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言葉での共感の大切さと難しさ~調査で応用できること~

2023/12/27
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー

株式会社メディリードは、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザーである北郷秀樹氏から日々アドバイスをいただく中で、医療、特にオンコロジー領域における調査において、意識しなければならない課題感を日々アップデートしています。北郷氏のアドバイスから、当社として特に意識していきたいトピックスや学び等をコラムで発信していきます。

定性調査の中で医師や患者さんにインタビューする際には、限られた時間の中で、対象者の考えを理解する必要があります。その際、対象者の発言が本当に正しいのか、本当に思っていることなのかということを考えながら、時には疑問を持ち、時には素直に受け入れながらインタビューを実施しています。今回は、インタビューなどにおいて大切な「共感」についてお伝えいたします。

「傾聴」と「共感」

「共感」するためにまず必要なことは、「傾聴」です。傾聴には、言葉だけではなく、非言語の感情表現なども含みます。
 
コミュニケーションに影響を与えるのは、言葉が7%、声のトーンや大きさ、小ささなどの聴覚情報が38%、視覚情報が55%というメラビアンの法則からもわかるように、たとえば声が小さく、曖昧な表現になっている場合は自信のなさが表れているなど、非言語には様々な情報が含まれています。相手の考えを理解するためには、言葉によるコミュニケーションはもちろんですが、これらの多面的な情報を受けとることが必要です。
 
まずはしっかりと傾聴をした上で、それを受け入れる、受け止める「共感」をすることが大切です。共感することにより、その人がどんなことを言ったのか、何を話そうとしているのかを理解することができると考えています。
 
ただし、「共感」とは、「同感」することではありません。「同感」とは、“自分の経験と相手が話す内容とを照らし合わせて共通点や相違点を見つける”ことです。それに対し、「共感」は、“「相手」がどう感じるのかがわかること”を指します。どこまで相手と同じ気持ちになれるかということが、その人の気持ちを汲み取り、理解するための一つのステップとなるのです。

 

医師と患者の感じ方の違い

上の図は、医師と患者さんの捉え方や感じ方の違いを表したグラフの一部です。

 

赤い線が患者さんで、青い線が医師のものです。差があればあるほど捉え方の違いが大きいということになります。嘔吐については、患者さんの訴えと医師の気持ちのくみ取り方はほぼ同じだということが伺えます。

 

しかし、食欲不振や倦怠感、吐き気については、患者さんが感じていることと、医師の捉え方には乖離があることがわかります。

 

これらを踏まえて、調査の際にも、医師が感じ取っている患者さんの気持ちとは少し距離感がある場合があるということを念頭に置く必要があります。

「共感」の難しさ

このように、「共感」は大切なことであると同時に、とても難しいことでもあります。共感するには、ある程度時間をかけた対話が必要です。
 
大切なことは、わかろうとする姿勢を相手に見せるということです。具体的な方法としては、対象者が言ったことを自分の言葉で置き換えて気持ちを表現してみる、などがあります。
 
とはいえ、インタビューなどの限られた時間でどこまで共感できるかというのは非常に難しい部分です。後から掘り下げて聞く時間はとれません。そこで、短い時間の中でも、インタビュアーが、患者さんが治療や病気、周りの人に対してどう考えているのか、つまり価値観のようなものを引き出す質問をすることも大切なポイントです。
 
患者さんに、治療薬のことを根掘り葉掘り聞いてもわからないことも多いので、「将来どういうことをしたいか」「友達とはどんな存在か」「疾患に対してこう考えている」など、その患者さんが持っている人生観や価値観を引き出す質問であれば、言葉だけであってもより正確な感情や考え方を引き出すことができるのではないかと考えています。

まとめ

調査において「共感」はとても重要なステップですが、同時にとても難しいものです。
そのためにまず大切なことは、しっかりと傾聴をし、言語、非言語情報から相手の言いたいことや感情をくみ取ることです。さらに、対象者の価値観を引き出すような質問をすることなどし、相手の考えていることをより正確に理解できるように努めることで、より共感をしやすくなると考えています。調査の際にはこれらのことを念頭に置いてまいりたいと思います。

北郷 秀樹(Hideki Hongo)  

Medilead Oncology Expert Advisor

外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

得意分野

Oncology launch strategic marketing / Oncology market research planning/application /design solution thinking

Reference

JSCO日本癌治療学会会員、JASCC日本がんサポーティブケア学会会員

語学

英語、スペイン語 (少々)

私生活

犬大好き、趣味はノルディックスキー


トレンド解説
この記事の監修者
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー
外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任 ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

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