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女性の栄養不足が妊娠に影響するって本当?妊娠前に食生活を見直そう

2023/12/14
清水なほみ先生 / 医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック 院長

妊娠適齢期といわれる20〜30代の女性には、今すぐ妊娠したいと考えている人もいれば、いつか子どもを授かりたいと考えている人もいるでしょう。しかし、毎日元気に過ごしているつもりでも、実は健康に過ごせるだけの栄養が不足した状態の女性が多くいます。知らず知らずのうちに健康が失われ、いざ妊娠をしたいと思った時になかなかうまくいかなかったり、思わぬ体調不良となったり、また妊娠後に悪影響が出たりすることも。
今回は、妊娠を希望している人もまだわからないという人も、妊娠適齢期の女性が「長い目で見た自分の健康のために」食事面でどのようなことに気を付けるべきかをご紹介します。

■20〜30代女性の約5人に1人が「痩せ」

体重(kg)を身長(m)で2回割った体格指数「BMI」は、世界共通の肥満度の指標です。このBMIが標準値「22」に近いほど、さまざまな病気にかかるリスクが低いとされていますが、平成30年国民・健康栄養調査では、妊娠適齢期である20〜30代女性の約5人に1人が、BMI18.5を下回る「痩せ」の状態にありました。


世界的に見ても日本は痩せ過ぎ女性の比率が高く、先進国の中でもっとも「痩せ」が多い状態。その背景には、多くの女性にとっての理想の体型と健康な体型との間に差があることが挙げられます。適切な状態である普通体重(BMI18.5~25)、または現在「痩せ」であるにもかかわらず、自分が太り過ぎていると思っている女性は多いでしょう。

■栄養不足は生活の質を落とし、不妊のリスクが高まる可能性も

では、十分な栄養を摂れていない妊娠適齢期の女性の体には、どういった症状が出てくるのでしょうか。自覚しやすいところでは、疲れやすくなって活力が落ちる、集中力が低下する、貧血、体がだるい、肌や髪が荒れるなどの症状が現れます。

さらに、女性ホルモンの分泌が低下し、月経不順や無月経を招いて、不妊や動脈硬化のリスクが高まる可能性も。無月経になると、若くして閉経期(更年期)と同じ女性ホルモンが少ない状態になるため、将来の妊孕性(にんようせい:妊娠に必要な力)低下につながり、長期間放置すると、まれにですが子どもを産めなくなる人もいます。

■十分な栄養を摂れていない女性が妊娠するとどうなる?

前述のように、栄養が足りていないとそもそも不妊のリスクが高まることがありますが、妊娠した後に、その子どもがリスクにさらされる可能性もあります。

日本では低出生体重児(2,500g未満)の割合が増えており、その背景のひとつに若い女性の痩せや妊娠中の体重増加不足があるといわれています。小さく生まれてきた子どもは、エネルギーを溜めこみやすい体質であるため、成人後に生活習慣病(高血圧・糖尿病など)にかかりやすいことも。

20〜30代の女性の栄養不足は、自身の健康と妊娠のしやすさに影響を与えるだけでなく、その子どもにも影響を及ぼすことがあります。

■今後妊娠を考える女性はどんな食事を意識すべき?

では、時期にかかわらず将来的に妊娠を考える女性は、どんな食事を摂ることを意識すべきなのでしょうか。まずは、1日3食を心がけ、5大栄養素の糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることが基本です。BMIでいうと、もっとも妊娠しやすい20~24を目標としましょう。

さらに、特に若い女性に不足しがちな以下の栄養素の摂取を意識するとなお良いでしょう。

たんぱく質
細胞、臓器、筋肉などのもとになる
20〜30代女性の1日あたり摂取推奨量:50g
たんぱく質が多く含まれる食材
鮭100g(18.9g)、豚ロース肉100g(18.4g)、鶏胸肉100g(19.2g)、卵1個(5.7g)、絹ごし豆腐1/2丁(8.0g)、牛乳200ml(6.6g)、納豆1パック(5.8g)

ビタミンD
免疫機能や妊娠率の上昇につながる
20〜30代女性の1日あたり摂取推奨量:食品から8.5μg、紫外線から5.0μg(多くの女性は日焼け対策をするため、その分はサプリメントで摂取することを推奨)
ビタミンDが多く含まれる食材
鮭1切れ(25.6μg)、イワシ1尾(15.0μg)、サンマ1尾(14.9μg)、サバ水煮100g(11.0μg)、しらす干し10g(6.1μg)きくらげ2枚(1.7μg)


全身に酸素を運び、貧血や疲れやすさを防止する
20〜30代女性の1日あたり摂取推奨量:10.5mg
鉄が多く含まれる食材
あさり水煮缶30g(8.9mg)、切り干し大根120g(3.6mg)、小松菜100g(2.8mg)、牛肉100g(2.8mg)、枝豆100g(2.7mg)、ほうれん草100g(2.0mg)

葉酸
赤ちゃんの先天異常のリスクを減らす
20〜30代女性の1日あたり摂取推奨量:240μg(妊娠前1か月〜妊娠3か月までは+400μgをサプリメントで摂取することを推奨)
葉酸が多く含まれる食材
枝豆100g(260μg)、アスパラガス100g(180μg)、ブロッコリー100g(120μg)、オクラ100g(110μg)、ほうれん草100g(110μg)※すべて茹で

n-3系脂肪酸
赤ちゃんの知能や器官の形成に不可欠、産後うつの予防にも
20〜30代女性の1日あたり摂取推奨量:1.6g
n-3系脂肪酸が多く含まれる食材
サバ水煮缶60g(1.8g)、サンマ皮付き32g(1.8g)、ブリ54g(1.8g)、マイワシ86g(1.8g)、エゴマ油3.1g(1.8g)、亜麻仁油3.2g(1.8g)

食物繊維
腸内環境を整え、健康状態を良くする
20〜30代女性の1日あたり摂取推奨量:18g
食物繊維が多く含まれる食材
アボカド1個(12.9g)、インゲン豆50g(9.8g)、押し麦50g(6.1g)、オートミール50g(4.7g)、切り干し大根100g(3.7g)、納豆1パック(3g)

■いつかあるかもしれない妊娠のために、食生活の見直しを

毎日を忙しく過ごす20〜30代女性は、どうしても食生活がおざなりになってしまいがちです。今すぐの妊娠を望まないのであればなおさらでしょう。
しかし、今後妊娠の可能性を少しでも考えるのであれば、妊娠する前から栄養状態を把握して食事を適切に摂り、自身の健康を維持しておくことが大切です。また「別に子どもは欲しくない」という人も、「妊娠を前提にした健康作り」は、たとえ妊娠しなくても長い目で見ると将来の健康に大きくプラスに働きます。
毎日の食事を見直して、自分はもちろん、生まれてくる子どもの健康も守りましょう。


フェムテック
この記事の監修者
清水なほみ先生 / 医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック 院長
すべての女性が「自分らしい輝きを取り戻す」場として、横浜に婦人科クリニックを開業。婦人科医としての診療のみにとどまらず、漢方やコーチングなどの代替医療も総合的に活用しながら診療にあたる。また、トランスフォーメーショナルコーチ®のテクニックをフルに活用し、ブログでの情報発信やワークショップ、診療内のカウンセリング等で「本来の自分の姿に戻ることで健康を取り戻す」医療を展開している。 URL:http://www.vivalita.com/

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