「CP」なのです。
なぜ、“ペアレンツ”なのかと言うと、僕自身が子どもを持つ親であるからです。調べてみると、がんに罹患した子どもやお年寄りのケアについて話せる 団体はあったものの、がんを罹った親同士が話せるような団体はまったく見つかりませんでした。僕ががんになって一番困ったのは、“子どもとどう接したらいいのだろうか?”ということ。だから、ここには確実にニーズがあると感じました。がんと診断された方が、同じ悩みや不安を持つ人とコミュニケーションをとり、お互いに支えあう環境(ピアサポート)を提供すれば、がん患者の大きなサポートになる……、それで子どもを持つ親を対象にしたサービスを展開することを決めたのです。
竹鼻 がんを宣告されたにも関わらず、そのような行動に出られたのはすごいことです。西口さんのエネルギーを感じます。CPが目指すゴールはどのようなものですか?
西口 がん患者の方が前向きになること。そして、がんになっても生きやすい社会を実現することです。僕自身、体験して実感しましたが、同じ立場にある者同士の交流は、すごく気持ちを楽にしてくれます。そして前向きに生きようという希望を感じさせてくれます。その結果、がん患者の方が元気に長生きできれば、これに勝る喜びはありません。CPの活動をとおしてがん患者の声を届けていくことで、社会が良い方向の変わっていくと確信しています。
竹鼻 なるほど、とてもよくわかります。今現在、課題としていることはどのようなことですか。
西口 まずは会員数を増やすことです。身近に相談できる相手を見つけることが、団体設立のそもそもの発端ですので。また、CP会員が増えれば、そこに新たな価値も生まれてくると考えています。
がん患者には多彩な潜在的ニーズがあります。もちろん、究極的なニーズは“生きたい!”ということなのですが(笑)、もっと細かいところにさまざまなニーズがある。そこが見えてくれば、「CP」を運営する価値は大きくなるでしょう。
多くの声によって、がんになっても生きていきやすい世の中になることを信じて
竹鼻 わたしが初めてCPを知ったとき、“こんなサービスをやろうとしている人がいるのか!”と、とても驚いたことを覚えています。しかも、発起人の西口さんはがんの当事者。なんと力強いのだろうと、本当に信じられませんでした。そして、私も医療系のマーケティング会社に勤めておりますので、いつか、ぜひご一緒したいと考えていたんですよ。
私がCPを知った当初、会員数は28人でしたが、今は330人を超えています(2016年9月末現在)。すごいスピードで増えていますね。これは本物だと思いました。そして、それだけ西口さんと同じように感じていた方がたくさんいらしたということだと思ったのです。
西口 ありがとうございます。そんなふうに言っていただけてうれしいです! 会員数は、予想していたよりも伸び率は大きいですね。がんに関する情報は、比較的手に入るものの、日常生活での情報は見つけにくいということではないかと思います。つまり、がん患者が安心して暮らせるようになるには、日常の情報を、このようにさまざまな仲間と共有できる環境が必要だということではないでしょうか。また、共有だけではなく、患者同士がコミュニケーションを深めることで、さらなるニーズも生まれ、そこに向けて、みんなで考え、動くこともできる環境も必要だと思います。
竹鼻 弊社でもがん患者の方にニーズをヒアリングすることがあります。「お困りごとはありますか?」と尋ねても、「特にない」という返事が返ってくるのです。ところが「ほかの患者さんには、こんな困りごとがあるようですよ?」と聞いてみると、「言われてみれば困っています」となることがよくあります。つまり、患者さん自身もニーズに気づいていない。他の方と話をしたり、他の事例を見たりすることで浮かび上がる隠れたニーズがあります。
西口 そうですね。日々、いろいろなことで困らないように、みなさん工夫して生活しています。だから、気づきにくいということはあると思います。しかし、その隠れた困りごとを解決することで、少しでも生活が良くなる。そして、その解決に向けて、動いていくためには、ただ一人が声を上げていてもいけません。何百人、何千人という人が声をあげて、はじめて世の中に響きます。だから、まずはたくさんの方に会員になっていただき、活発なコミュニケーションの場づくりを行い、多彩な声を拾っていきたいと思っています。
竹鼻 そうなんです。そこがCPの大きな強みですよね! 当社は、医療系のマーケティング会社ですから、そういった患者さんの声を分析して、製薬会社など医療関係者に、その声を届けるのが仕事です。患者さんへのインタビューでは、熟練のモデレーターや分析者が必死に患者さんのインサイトを引き出そうと努力し、様々な有用な情報を収集しています。しかし、限られた時間のなかでは、なかなか深いところまでお話をすることが難しい状況なのです。それもたくさんの患者さんにインタビューするとなると相当な壁が待っているといえるでしょう。
CPはすでにたくさんの会員の方がいらっしゃいますから、一人一人の声もお伺いして、分析することでさまざまな提案という「かたち」をつくってけるのではないかと思っています。
西口 CPはまだまだ手探りの状態ではありますが、サービスをリリースして約半年、確かな手応えを感じています。たくさんのニーズがあることをひしひしと感じています。当事者のネットワークからいろいろな声を拾うことができれば、それをよりよい社会のため、何よりもがん患者さん自身のために役立たせることができる。声の収集から情報の分析、提案まで、メディリードさんと手を携えていけるとうれしいです!
竹鼻 西口さんのどこまでも前向きな姿勢には心打たれます。皆さまのご期待に添えるよう、力を尽くしていきたいと思います。
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