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調査におけるカスタマーエクスペリエンス(CX)の重要性

2024/06/14
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー

株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。今回のテーマは「カスタマーエクスペリエンス(CX)」です。

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、商品やサービスの利用における顧客視点での体験を指します。顧客がサービスや商品を評価する際、その体験の一連の流れ全体(最初から最後までの体験)を通じて評価されるものです

CXとUX、CV、CSの関係



ご存知のとおり、「エクスペリエンス」とつく言葉は様々あります。カスタマーエクスペリエンス(CX)は一つの大きな枠となります。

 

そのすぐ下にあるのがユーザーエクスペリエンス(UX)です。UXとは、個々のユーザーが商品やサービスを使用する際の部分的な体験を指します。ユーザーが特定の製品やサービスをどのように感じ、どのように使い、どのような感情を持つかに重点を置きます。

 

その中にある核となるものが、コアバリュー(CV)です。これは、商品やサービスの本来の価値を指します。一度使った人がもう一度同じメーカーさんのモノを買おうという一連の流れの中での感情的な経験価値です。

 

そして、それらとは少し離れたところにあるのが、カスタマーサティスファクション(CS)です。これは、商品やサービスの価値と体験に対する評価や満足度を指します。

 

しかし、顧客が満足したからといって、必ずしもまたそのサービスを利用するとは限りません。そこで、CSは少し切り離して考えたほうがいいのではないかと思います。

 

もちろん評価をしてもらうことは非常に重要なことですが、捉われすぎる必要はないと考えています。

調査におけるCXの例



私のクライアントとしての経験から、市場調査におけるクライアントのCXとは、”次の調査もこの調査会社と一緒に仕事がしたい“と思わせる経験であり、人の心に響くような感情的な価値ではないかと思います。

 

調査プロセスの各マイルストーンにおいて、CXは非常に重要です。企画書の作成からキックオフ、リクルート、実査、レポート作成、プレゼンテーションまで、全体を通じて顧客が受け取る価値がCXです。これには物的価値(レポートなど)と感情的価値が含まれます。

 

感情的価値はさらに感覚的価値と心的価値の2種類に分けられます。

 

感覚的価値は、五感で感じる価値のことで、たとえばレポートのフォーマットなど、視覚的なインパクトなどが含まれます。

 

心的価値は、たとえば気づかせてくれる、疑問や迷いを解消してくれる、十分理解をしてもらえたという安心感などが含まれます。

 

顧客によって要望は異なるため、それによって得られる心的価値も異なります。顧客は何を期待しているのか、どんなところに価値を感じるのかということを考えていくことが大切です。その際には、次項で解説する時代の変化についても考慮しておく必要があります。

 

現代におけるCXの変化

時代の変化に伴い、人々の感情ニーズや、求められるCXも変化しています。たとえば、以下のようなことが挙げられます。

 

オフラインで得られた価値をオンラインでも提供

従来の定性調査では、オフラインでの会場での観察や休憩時間の会話を通じて、深い理解が得られていました。しかし、現在はほとんどがオンラインで行われており、100%の情報を得るのが難しい状況です。それでも、オンラインの制約の中で最大限の価値を引き出すことが重要です。話された言葉から重要な情報をどれだけ引き出せるかが、成功の鍵となります。

 

世代間のデジタルギャップ

若い世代、特にZ世代はパソコンやスマホを使いこなすことが当然とされています。一方、高齢世代はそれらをようやく使いこなしている段階にあります。このデジタル技術の使いこなし方のギャップが、カスタマーエクスペリエンスにも影響を与えています。例えば、アバターを使って服を試着するアプリなどの新しい技術が普及し、CXの変化を促進しています。

 

タイムパフォーマンス

カスタマーエクスペリエンスの評価は、昔は長期間に渡って行われていましたが、現在ではタイムパフォーマンス(タイパ)が重視されています。タイパは、限られた時間内でいかに効果的に目的を達成するかを評価する概念です。たとえば音楽の聴き方を例にとると、昔はアルバムを通して聴くのが一般的だったのが、現在ではイントロを飛ばしてサビだけ聴くことが多くなっています。

 

これと同じように、クライアントは迅速な結果を求めており、3週間のレポート作成期間が長く感じられることがあります。特に若い世代は、迅速なフィードバックを好みます。そのため、的確で迅速なレポート作成が求められています。

CX向上のためのポイント

最後に、調査においてCXを向上させるための3つのポイントをお伝えします。

 

十分に理解する

“上流を知ることで、下流で何が起こっているのかを知ることができる”。

 

以下の3つを把握するために顧客へ十分なヒアリングを行うことが大切です。

①なぜその問題が起きたのか
②何が問題なのか(顧客が一番知りたがっているのは何か)
③課題は何か

 

時間が取れない場合は、メールなどの手段を活用して、十分な理解を得るまで行ってください。

 

チームで方向性明確にする

次に、顧客にどう思われたいのかなど、チーム全体で共有する方向性ビジョンを明確にすることが重要です。同じ目標を持つことで、一貫したアプローチが可能になります。

 

顧客の再評価を得る

最後に、顧客からの評価を積極的に活用し、学ぶ姿勢が大切です。プラスの評価もマイナスの評価も成長のヒントと捉え、次の機会に活かしていくことです。

 

これらの取り組みにより、次も同じ会社に依頼したいと思わせる感情的な価値を築けるでしょう。参考にしていただければ幸いです。

北郷 秀樹(Hideki Hongo)  

Medilead Oncology Expert Advisor

外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

得意分野

Oncology launch strategic marketing / Oncology market research planning/application /design solution thinking

Reference

JSCO日本癌治療学会会員、JASCC日本がんサポーティブケア学会会員

語学

英語、スペイン語 (少々)

私生活

犬大好き、趣味はノルディックスキー


トレンド解説
この記事の監修者
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー
外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任 ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

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