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2024.04.23

MHPコラム

責任世代の健康意識と習慣~メタボリックシンドロームを中心に解説~

株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するデータベースであるMedilead Healthcare Panel(以下MHP)のデータを活用し、コラム記事としてお届けしています。

責任世代とは、一般的に40歳から59歳までの中高年層を指します。この世代は、家庭や職場で重要な責任を担っており、その生活の質と健康がいかに社会全体に影響を及ぼすかは見過ごせません。健康面では、代謝の低下が見られることが多く、メタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病、メタボリックシンドロームのリスクが増大する時期でもあります。本記事では、責任世代の方々のヘルスケア、特にメタボリックシンドロームに対するアプローチと実態について、当社のMHP(Medilead Healthcare Panel)の調査をもとに掘り下げていきます。

責任世代の特徴

責任世代の方は、多くの面で重要な人生の段階にいます。しばしば職業で中核的な役割を果たしており、管理職や専門職としての責任を持っている方も多いのが特徴です。

MHPの調査においても、管理職、経営者・役員に就いている割合が、下の世代よりもそれぞれ高く、責任ある立ち位置に変化していることがうかがえました。

〈図1〉


家庭を持つ人は親としての責任が重い時期と重なり、子どもの成長や教育、場合によっては親の介護という二重の責任を担うこともあります。同じくMHPの調査では、責任世代の既婚率は約6割で、子育てと介護を同時に担う「ダブルケア」をしている割合は約4%でした。

経済的には安定していることが多いものの、この時期にはキャリアの頂点を迎えるためのプレッシャーや、退職後の生活への準備など、将来に向けた重要な決断を迫られることも少なくありません。

責任世代が直面する健康リスク

責任世代は、健康面でもいくつかの変化を経験することがあります。この年代では、代謝の低下が見られることが多く、体重増加や糖尿病のリスクが高まります。また、高血圧や心血管疾患のリスクも増加するため、定期的な健康診断が重要になります。特に日本では、40歳以上を対象に特定健診が実施され、メタボリックシンドロームの予防と早期発見を目的としています。心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患を引き起こす可能性があるため、メタボリックシンドロームの診断と管理は非常に重要です。

厚生労働省の調査によると、40歳から49歳までの男性のうち、メタボリックシンドロームが強く疑われる人は14.1%で、これは30歳から39歳までの男性の約2.5倍にあたります。また、50歳から59歳までの男性ではこの割合が25.1%に上昇しています。女性では、40歳から49歳ではまだ3.1%にとどまっているものの、50歳から59歳では8.6%に増加し、予備軍と考えられる人も11.3%と顕著に増えています。その後も年齢が上がるにつれて増加する傾向にありますが、リスクが増大するタイミングが責任世代の期間と重なると言えるでしょう。

〈図2〉


出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/06.html

メタボリックシンドローム予備軍の割合

メタボリックシンドロームは、複数の心血管病のリスク因子が組み合わさって現れる症状群です。内臓の周りに脂肪がたくさんついた内臓型肥満であり、かつ脂質代謝異常、高血圧、高血糖のうち2つに該当する状態のことを指します。そのため、このうちのどれかに該当する場合は、メタボリックシンドローム予備軍と言えます。

入通院している人の割合

責任世代の方に、この1年以内に入通院したかどうかを尋ねた結果が〈図3〉です。メタボリックシンドロームの診断基準である高血圧症、脂質異常症、高血糖(2型糖尿病とする)で入通院した人の割合は、それぞれ6.6%、6.0%、2.6%でした。不調を感じながらも受診しない、あるいは不調に気付かない方がいる可能性を考えると、実際にはさらに多くの方がこれらの疾患の予備軍であることも考えられます。

〈図3〉


BMI

メタボリックシンドロームは、肥満と密接に関係しています。特に腹部肥満(男性で腹囲85cm以上、女性で90cm以上)は、メタボリックシンドロームの診断基準の一つです。
2型糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、特定のがん(乳がん、大腸がんなど)、睡眠時無呼吸症候群、肝臓病など、メタボ以外にも多くの健康問題と関係しています。

肥満は主にボディマスインデックス(BMI)を使用して判定されます。BMIは体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った値で、一般的にはBMIが25以上であれば肥満とされ、30以上であれば高度肥満と判定されます。
BMIと肥満度の関係は以下の通りです。

・BMI 18.5未満:低体重
・BMI 18.5~24.9:普通体重
・BMI 25〜29.9:肥満1度(軽度肥満)
・BMI 30〜34.9:肥満2度(中度肥満)
・BMI 35〜39.9:肥満3度(重度肥満)
・BMI 40以上:肥満4度(超重度肥満)

責任世代のBMIの分布は以下のとおりでした。

〈図4〉


全体の3分の2が普通体重の範囲内におり、BMIが25以上の肥満とされる人の割合は、約23%でした。

世代別のBMIの分布を示したものが〈図5〉です。

〈図5〉


AYA世代では低体重の割合が高いことが関係していますが、肥満1度では、AYA世代と比較して約2倍近い割合となっています。肥満1度、肥満2度ともに全世代を通して責任世代が最も高い割合を示しており、責任世代は他の世代と比較して肥満の割合が高いと言えます。

責任世代の健康意識

メタボリックシンドロームだけではなく、生活習慣病などの疾患の予防のためには、普段の生活で健康を意識していくことが不可欠です。しかし、責任世代の多くは忙しい生活や多くの責任から、健康を優先することが難しい場合もあります。実際にどの程度健康を意識できているのでしょうか。

「日ごろから気を付けたり、記録したりしている健康指標」についてお聞きしたところ、〈図6〉の結果となりました。

〈図6〉


体重の管理に最も多くの注意が払われていることがわかります。体重が健康状態を表す直接的な指標であると広く認識されているためかもしれません。一方で、血糖値やHbA1cなどの具体的な血液検査値に注意を払っている人は非常に少ないという結果となりました。
日常生活の中で食事、睡眠、歩数などに気を配る人が一定数いる中で、「気を付けていることはない」と回答した方も約3割おり、健康に対する意識は人によって大きく分かれていると考えられます。

日々の健康情報を記録することで、自身の生活を振り返り、より意識するきっかけになり得ます。「今後ご自身の健康に関する情報をアプリやノートなどに記録したいか」と質問したところ、以下の結果となりました〈図7〉。体重管理に関心を持っている人は43.6%ですが、記録意向のある人は32.1%でした。食事に至っては、記録意向のある人は関心がある人の約3分の1だけとなっています。さらに、「記録したいものはない」と回答した人は約半数近くに上りました。全体的に、健康指標への意識とそれを記録したいと思う意識や行動との間にギャップが存在することがうかがえます。

〈図7〉


責任世代の健康習慣

健康について意識するだけではなく、それを実際の生活習慣に落とし込むことが何より大切です。では、実際の健康習慣についてはいかがでしょうか。

飲酒習慣

飲酒が過度になると、肝臓への負担が増加し、脂肪肝を引き起こす可能性があります。脂肪肝はメタボリックシンドロームのリスクを高める要因の一つです。さらに、アルコールにはカロリーが含まれているため、過剰な摂取は体重増加につながり、これもまたメタボリックシンドロームのリスクを高めます。

責任世代の方に平均的な1日当たりの飲酒量について尋ねたところ、以下のような結果を得られました〈図8〉。

〈図8〉


「飲まない または飲めない」と回答した方が最も多く、「やめた(過去飲酒)」も合わせると、約4割に及びました。次に多いのが「時々飲む程度」で25.7%、1合以上飲む方は32.7%でした。これは、ちょうどAYA世代と高齢者世代の中間の割合を示しています〈図9〉。

〈図9〉


一方で、3合以上飲む人は全体の6.1%で、これは全世代を通して最も高い割合となっています。

喫煙習慣

喫煙が健康に多くの害をもたらすことはよく知られていますが、メタボリックシンドロームのリスクを高めることもわかっています。タバコに含まれるニコチンはインスリン抵抗性を引き起こし、これがメタボの要因である高血糖につながる可能性があります。また、喫煙は腹部の脂肪蓄積を増加させることが示されています。

責任世代の方に、直近3か月間での1日当たりの平均的な喫煙本数を尋ねたところ、喫煙していないと回答した人が約70%、残りの約30%が1本以上吸っているという結果でした〈図10〉。

〈図10〉


一見良い数字に見えますが、世代別の平均喫煙本数を見ると、責任世代の喫煙率は他の世代と比較して高い傾向にあることがわかります〈図11〉。

〈図11〉


直近3か月の喫煙本数が0本と回答した人たちの内訳について、約3分の1が過去に喫煙していたが今はやめているということが明らかになりました。これは、高齢者世代の中で過去の喫煙者が現在喫煙していないと回答した割合が6割に上ることと比較すると少ない割合です。〈図12〉

〈図12〉


運動習慣

定期的な運動習慣は、メタボリックシンドロームの予防と管理に重要です。運動は体重を減少させる効果があり、特に内臓脂肪の減少に効果的です。また、運動による筋肉の活動は、インスリンの効果を高め、血糖値を改善する効果があります。さらに、定期的な身体活動は血圧を下げ、血中脂質プロファイルを改善することによって、メタボリックシンドロームのリスクを下げることが知られています。そのため、運動は生活習慣病全般のリスクを低減する健康的なライフスタイルの一部として推奨されています。

責任世代の方に、直近1年間で、1日30分以上運動する頻度を尋ねたところ、以下のような結果を得られました〈図13〉。

〈図13〉


全く運動しないと回答した人が36.4%と最も高い割合を示しており、これはAYA世代とはほぼ変わらない結果となっています〈図14〉。ただし責任世代は、代謝の低下などから体重増加やそれに伴う生活習慣病のリスクが高まる時期であるため、意識的に運動習慣を身に着けることが必要です。

〈図14〉


まとめ

責任世代(40歳から59歳)は、家庭や職場で重要な役割を担い、その健康が社会に大きな影響を及ぼします。この世代は、特にメタボリックシンドロームのリスクが高まる時期であり、健康面での変化が顕著です。責任世代は、忙しい生活の中でしばしば健康を後回しにてしまいがちです。当社のMHPの調査によると、約3割が特に健康に気を使っていないと回答するなど、改善の余地がみられることが明らかとなりました。健康意識を高め、実践的な習慣を身につけることが、慢性病予防と健康の維持には不可欠です。この世代が健康で充実した生活を送るためには、個人の意識改革とともに、社会全体での支援体制を強化することが求められます。

責任世代のヘルスケア実態を深堀したレポートは、以下の記事よりダウンロードいただけます。

■ Medilead Healthcare Panel(MHP)について

 

MHPは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。

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