ニューノーマルを生き抜く
2024/01/31株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。
「ニューノーマル(New Normal)」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。これを簡単に説明すると、大きな変化や危機が発生した後、これまでには想像もしていなかった変化や新しい常態が、気がつけば当たり前のようになってしまう現象を指します。今回は、時代の変遷を振り返りながら、「ニューノーマル」という言葉がどのような状況で生まれたのかを考察し、ニューノーマルを生きる上での3つのキーワードをご紹介します。
目次
例えば、がん患者が最善の治療を受けたにもかかわらず、終末期を迎える状況となったとき、元の日常生活とは異なるライフスタイルで、残された時間をその人らしく生きてゆくという意味合いで「ニューノーマル」と表現したことがあります。
それでは、過去にどんなニューノーマルがあったのか、解説していきます。
今から20年以上前の2000年頃、インターネットが普及し始めました。それまでは、アナログで文章や文字を書くことが主流でしたが、インターネットの登場により、ビジネスモデルに大きな変化が生じました。インターネットを使うことで検索ができるようになり、パーソナルコンピュータ(PC)の普及によって、データ処理や様々な活動の管理方法などが全て変わっていきました。
さらに近年では、ICT(Information and Communication Technology)、つまり情報通信技術の進展により、さらに様々な変化が生まれています。たとえば、SNSの普及や、ビデオ会議などを利用したテレワークの普及もその一例です。 IOT(Internet of Things)化による自動運転や、スマート家電の進展も注目されています。
2008年に起こったリーマン・ショックは、アメリカの大手投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻した事件のことです。それをきっかけに大恐慌が起こりました。この時、各メーカーは、国内市場だけに注目していては危険だという認識を持ち、グローバル化への動きが加速しました。アメリカの企業も、国内市場だけでは限界があると感じ、ヨーロッパや日本への進出を進めました。
そして、2020年からの新型コロナウイルスの世界的流行があります。この時、生活様式が大きく変わり、非接触型の対応やリモートワーク、マスクの着用が普及しました。これらは全世界に広がりました。感染拡大が終息した現在も多くの人がマスクをしています。コロナウイルスだけでなく、インフルエンザなどもありますし、一度マスク着用に慣れてしまうと、なかなかやめられないかもしれません。これもまた、ニューノーマルの一例と言えるでしょう。
さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)も大きな流れの一つです。デジタルトランスフォーメーションとは、企業や組織がデジタル技術を採用し、ビジネスプロセス、文化、顧客体験を根本的に変革するプロセスを指します。医療業界での代表的な例としては、オンライン診療が挙げられます。非接触型で遠隔地にいる医療従事者やかかりつけ医師が、専門の医療機関とネットワークを通じて繋がり、診断や検査を行い、薬の処方も可能になるというものです。これは非常に良いことだと思います。
また、ロボット手術の技術も進歩しています。これにより、より正確な治療が可能になってきています。このような変化が、ニューノーマルという大きな流れの一部になっていると思います。
最後に、「ニューノーマルを生きる」というテーマで、マーケティングや製薬企業、大手企業の中で言われている三つのキーワードについて触れていきます。この三つのポイントを学ぶことで、この時代を受け入れ、楽しむことができると思います。
一つ目はオンラインコミュニケーションです。
IT技術の進化や、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、オンライン上のコミュニケーション、リモートワークが急速に普及しました。最初は、リモートでの会議や意思決定がうまくいくかどうか、多くの懸念がありましたが、実際に行ってみると、回を重ねるごとにやり方が分かり、受け入れられるようになり、環境も整ってきました。その結果、リモートワークが大きな支障をきたさないという意見が多くなりました。
そのカギとなるのは、オンラインでのコミュニケーション能力です。相手の感情や気持ちを読み解く工夫や姿勢が非常に重要になります。どのようにメールでコミュニケーションを取るべきか、何をチャットでやるべきかなど、適切なツールの選択が重要です。全てをチャットで行うのは現実的ではなく、適切なツールを使うことで、より良いコミュニケーションが可能になります。
最近ではオフィスとリモートのハイブリッドワークスタイルも推奨されています。例えば、週に2回はオフィスで、残りの3回はリモートワークという形です。私はリモートワークも非常に良いと思いますが、フェイス・トゥ・フェイスとリモートでのコミュニケーションには大きな違いがあると感じます。ハイブリッドスタイルで、時には直接会って雑談することが大切な情報源になり、大きな役割を果たすのではないかと思います。 このように、日常生活でも、オンラインでのコミュニケーション、対面でのコミュニケーションをうまく組み合わせていくことが今後ますます求められるのではないでしょうか。
二つ目はセルフマネジメントです。
これは自己管理のことを指します。在宅ワークが増えると、自分自身で仕事をコントロールする必要があります。オフィスにいると、他の人との会話を通じて様々な話題が生まれ、一人ではないという実感が得られますが、セルフワークでは一人になることが多いです。そうした時に、自分の気持ちを高め、維持することが重要で、これは自己マネジメント能力に依存します。この能力を養うことが必要です。
三つ目が問題解決能力です。
変化に伴い課題や問題は益々多様化していきます。その中で、過去にとらわれない解決策やアイディアを出せる能力を高めていくことです。今までの成功や失敗経験や知識から得た学びは大きな財産ですので、それを基盤として、これから起こる変化を受け入れ、新しいアイデアを生み出す姿勢(ポジティブシンキング)が大切です。
医療業界でこれから起こる変化の一つに、2024年4月から実施予定の医師の働き方改革があります。これによって、時間の配分や診療時間、患者さんとの向き合い方などが変わるでしょう。変化に対しては課題がつきものですが、夜間の医療体制や救急医療の解釈は私たちにとっても関心の高い内容です。
変わることを恐れないで、むしろチャンスと捉えると楽しいですね。
ニューノーマルを生き抜く上で、これら三つのポイントについて、私たち一人ひとりが意識し、向かっていきたいと思います。
Medilead Oncology Expert Advisor 外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
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