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加齢とともに気をつけたい口腔ケアとは?口腔トラブルや予防法を知ってクリーンなお口を目指そう!

2023/10/30
飯田良平先生 / ヒューマンデンタルクリニック 院長

加齢によって、身体に変化が見られるように、口腔内も大きく変化します。口の中の健康は全身の健康にもつながっています。正しい口腔ケアは、歯周病や虫歯などのトラブルを予防すると同時に、身体の疾患や健康維持、QOL(生活の質)の向上にも役立ちます。
そこで今回は、加齢とともに気をつけるべき口腔トラブルや、口腔ケアの方法などについて詳しく解説します。

加齢に伴う口腔トラブル

年齢をかさねると、自覚症状はなくても、口腔内では様々な問題が生じています。どのようなトラブルの可能性があるのか、見ていきましょう。

・唾液の分泌量の減少
唾液には自浄作用・抗菌作用などがあり、口腔内を清潔に保つと同時に、免疫機能を維持する大切な役割をもっています。しかし年齢をかさねると、唾液腺の機能の低下や、残存歯数の減少、さらに口周りの筋肉の低下などにより、唾液分泌量が減少。唾液分泌量が減り、口腔内が乾燥する状態であるドライマウスは、虫歯や歯周病の進行、口内炎、雑菌の繁殖による口臭、味覚障害などの原因になります。また、唾液は食べ物を飲み込める状態「食塊(しょっかい)」に口で加工する(咀嚼)際に必要ですので、うまく食べられないといった、食事の困難にもつながることがあります。

・歯肉退縮
間違った歯みがきや歯ぎしり、食いしばりなどによって、歯を支えている歯槽骨が吸収され、歯肉が退縮して歯根面が露出してきます。露出した根面は、口腔内の細菌の酸に弱く、歯の成分が溶け出しやすい部分で、象牙質までむき出しになると、知覚過敏の症状が現れます。治療せずにいると、根面う蝕(こうめんうしょく:歯の根元にできる虫歯のこと)や歯周病が進行し、歯を失うことも。

・虫歯や歯周病が多い
加齢によって歯茎が下がり歯の根元が露わになると、虫歯になりやすくなります。特にドライマウス時は自浄作用が弱まるため、細菌が増殖し、歯周病にかかりやすい状態に。加齢による免疫力の低下も、虫歯や歯周病菌が増える原因の一つです。

・つめ物や被せ物の境目からの虫歯
加齢に伴って増えていくのが、治療で入れたつめ物・被せ物です。つめ物や被せ物と歯の境目には汚れがつきやすいため、丁寧なブラッシングで清潔を保っていないと、治療した歯であっても、再び虫歯や歯周病になってしまいます。

・味覚の変化
唾液の量が減ると、舌の表面に舌苔(ぜったい:細菌のかたまり)が付きやすくなり、味覚が変化することがあります。また、舌の表面にある味蕾(みらい:味覚を感じる器官)の味細胞の働きが悪くなったり、味の情報を処理する脳機能が衰えたり、偏った食生活などによっても、味覚障害が進行すると考えられます。

加齢による口腔トラブルを予防するには

加齢による口腔トラブルを防ぐためには、どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。ここでは、代表的な2つの方法について紹介します。

・正しい歯磨きをする
口腔トラブルを予防する基本は、正しい歯磨きです。自己流の歯磨きでは、歯の汚れをしっかりと落とせていないことがあるので、歯科クリニックで正しい歯磨き方法を身に付けることが大切です。
自分の歯に合ったサイズの歯ブラシを使用すると共に、歯と歯の間、入れ歯の留め金部分などの磨き残しを防ぐため、デンタルフロスや歯間ブラシなどを用意するとよいでしょう。舌をきれいにする舌ブラシやフッ素入りの歯磨剤(歯磨き粉)を使用することもおすすめです。

・ドライマウスの予防
よく噛んで食べたり、舌を動かしたりすることで、唾液腺が刺激されます。保湿剤が配合された洗口液を使うのも良い方法です。口の中が渇いたら、こまめに水分をとるように心掛けましょう。また、口を開け閉めしたり、唾液腺のマッサージやお口の体操をしたりすることも有効です。

≪唾液腺マッサージの方法≫
口腔内には、唾液が出やすい「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」の3つの唾液腺があります。食事前に唾液腺を軽い力でゆっくりとマッサージすることで、唾液の分泌を促します。リラックスして行いましょう。
唾液腺マッサージによって唾液が分泌されると、口腔内が潤って、歯の再石灰化が起こりにくくなって虫歯予防になります。また、自浄作用で細菌が減るため、口臭を防ぐ効果も期待できます。

  • 耳下腺:指を頬に当て、上の奥歯あたりを回すようにマッサージします。
  • 顎下腺:耳の下から顎下あたりを指先で押します。
  • 舌下腺:顎の下を親指で押すようにマッサージします。

≪お口の体操≫
口を開けたり閉じたり、舌を出したり引いたり、頬を大きくふくらませたりすぼめたりして、口の周りの筋肉を動かしましょう。唾液の分泌を促し、食べる機能の衰えを防ぎます。

加齢に伴う口腔内の衰えは自然なこと。正しいケアで全身健康に

加齢とともに口腔内が衰えるのは自然なことですが、年齢に応じて変化する口腔内の状態を知り、正しいケアを続けることで、口腔内の健康を保つことができます。
そのためにも、自宅でのセルフケアだけでなく、定期的に歯科クリニックでの専門的なケアを取り入れることも必要でしょう。いつまでも食べる楽しみを味わい、心身ともに健康でいるために、今一度、口腔ケアを見直しましょう。


オーラルケア
この記事の監修者
飯田良平先生 / ヒューマンデンタルクリニック 院長
鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座 非常勤講師、歯学博士。 鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座助教、同附属病院高齢者歯科・摂食嚥下リハビリテーション外来主任等を経て、2020年4月よりヒューマンデンタルクリニック院長。摂食嚥下の専門家として、高齢者や難病の方の訪問診療に積極的に取り組んでいる。 日本老年歯科医学会【指導医・専門医・摂食機能療法専門歯科医師】 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 評議員など https://iseiijindental.jp/

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