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2023.07.10

学びシリーズ

ビジネスやマーケティングにおける「トリアージ」という概念とは?

株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。

「トリアージ」という言葉をご存知でしょうか。元は医療用語ですが、最近では、ビジネスやマーケティングの場面においても使われるようになりました。似た言葉に「プライオリティ」がありますが、両者の違いについても触れながら、「トリアージ」とはどのような概念で、どのようにビジネスやマーケティングに取り入れていけばいいのかについて解説いたします。

トリアージ(TORIAGE)とは

「トリアージ」とは、医療用語の一つで、災害時などに多数の傷病者が出た場合に、治療や処置の優先順位(搬送と治療の優先順位)をつけて患者を分類することを指します。
起源は、ナポレオン戦争時代に遡ります。当時は、戦力の減少を避けるため、多くの戦傷者の中から軽傷者を手当して戦線に復帰させる目的で用いられました。トリアージには様々な判定基準がありますが、その一つにSTART(Simple Triage and Rapid Treatment)法があります。これは、患者さんの重症度を「歩けるかどうか」「呼吸の有無」「呼吸数」「脈拍」「自発呼吸の有無」などから判断し、4つの区分に分類するものです。
 
災害発生現場では、患者さん一人ひとりをじっくり診察している時間はありません。その中で、正確かつ迅速に判断し、1人でも多くの命を救う必要があります。患者さんを4つに分類することで、助かる可能性のある人を優先して治療を行います。逆に、もう助かる見込みのない人についてはそこにかける時間を助かる人の方に費やすということです。戦争の場ですので、医師も看護師もそれほど多くない中、患者選択、分類をすることで、1人でも多くの命を救うために、やむを得ない事情でトリアージを行っていました。
 
最近、新型コロナ感染症への対応において『陽性患者が急増して病床がひっ迫、医療崩壊のような状況に直⾯した中、限られた数の医療資源をどう配分するか』という問題に、トリアージの提案がなされました。今は感染法上の分類が5類になりましたが、当初は非常にひっ迫しており、どの病院も満床状態で他の疾患の患者さんを受け入れられないような状況で、どの患者さんを先に治療するかという問題が出てきました。そのため、コロナに感染した人を優先し、例えば継続的に受診している患者さんについては、大丈夫そうであれば手術のタイミングを遅らせるなどして、必要な人に医療を届け、一人でも多くの命を救うための選択として、トリアージという提案が採用されたという背景があります。

マーケティング戦略におけるトリアージ

こういった一種の戦争用語として使われてきた「トリアージ」という言葉に対し、「プライオリティ」という言葉もあります。

これらの違いは何かというと、「プライオリティ」は、一般的な優先順位を意味します。例えばAとBとCという戦略がある場合に、まずAを最優先し、次にB、そしてCを後回しにするというように優先順位をつけることを言います。このプライオリティは、仕事を円滑に進めるために不可欠なものです。その決め方は、「重要度」と「緊急性」から判断することが基本になります。
 
「トリアージ」の方は、新たな戦略が出てきたときに、優先順位の高い戦略に多くのリソースを集中し、限られたリソースの中で優先順位の低い戦略は捨てることも必要だとする考え方です。例えば、当社のような医療分野におけるマーケティングリサーチを行う場合、様々な医師のニーズや患者さんのニーズによって、治療において何を優先するかというテーマの調査を行うことも数多くありますが、その中でいろいろな要素が出てきます。2つ、3つであればその中でのプライオリティを決めればいいのですが、ニーズに多様性があり、5個、7個、10個と出てきた場合、プライオリティをつけることはなかなか難しいと思います。人も予算も限られていますので、何かを削らなければいけません。
 
このような場合には、このトリアージという考え方を用いて、時には捨てるという提案も必要になってきます。分析の結果、自社製品のシェアを伸ばすことや、適応できる患者さんに広げることに貢献していないという結果が出た場合、来年の戦略からは外してみるという選択も必要です。似た考え方として、「3プラスポイント 3マイナスポイント(価値の高まるものを追加する。一方で、付加価値を生んでいない不要なものを削除する)」という言葉もあります。

企業活動におけるトリアージ

このトリアージの考え方は、リスク管理にも活かすことができると思います。限られた時間とマンパワーの中で一刻も早くセキュリティを守るための防御策として応用されることにも当てはまります。
また、将来的な企業の責任として、サステナビリティがあります。企業は単に目先の利益だけを追求するのでなく、環境や社会、人々の健康、経済などあらゆる場面において機能を失わずに続けていくことができる行動をしていくことが求められています。その行動が企業の価値を高めていくことになると思います。
そのためには、企業のビジョンから“何ができるのか、何を優先的に取り組んでいくのか”を決めて行動を起こすことが重要になっています。
 
限られた資源をいかに有効に配分して、最⼤限の効果を上げるか」という視点を持ち、“何を優先するか(時には捨てることも)”を明確にすることが大切です。そしてその判断を迅速かつ繊細に下すためには、事前にマーケティング活動の根幹となる企業のビジョンを明確にすることも大切です。
 
メディリードとして、最適な調査・分析を通して、お客様にとって価値のある情報を提供するために、また企業責任としてのサステナビリティの行動をするために、このトリアージの概念を取り入れていきたいと思います。

北郷 秀樹(Hideki Hongo)  

Medilead Oncology Expert Advisor

外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

得意分野

Oncology launch strategic marketing / Oncology market research planning/application /design solution thinking

Reference

JSCO日本癌治療学会会員、JASCC日本がんサポーティブケア学会会員

語学

英語、スペイン語 (少々)

私生活

犬大好き、趣味はノルディックスキー

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