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経済毒性とは~経済的な負担による患者とその家族への悪影響~

2023/09/25
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー

株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。

今回は、「経済毒性」について解説していきます。
経済毒性(FinancialToxicity )とは、治療費の負担や収入の減少などの経済的な負担により、がん患者さんやその家族に経済的、心身への悪影響が出ることを指します。もちろん経済的な負担も大きいのですが、メンタル的にも非常に負担がかかるため、QOLが悪化するケースがみられます。

経済毒性の3つの要素

経済毒性には、3つの要素があります。

・支払いの増加
治療が進むにつれ、医療費全体の増加に繋がっていきます。

・収入の減少
最近社会的な問題にもなっている物価の上昇のために、生活費に給料が追いつかないというようなことも実際にあると思います。

・不安感
病気になったことによる不安に加えて、支払いの増加や収入の減少によるさらなる不安感が生じます。治療期間や治療費のことがよくわからず、終わりの見えない不安を抱える患者さんも少なくありません。
これが一番大きな要素ではないかと思います。経済毒性を有している患者さんは心身のQOLスコアが低いと言われています。

日本における“経済毒性”の存在と現状

日本は国民皆保険であり、高額療養費制度等の支援制度、支援活動もあります。患者さんが困っている場合に支援活動をしているグループもありますし、相談窓口や、高額な医療費をすぐに払えない人は後から払える制度などもあります。

しかし現実は、患者さんが治療費を払えずに治療を諦めるケースも存在しています。高額療養費制度を知っている患者さんというのは、実際はそれほど多くないように思います。言い換えれば、患者さんも医療者も、それらを経済毒性と認知されているかということですが、決して十分認知されているとは言えない現状があるように思います。

 

NPO法人キャンサーネットジャパンが行った「がん治療経験者を対象とした 経済毒性についての アンケート」(※1)によると、「がんと診断されたとき、お金の心配をしましたか。」という質問には、90%の患者さんが「心配した」と答えています。「経済的に先々が不安だと思いますか」という質問には、約90%は「不安だと思う」と答えています。

さらに、「治療中にしてもらえたら心理的負担が減ったのではないかと思うこと」については、
“診断時に治療の概算費用を教えて欲しかった”
“薬の服用について目安の期間を示してほしかった”
等の回答がありました。

また、「がん治療中に経済的な負担によって起きた悪影響」としては、
“治療費が払えないので治療を諦めた”
“税金、年金が払えない”
という例がありました。

(※1)https://www.cancernet.jp/wp-content/uploads/2023/07/keizaidokusei2023.pdf

 

愛知県がんセンター 薬物療法部の本多先生が、医療者を対象とした経済毒性啓発プロジェクトの中で行った医師に対するアンケート(※2) では、「経済毒性という言葉を見たり聞いたりしたことありますか」という質問に対して「はい」と答えた医師は3割弱にとどまっています。

また、「経済的負担が原因で、勧めた治療、検査、処方など患者さんに拒否されたり、あるいは延期したりした経験はありますか。」という質問に対しては、85%の先生が「ある」と回答しています。経験はしているにも関わらず、経済毒性という言葉を認識していない傾向があることも伺えます。

医療費の心理的な負担については、現実には、患者さんの気持ちがあまり理解されていないことが伺えます。患者の経済的な心理的負担を少しでもやわらげるためには、医師、薬剤師、ソーシャルワーカーや医療費関連の窓口の方と患者さんの連携が解決の鍵になると思います。

 

(※2)日本臨床腫瘍学会での講演 PSY1-1「経済毒性啓発プロジェクト(FT-01)から

経済毒性軽減に向けた対策

では、経済毒性軽減に向けたどのような対策があるのでしょうか。

 

北海道大学大学院医学研究院医理工学グローバルセンターの白土博樹先生は、社会的支援制度があるということをもっと広めなければならないと主張しています。また先生のご経験から「がん治療に求められるのはまず診断直後すぐに退職しないということを患者さんに求めることだ」ともおっしゃっています。

がん治療と薬物治療だけが治療ではなく、このような療養・就労両立支援指導は 、低コストで行え、がん経済毒性軽減に資する優れたがん治療の一部であることを認識することが大切だと言われています。

まとめ:経済毒性を減らすことも治療の一つ

治療効果というのは、治療、薬物治療、そして様々な形でのメンタル治療だけではなく、経済的な負担を少なくすることも、間接的な治療になります。

 

こういった経済毒性ということがなかなか認知されていないという現状を踏まえた上で、調査の際にもこの点を意識していきたいと思います。
経済毒性を先生方、患者さんがどこまで把握しているのか。それが治療に対して何か弊害になっているのか。そして、経済的な負担からくる患者さんの不安感やQOLの低下は実際どういったものか。これらのことを念頭に置き、多面的な調査を行っていければと思います。

北郷 秀樹(Hideki Hongo)  

Medilead Oncology Expert Advisor

外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

得意分野

Oncology launch strategic marketing / Oncology market research planning/application /design solution thinking

Reference

JSCO日本癌治療学会会員、JASCC日本がんサポーティブケア学会会員

語学

英語、スペイン語 (少々)

私生活

犬大好き、趣味はノルディックスキー


トレンド解説
この記事の監修者
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー
外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任 ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

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