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最新データから見るBMIの傾向、健康への影響とは?

2024/07/09
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するヘルスケアデータベースを活用し、コラム記事としてお届けしています。

近年、BMI(ボディマス指数)の傾向とその健康への影響が注目されています。BMIは、肥満や過体重の評価に使われる主要な指標ですが、その変動は私たちの健康状態に深刻な影響を及ぼします。この記事では、2023年にメディリードが調査を実施し構築したヘルスケアデータベースのデータをもとに、現在のBMIの傾向、およびBMIがどのように健康に影響を与えているのかを詳しく解説します。

BMIとは

そもそもBMI(Body Mass Index)とは、ボディマス指数と呼ばれ、主に成人の肥満度を示す体格指数として用いられています。体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った値のことで、計算方法は以下のとおりです。

BMI値=体重(kg)÷(身長m×身長m)

たとえば、身長170cm、体重65kgの場合、65÷(1.7×1.7)=22.49という計算となり、この場合のBMIは22.49です。

BMIの基準

BMIの計算方法は世界共通ですが、肥満の判定基準は国や機関により異なります。これらは、各国の健康政策や文化的背景に基づいて設定されています。低体重が18.5未満であることは、概ね共通しているようです。主要な基準は以下のとおりです。なお、この記事では、日本肥満学会が定めた日本における基準をもとに解説いたします。

日本(日本肥満学会) WHO(世界保健機関) アジア太平洋地域
(WHOアジア太平洋肥満タスクフォース)
アメリカ(CDC)
低体重: 18.5未満
正常体重: 18.5〜24.9
肥満(1度): 25.0〜29.9
肥満(2度): 30.0〜34.9
肥満(3度): 35.0〜39.9
肥満(4度): 40.0以上
低体重: 18.5未満
正常体重: 18.5〜24.9
過体重: 25.0〜29.9
肥満: 30.0以上
低体重: 18.5未満
正常体重: 18.5〜22.9
過体重: 23.0〜24.9
肥満: 25.0以上
低体重: 18.5未満
正常体重: 18.5〜24.9
過体重: 25.0〜29.9
肥満(1度): 30.0〜34.9
肥満(2度): 35.0〜39.9
肥満(3度): 40.0以上

またご参考までに、最近話題の肥満治療薬の適応条件について解説します。

「ウゴービ」の適応条件

ウゴービ(一般名:セマグルチド)は、日本で初めて厚生労働省に承認されたGLP-1受容体作動薬に分類される自己注射剤です。この薬は、糖尿病の治療や治療体重減少を促進するために使用され、日本では2024年2月に発売されました。

高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを持ち、食事療法や運動療法で効果が得られなかった場合、またはBMIが27以上で、以下に挙げる2つ以上の肥満関連健康障害がある場合、もしくはBMIが35以上の患者が保険適用対象となります。

・耐糖能障害 (2型糖尿病、耐糖能異常)
・脂質異常症(高脂血症)
・高血圧症
・高尿酸血症(痛風も含む)
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
・脳梗塞または一過性脳虚血発作
・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
・月経異常または女性不妊
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群
・運動器疾患
・肥満関連腎臓病

「アライ」の適応条件

2024年4月8日に発売されたアライ(一般名:オルリスタット)は、大正製薬が開発した肥満治療薬で、日本では初の内臓脂肪減少薬です。市販薬として薬局やドラッグストアで購入できることから話題となりました。「肥満症治療薬」ではなく「肥満治療薬(内臓脂肪減少薬)」であることから、ウゴービとは適応が異なり、肥満症の方は使用できません。
服用の要件としては、18歳以上で、腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上であり、BMIが25以上35未満であること、さらに肥満に関連する健康障害がないことが必要です。

BMIの傾向

では、日本でのBMIの傾向はどうなっているのでしょうか。2023年8月~9月に行ったMHPの調査で聴取した結果は以下のとおりです。

全体

〈図1〉


全体の約7割弱が、普通体重とされるBMI18.5~24.9の範囲に収まっています。
肥満とみなされるBMI25以上の割合は、全体の約2割です。
一方で低体重とされるBMI18.5未満の割合も12.0%と、10人に1人以上の割合です。

男女別

〈図2〉


男女別にみたものが〈図2〉です。
BMI25以上の肥満の割合は男性で高く、約3割弱を占めています。
一方で女性では低体重が多く、その割合は22.3%にのぼります。

年代別

〈図3〉


さらに年代別でみたものが、〈図3〉です。
男女ともに、10代では低体重の割合が高く、それぞれ約3割を占めています。
男性では20代から割合が減少しますが、女性では20代でもなお高い割合を示しています。
BMI25以上の肥満1度の割合は、男性では40代から全体の2割を超え、50代でピークを迎えています。女性は全年代を通して男性と比べて肥満の割合は少なく、低体重の割合が多い傾向にあります。

BMIが健康に与える影響

日本における正常体重の範囲は、BMI18.5〜24.9です。では、この範囲を超えた場合、どのような影響があるのでしょうか。高BMIの場合、低BMIの場合と分けてみていきましょう。

高BMIが引き起こす健康リスク

〈図4〉は、各疾患の入通院経験の割合を、肥満度1~4(BMIが25以上)の人とやせ・普通(BMIが25未満)の人に分けて示したものです。糖尿病、高血圧症、脂質異常症において、大きな差が見られました。

〈図4〉


それぞれについて解説します。

糖尿病とは

糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が高くなる病気です。これは、インスリンというホルモンが不足したり、体がインスリンに対して適切に反応しなくなったりすることが原因です。糖尿病は主に、以下の2つのタイプに分類されます。

1型糖尿病

インスリンを作る膵臓のβ細胞が自己免疫によって破壊され、インスリンがほとんどまたは全く分泌されなくなることから発症し、主に若年層に多く見られます。

2型糖尿病

インスリンの分泌量が不足したり、体がインスリンに対して抵抗性を持つようになることから発症します。主に中高年に多い傾向があります。

高BMI(25以上)は2型糖尿病のリスクを高めることが知られています。
高BMIは脂肪細胞の増加を伴うため、これがインスリンの働きを妨げる「インスリン抵抗性」を引き起こします。インスリン抵抗性があると、体は正常な血糖値を維持するために過剰なインスリンを必要とし、最終的にはインスリンの分泌が追いつかなくなります。
また、肥満は慢性的な炎症を引き起こし、これがインスリン抵抗性をさらに悪化させてしまいます。

高血圧症とは

体重が増えると血管にかかる圧力が増加し、心臓がより多くの血液を送り出さなければならなくなるため、高血圧症のリスクがあると言われています。高血圧症は、心血管疾患や腎臓病、動脈硬化など、様々な疾患を引き起こす可能性があります。

脂質異常症とは

脂質異常症(旧称:高脂血症)は、血液中の脂質(コレステロールやトリグリセリド)の濃度が異常に高い状態を指します。これが長期間続くと、動脈硬化や心血管疾患のリスクが高まります。

脂質異常症は、以下の3つに分類されます:

高LDLコレステロール血症(悪玉コレステロールが高い)
低HDLコレステロール血症(善玉コレステロールが低い)
高トリグリセリド血症(中性脂肪が高い)

高BMI、つまり肥満になると、脂肪細胞が増加し、これが脂質代謝を乱します。脂肪細胞が肥大化すると、インスリン抵抗性が増加し、結果として血中脂質の異常が発生します。また、高BMIは慢性的な低度の炎症を引き起こし、これが脂質代謝に悪影響を与えます。炎症性サイトカインの増加は肝臓の脂質生成を促進し、血中脂質のレベルを上昇させます。さらに、肥満はレプチンやアディポネクチンといった脂肪細胞から分泌されるホルモンのバランスに影響を与えます。これが脂質代謝に影響を及ぼし、脂質異常症のリスクを高めます。

低BMIが引き起こす健康リスク

高BMIのリスクについてみてきましたが、BMIは低ければ低いほどいいというわけではありません。18.5未満の低BMIでも深刻な健康リスクを引き起こします。
〈図5〉は、1年以内に「運動器(骨格・関節・筋肉)の病気・症状でこの1年の間に入通院されたと回答した人のBMI別の割合と、そのうち骨粗鬆症で入通院したと回答した人のBMI別の割合を比較したものです。

〈図5〉


骨粗鬆症で入通院したと回答したBMI18.5未満の低体重の人の割合は、運動器の病気・症状で入通院したと回答した低体重の人の割合に対して2倍以上となっており、低体重の人は骨粗鬆症のリスクが高いことがうかがえます。

骨粗鬆症で入通院していると回答している人のうち、BMI18.5未満と18.5以上の人に分けて示したものが〈図6〉です。

〈図6〉


このデータからも、低体重の人は骨粗鬆症になるリスクが高いことがうかがえます。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは、骨の密度と質が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です。骨の強度が低下することで、軽い転倒やちょっとした衝撃で骨折を引き起こすリスクが高まります。
低体重の人は、一般的に骨量が少ない傾向があります。骨量が少ないと、骨密度が低下しやすくなります。また低体重の人は、必要な栄養素、特にカルシウムとビタミンDが不足していることが多いです。これらの栄養素は骨の健康を維持するために重要であり、不足すると骨密度が低下します。さらに、低体重によって骨にかかる負荷が少ないことも、骨の強度を低下させる要因となります。

骨粗鬆症以外にも、低体重の人は不妊症などの生殖機能の低下や、免疫機能の低下、低血糖などの症状につながるリスクがあります。栄養不足に伴い、うつ病や不安症などの精神的健康にも悪影響を及ぼす可能性もあります。

適正なBMIにするためのヒント

これまで見てきたように、BMIは高すぎても低すぎても健康上のリスクがあります。BMIが正常範囲内にない人は、まずは適正なBMIになるようにしましょう。そのためのヒントをお伝えいたします。

バランスの取れた食事

高BMIの人は、まず食事制限を考えるかもしれません。しかし食事を制限するだけでは、必要な栄養素が不足し、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。バランスの取れた食事は、必要な栄養素をしっかりと摂取し、代謝の維持、満足感のコントロール、長期的な健康維持、筋肉量の維持、精神的な健康、ホルモンのバランスに寄与します。結果的に、適正なBMIを維持するために役立ちます。

低BMIの人もバランスの取れた食事を摂ることで、BMIを正常範囲に戻すことが可能です。適切な食事と生活習慣の改善は、健康的な体重増加を促進し、栄養状態を改善するのに役立ちます。特に低BMIの人は、タンパク質、良質な脂質、炭水化物など、栄養価の高い食品を積極的に摂るようにしましょう。また、カロリー摂取量を増やすために、ナッツやチーズ、フルーツなどを食事の合間に摂ることや、アボカドやオリーブオイルなど、カロリー密度の高い食品を摂ることもポイントです。

定期的な運動

適正なBMIを維持するためには、バランスの取れた食事とともに、定期的な運動が非常に大切です。運動はカロリー消費を促し、筋肉量を増やし、全体的な体力と健康を向上させる効果があります。運動には大きく分けて、筋力トレーニングと有酸素運動があります。

筋力トレーニング

プッシュアップ、スクワット、プランクなどの自重トレーニング、ダンベルやバーベルを使うウェイトトレーニングなどがあります。筋肉量を増やし、基礎代謝を高めるのに役立ちます。筋力トレーニングを行うことで、運動後もカロリー消費が持続します。

有酸素運動

カロリーを消費し、心肺機能を向上させるために非常に効果的です。具体的には、ウォーキング、ジョギングやランニング、サイクリング、水泳、ダンスなどが挙げられます。

どちらの運動も大切ですが、高BMIの人が痩せるためには、有酸素運動がもっともおすすめです。カロリーを効果的に消費するので、体脂肪を減らすのに効果的であるためです。

逆に低BMIの人は、過度なカロリー消費を避けるため、有酸素運動は適度な量に留め、筋力トレーニングに力を入れることをおすすめします。
筋力トレーニングは、筋肉を強化し、体重を増やすための筋肉の発達を促進します。また、骨密度を高め、骨の健康を維持するため、骨粗鬆症の予防にも役立ちます。

十分な睡眠

適正なBMIにするためには、食事や運動だけではなく、十分な睡眠をとることも重要な要素です。睡眠不足や質の悪い睡眠は、体重管理に悪影響を及ぼし、肥満や低体重のリスクを増加させることが研究で示されています。

十分な睡眠をとることは、ホルモンバランスの維持、インスリン感受性、ストレスホルモンの低減などに好影響を与えます。低BMIの人にとっては筋肉量を増やすことが大切ですが、睡眠中、特に深い睡眠の間に分泌される成長ホルモンは、筋肉の修復と成長を促進し、筋肉量を増加させるために有効です。

十分な睡眠をとるためには、毎日なるべく同じ時間に寝起きする習慣を整えることが大切です。また、適度な運動、食事管理(寝る前の重い食事やカフェインを避ける)も有効です。寝る前はスマホやデジタル機器を避け、読書や瞑想などのリラックスする時間を持つことで、入眠しやすくなります。

定期的なモニタリング

適切なBMIを維持し、健康を管理するためには、定期的なモニタリングも重要です。定期的なモニタリングを行うことで、体重や健康状態の変化を早期に察知し、必要な対策を講じることができます。具体的には、体重測定、BMI計算、ウェアラブルデバイスの利用、食事の記録などがあります。体の変化を早期に察知できるだけではなく、モチベーションの維持にも効果的です。今は様々なアプリがありますので、活用することもおすすめです。自分に合った無理のない方法で行うようにしてください。

まとめ

肥満度を示すBMIは健康管理において重要な指標であり、適正な範囲に保つことが健康維持の鍵となります。高BMIは高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスクを高め、低BMIは骨粗鬆症などのリスクを増加させることが、弊社のデータでも示されています。
健康的な体重を維持するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が欠かせません。また、定期的なモニタリングを行い、体重や健康状態の変化を早期に察知することも重要です。必要に応じて、医師などの専門家に相談することもおすすめします。

「肥満度と健康状態の可視化」についてのレポートは、以下の記事よりダウンロードいただけます。

■ Medilead Healthcare Panel(MHP)について

 

MHPは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。

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<例> 「医療関連調査会社のメディリードの同社が保有する疾患に関するデータベースを用いたコラムによると・・・」


ヘルスケアコラム
この記事の監修者
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部
メディリードは、「私たちの幸せな生活とヘルスケアの未来のため」という事業理念のもと、医療領域の調査を通じて患者さんのアウトカム改善を目指しています。ヘルスケアの解像度を高めることで、多くの方々の幸せな未来の生活に貢献したいと考えています。革新的な医療ソリューションを提供し、患者さんのQOL(生活の質)向上を実現していくことを目指しています。

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