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いつまでも若々しく。内臓のはたらきを知ってできるだけ長持ちさせるコツ

2023/10/30
開道貴信先生 / あぜみち脳神経クリニック院長

年齢を重ねるとともに、身体にはさまざまな変化が起こります。髪に白髪が混じってきたり、疲れの回復に時間がかかったり、エイジングサインを自覚する人もいるでしょう。内臓も同様で、長年使い続けていると少しずつ不具合が出てくるもの。それでもできるだけ不具合が少なくなるように、できるだけ長持ちさせるのが、健康で長生きするための賢い方法です。この記事では、医師監修のもと主な内臓のはたらきと長持ちさせるコツをご紹介します。

■心臓・血管

心臓が全身に血液を送り出している臓器だということを知らない人はいないでしょう。毎分およそ5リットル(安静時、体重60kgの人の場合)の血液が心臓から全身の血管に送られます。

血液は、全身の血管を通って、栄養や酸素を体内の細胞に届け、代わりに不要なものを受け取って肝臓や腎臓に届けるはたらきをします。さらに、外からやって来る細菌やウイルスなどと戦う免疫細胞や、体内の機能のバランスを取っているホルモンも運ぶ役割も担っています。

つまり、血液を通す血管に問題があると、必要なものが必要なところに届かないことになるわけです。

血管はもともと血流量に合わせて収縮/拡張する柔軟性をもっていますが、高血圧の状態が続くと血管の柔軟性が失われ(動脈硬化)、その期間が長くなると血管が狭くなったり詰まったりしやすくなります。これが心臓や脳の血管で起こると心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気になるのです。

高血圧の原因は、塩分の摂りすぎや肥満など、生活習慣の積み重ねによるところが大きいため、日頃から減塩を意識したり、肥満予防のために有酸素運動を習慣化したりすることが高血圧とそれによって引き起こされるさまざまな病気の予防につながります。

■肺

血液が運ぶ酸素は呼吸によって外気から取り入れたものであり、その呼吸を担っているのが肺です。

息を吸うときは肺を膨らませる必要があり、それには肋骨の間にある外肋間筋(がいろっかんきん)や肺の下にある横隔膜という筋肉が関わっています。つまり、これらの筋肉が衰えると呼吸が浅くなり、十分な酸素が体内に取り入れられなくなって疲れやすくなるなど、不調につながりやすくなるのです。

デスクワークが続くと前かがみの姿勢になり、呼吸に使う筋肉が凝り固まりやすくなるため、首のストレッチや、肋骨の間をマッサージして筋肉をほぐすのがおすすめです。また、肺は非常に複雑で繊細な組織でできているため、喫煙などによって一度壊れると元に戻りません。喫煙習慣がある人は、できるだけ早く禁煙することが肺を長持ちさせるためには重要です。

■肝臓

腸で消化・吸収された栄養素のほとんどが集まってくる臓器が肝臓です。肝臓は栄養素を必要なところに配分、貯蔵するはたらきがあります。さらに、アルコールや薬物などの有害物質の解毒と排泄も肝臓の大切な役割です。食べすぎや飲みすぎで肝臓の負担が大きくなるとアルコール性肝炎や脂肪肝を引き起こし、脂肪肝が進行すると肝硬変や肝がんに至ることも少なくありません。

減酒や禁酒でアルコール量を減らすとともに、肝臓に脂肪が蓄積されすぎないように食事を食べすぎないこと、脂質を控えめにすることが肝臓をいたわるポイントです。

■胃

胃は食べたものを消化・吸収する臓器と思っている人がいるかもしれませんが、実は吸収の大部分を担っているのは胃ではなく腸です。胃が主に担っているのは食べ物の消化、貯蔵、殺菌。殺菌のために胃では胃酸が分泌されており、胃酸で胃自身を消化しないために、胃壁を守る粘液も同時に分泌されているのです。

しかし、ピロリ菌という細菌に感染すると胃の粘膜が破壊されて胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になります。ピロリ菌は上下水道が十分に整備されていなかった世代の感染率が高く、若い世代では、感染した家族から乳幼児期に口を介して感染したケースが多いと考えられています。またピロリ菌感染は胃がんの原因の一つでもあるので、ピロリ菌に感染しているかどうか分からない場合は一度検査してみてもいいでしょう。尿や血液で検査することができ、感染していた場合も一定期間抗菌薬などを飲むことでほとんどの人が除菌できます。

ピロリ菌に感染していなかったとしても、加齢によって胃酸の分泌が低下するほか、たくさんの食べ物を溜めておく力や小腸に食べ物を運ぶ力も低下するため、食べ過ぎや早食いも胃への負担を増やします。よく噛んでゆっくり食べることが胃の負担を減らし、長持ちさせるポイントです。

■腸

胃のパートで触れたように、食べたものの消化・吸収を主に行っている臓器が腸であり、小腸は栄養素の消化・吸収、大腸は水分の吸収を担当しています。腸に住んでいる腸内細菌は善玉菌、悪玉菌とその中間の菌に分けられ、そのバランスが健康と深くかかわっていると考えられています。腸内で悪玉菌の勢力が強いと便秘や下痢といったお腹の不調を引き起こしやすくなり、大腸がんも腸内環境の悪化が原因の一つと考えられているのです。

腸内の善玉菌を増やす方法は、善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌を含む食品(ヨーグルト、納豆、ぬか漬け)や、すでに腸内に住んでいる善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を含む食品を積極的に食べることです。

■内臓を若々しく保つために

年齢とともに少しずつ内臓にも不具合が増えますが、できるだけ長持ちさせるためには、食事と運動のバランスが大切です。

食事面では動物性脂肪・お酒・糖質・塩分を摂りすぎないように、魚・野菜中心の食事を意識し、運動面ではウォーキングなどの有酸素運動を毎日30分以上行うことと下半身の筋肉をつけることが内臓の健康維持につながります。

かかりつけ医をもち、定期的な健康診断を受けて、不具合のきざしが見つかったら早めに対処することも非常に大切な対策です。


エイジングケア
この記事の監修者
開道貴信先生 / あぜみち脳神経クリニック院長
脳神経外科専門医でありながら、2017年から2023年まで大阪樟蔭女子大学栄養学部健康栄養学科教授を務め、解剖生理学を担当。著書に『管理栄養士のためのイラスト解剖生理学』(講談社)、『3ステップ解剖生理学』(南江堂)など。2023年4月より現職。 https://www.azemichi-cl.org/

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