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2024.03.13

学びシリーズ

ウェルビーイング(Well-being)とは?

株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。

近年、ウェルビーイングという言葉を耳にすることが増えました。最近は企業などでもよく使われています。この概念は、健康や幸福に対する人々の関心の高まりを反映しており、医療現場だけではなく、企業の人材管理や組織文化の形成においても重要な役割を果たしています。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-being)とは、Well(良好な、健康な)とBeing(状態)を組み合わせた言葉です。具体的には、心身の健康、充実した社会関係、経済的な安定、生活の質の向上など、多岐にわたる要素が含まれます。ウェルビーイングは、単に病気がないという状態を超えて、全体的な幸福感と生活の充実を重視する概念です。

QOLからウェルビーイングへ

同じく個人の幸福や満足度に関連する概念として、QOL(Quality of Life:生活の質)がありますが、最近では、医療でも、QOLよりもウェルビーイングに関心が高まっているように思います。

 

QOLは、1947年に世界保健機関(WHO)が定義した「健康」に相当する言葉として使われるようになりました。WHO憲章では、「健康」について以下のように定義しています。

 

健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)

十数年前までは、QOLという言葉自体が先走り、本質について議論が交わされた時期もありましたが、主に健康という漠然とした意味で、日常生活を維持していくための要素として、医療従事者や企業において使われてきました。

 

対してウェルビーイングは、さらに広い意味で“心身だけでなく社会的でも健康であることを意味し、満足した生活を送ることができている状態”を指します。瞬間的な幸せを意味するHappinessではない、「持続的な幸せ」を目指す概念です。たとえば、長い治療時間にあっても日常生活を楽しみながら治療を受けることができるといった持続的な幸せを一つの目標値にするという意味で、ウェルビーイングの方が使われるようになったという背景があります。

ウェルビーイングが注目されるようになった理由

ではなぜウェルビーイングが注目されるようになったのでしょうか。

 

価値観の変化

一つ目の背景としては、価値観の変化があります。
近年では、物質的な所有から心の豊かさへと、人々の価値観が変化しているようです。以前は物を持つこと自体に満足感を見出していましたが、現在では物を購入し、それを自分なりにカスタマイズしていくプロセスや、物を持つことで得られる心の豊かさを価値あるものと捉える傾向があります。このように、物質的な豊かさだけではなく、生活の質や心の幸福感が重視されるようになってきたという背景があります。また、近年のリモートワークの普及によって、ワークライフバランスに対する意識が高まっていることも、一つの背景として考えられます。

 

サステナビリティとSDGs

そして二つ目が、サステナビリティ(持続可能性への取り組み)とSDGs(Sustainable Development Goals)です。

サステナビリティやSDGs(持続可能な開発目標)は、持続可能な社会の実現に向けた重要な目標です。これらは、現在の私たちのニーズを満たしつつ、将来の人々が幸せに暮らせるよう、地球の資源を守ることを目指しています。加えて、循環型社会の構築、つまり廃棄物を減らし再利用を促進することで、地球環境の保護と人間の幸福を目指す考え方も最近ではよく聞かれます。地球温暖化への対策も、この取り組みに深く関わっています。
環境保護は健康な生活環境を提供し、これがウェルビーイングを向上させます。同時に、社会のウェルビーイングが高まることは、サステナビリティとSDGsの目標達成において重要な役割を果たします。

 

また、2025年には大阪万博が開催されます。「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、ウェルビーイングの概念が取り入れられる予定です。ぜひ時間が許す限り、この万博を訪れて、持続可能性とウェルビーイングについて直接感じ取っていただきたいと思います。

医療におけるウェルビーイング

医療分野におけるウェルビーイングは、特に高齢者や慢性疾患を持つ患者の増加を背景に、持続可能な幸福をどのように実現するかという点に焦点を当てています。このような状況の中で、私たちは一時的な幸福ではなく、真の持続的な幸福とは何かを自問自答することが大切です。

 

患者さんにとっては、5年間再発がなければ完治したということになりますが、その5年間は苦しい場面も出てくると思います。そしてさらに、完治後の人生をどのように幸せに過ごすかについて考えていく必要があります。

 

さらに、最近よく聞かれる「健康寿命」「介護負担の削減」などにも、ウェルビーイングの概念が取り入れられています。これらも、持続的な幸福を支える重要な要素となります。

企業におけるウェルビーイング

企業におけるウェルビーイングの重要性には、主に3つの側面があります。

 

個人の幸福と企業の成果の相関

個人の幸福と企業の営業成績には、強い相関関係があることがわかってきました。つまり、社員一人ひとりが持続的な幸せを感じることが、企業にとっても非常に重要であるとされています。

 

健康な生活の維持

体が健康であることは、意図した生活を送る上で不可欠です。体が健康な状態であれば、積極的に学び、そこからアイデアを得ることもできますし、目的意識を持って主体的に仕事に取り組むこともできます。様々なことに挑戦してポジティブな気持ちになることで、やがては生き生きとした生活へと繋がります。

 

自社と取引先の幸福を実現する経営

三つ目は、自社の利益だけでなく、取引先やクライアントの幸福を考え、実現する経営です。たとえば、私たちが作成した調査レポートが取引先の戦略や戦術の策定に役立ち、それが企業の利益につながり、さらに患者さんに治療を提供することができるなど、その先にいる顧客の満足や幸せに繋がることが理想的です。
 
企業におけるウェルビーイングの実践例としては、環境や健康に配慮した洗剤の開発などが挙げられます。無駄な成分を省き、皮膚への優しさと節水効果を実現することは、企業にとっても消費者にとっても喜ばしいことです。このように、ウェルビーイングを意識することは、企業活動のあらゆる側面で重要であると考えられます。

人が持続的な幸せを感じるための5つの要素

最後に、人が持続的な幸せを感じるための5つの要素をご紹介します。
 
PERMA理論といわれるこれらの要素は、2011年にマーティン・セリグマン博士が提唱したもので、人々の幸福感やウェルビーイングを高めることに貢献するとされています。ぜひ日常生活の中で意識してみてください。

 

P (Positive Emotions)
喜び、感謝、希望などのポジティブな感情を経験すること。これらは日々の生活でポジティブな経験を増やすことに貢献します。
 
E (Engagement)
活動や仕事に完全に没頭し、フローの状態を経験すること。個人の強みや興味が活動と一致するときに生じます。
 
R (Relationships)
充実した人間関係は幸福の重要な源です。愛情、帰属感、友情など、肯定的で良質な人間関係を築くことが含まれます。
 
M (Meaning)
何か大きなものの一部となる感じ、人生における意味や目的を持つこと。自分の行動が個人的な価値観や高い目的に貢献していると感じることです。人生の目的がある人は、人生の満足度が高く、より長生きする傾向があることが知られています。
 
A (Accomplishment)
目標を達成し、課題を克服することで得られる達成感。成功を追求し、努力に対する報酬を感じることが含まれます。

 

ウェルビーイングの概念を日常生活や職場に取り入れることで、私たちはより充実した生活を送ることができます。ポジティブな変化を生み出すためには、一人ひとりの意識と行動が重要です。上述した5つの要素も参考にしながら、ウェルビーイングを自分の生活や仕事の中でどのように実現できるかを考え、行動してみてください。

北郷 秀樹(Hideki Hongo)  

Medilead Oncology Expert Advisor

外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

得意分野

Oncology launch strategic marketing / Oncology market research planning/application /design solution thinking

Reference

JSCO日本癌治療学会会員、JASCC日本がんサポーティブケア学会会員

語学

英語、スペイン語 (少々)

私生活

犬大好き、趣味はノルディックスキー

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