ホーム > ニュース一覧  > 未成年の子どもを持つがん患者のコロナ禍での精神的健康と日常生活の変化と不安~メディリードが調査協力~

2023.05.10

お知らせ

未成年の子どもを持つがん患者のコロナ禍での精神的健康と日常生活の変化と不安~メディリードが調査協力~

株式会社クロス・マーケティンググループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:五十嵐 幹、東証一部3675、以下「クロス・マーケティンググループ」)のグループ会社である株式会社メディリード(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:亀井 晋、以下「メディリード」)は、国立がん研究センター東病院 緩和医療科の小杉 和博医師と子どもを持つがん患者のコミュニティサービスを運営する一般社団法人キャンサーペアレンツ(創設者:西口洋平、以下キャンサーペアレンツ)が実施した「未成年の子どもを持つがん患者のコロナ禍での精神的健康と日常生活の変化と不安」に関する研究において、調査データ取得の支援を行いました。

背景

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症法上の位置づけと基本的対処方針の変更により、行動制限が緩和され、経済社会活動の維持が求められています。しかし、がん患者はCOVID-19への罹患および重症化のリスクが高く、今後も自主的な感染対策を継続していく必要性が高いという実情があります。

また日本では結婚・出産年齢の高齢化により、子どもを持つ年齢が上がり、子どもが成人する前にがんに罹患する患者が増えています。そのほとんどが30〜50代であり、がん治療を継続しながら、経済社会活動の中心的役割を果たさなければなりません。

そのような過酷な状況におかれているがん患者が、コロナ禍において、どのような精神的健康の状態にあり、日常生活の変化と不安を経験しているのかについては明らかにされておりません。

本研究は、未成年の子どもを持つがん患者のコロナ禍での精神的健康と日常生活の変化と不安を明らかにすることを目的に実施いたしました。

研究方法

【研究デザイン】

横断研究

【対象】

18歳未満の子どもを持つがん患者

【期間】

2022年12月3日〜2023年1月31日

【募集方法】

オンラインピアサポートグループ「キャンサーペアレンツ」に登録しているがん患者に、Web上の自記式質問票への回答を依頼しました。

【質問票】

コロナ禍での日常生活の変化と不安に関する質問を作成し、5段階リッカートスケール(4.強くそう思う〜0.全くそう思わない)を用いて調査しました。精神的健康はKessler Psychological Distress Scale日本語版(K6)を用いて評価しました。

【統計解析】

K6は5点以上で強い心理的ストレスを感じているとされており、5点以上と5点未満の2群に分け、コロナ禍での日常生活の変化と不安に関する質問に「4.強くそう思う」、「3.そう思う」と回答した者 (=同意した者)の割合をカイ 2 乗検定を用いて比較しました。

調査結果

回答者(n=233)の背景は表1の通りです。

表1.回答者背景

n

(%)

年齢

平均(標準偏差)

45.4(5.8)

性別

女性

194

83.2

原発巣

乳腺

104

44.6

結腸・直腸

26

11.1

子宮・卵巣

19

8.1

血液・リンパ

14

6.0

10

4.3

胃・食道

9

3.9

肝臓・胆道・膵臓

8

3.4

その他

43

18.5

転移・再発あり

93

40.0

ここ1か月の治療
(複数選択可)

化学療法

65

27.9

内分泌療法

70

30.0

手術

15

6.4

経過観察

102

43.7

子どもの数

中央値(範囲)

2(1-4)

第一子の年齢

中央値(IQR)

12(8.5-16)

COVID-19罹患歴

あり

80

33.8

IQR, Interquartile range 四分位範囲


また、Kessler Psychological Distress Scale日本語版(K6)を用いて評価した精神的健康の数値は、強い心理的ストレス状態とされる5点以上の者の割合が61.3%、中央値は6点でした。(表2)

表2.精神的健康

n

(%)

K6

中央値(IQR)

6(2-10)

≥5*

143

61.3

*K6≥5点は強い心理的ストレス状態とされる
IQR, Interquartile range 四分位範囲


K6が5点以上の者と5点未満の者の2群に分け、コロナ禍での日常生活の変化と不安に関する質問に「4.強くそう思う」、「3.そう思う」と回答した(=「同意した」と定義)者の数と割合は表3の通りとなりました。K6≧5点の者が同意した割合がK6<5点の者に比べて特に高い項目は、「自分の感染リスクのために、子どもや家族の生活を制限しているかもしれない」「家族や友人の集まりに参加することに抵抗がある」「行動制限の緩和が進むことを不安に思う」「自分の周りの人にはマスクをしてほしい」となりました。

表3.コロナ禍での日常生活の変化と不安

K6≥5

K6<5

n=143

n=90

n

(%)

n

(%)

P value

家族で過ごす時間が増えた

91

63.6

48

53.3

0.119

子どもの世話をする時間が増えた

91

63.6

48

53.3

0.119

自分が感染することを心配して、子どもや家族から距離をとるようになった

19

13.3

5

5.6

0.076

自分の感染リスクのために、子どもや家族の生活を制限しているかもしれない

51

35.7

21

23.3

0.047

コロナのせいで、家庭内不和が増えた

23

16.1

9

10.0

0.189

家族や友人の集まりに参加することに抵抗がある

71

50.0

29

32.2

0.009

家族や友人の集まりに呼ばれなくなった

50

35.0

33

36.7

0.888

行動制限の緩和が進むことを不安に思う

53

37.1

20

22.2

0.017

自分の周りの人にはマスクをしてほしい

92

64.3

45

50.0

0.030

家族や友人と感染対策への考え方が異なり、イライラする

28

19.6

10

11.1

0.088


考察

幼い子を持つ母親はコロナ禍において精神的健康の悪化が報告されており、1)K6≧5点の者の割合は56.6%と本研究と同様でした。
強い心理的ストレス状態とされるK6≧5点の者は、COVID-19への感染リスクを恐れていることが示唆されました。コロナへの恐怖と個人の感染リスクが高いことの関連が報告されており、2)がん患者は感染リスクが高いため、心理的ストレスが高いとより恐怖を感じている可能性があります。

一般人を対象とした調査では、COVID-19による行動制限の緩和は対象者の精神的健康の改善につながることが報告されています。3)しかし、がんなど感染リスクが高い慢性疾患を持つ患者を対象とした報告はまだなく、今後さらなる調査が必要であると考えます。


まとめ

コロナ禍において、未成年の子どもを持つがん患者は強い心理的ストレスを感じている者の割合が高く、そうした患者は、日常生活での不安を抱えている可能性が高いことが調査結果からわかりました。COVID-19への対応が社会的に変化していく中で、こうした悩みを抱えている者がいることを認識し、適切なサポート体制を構築する必要があると考えます。

参考文献
1)木村ら. 日本公衆衛生雑誌. 2022; 69: 273-283
2)Midorikawa et al. PLoS ONE. 2021 16: e0246840.
3)Faulkener et al. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(3):1792

【会社概要】
会社名:株式会社メディリード
代表者:代表取締役社長 亀井 晋
所在地:東京都新宿区西新宿3丁目20番2号
設立:2015年4月
主な事業:医療関連領域の調査・データ解析業務
URL:https://www.medi-l.com/

≪引用・転載時のクレジット表記のお願い≫
本リリースの引用・転載時には、必ずクレジットを明記いただけますようお願い申し上げます。
<例>「国立がん研究センター東病院と一般社団法人キャンサーペアレンツが実施した調査によると…」

<本研究に関するお問い合わせ先>
株式会社メディリード 小西
TEL : 03-6859-2295  FAX : 03-6745-1168  E-mail : t_konishi@medi-l.com

ご相談やご依頼、および資料請求についてはこちらからお問い合わせください。

お問い合わせ
LOGO

〒163-1424 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー24F

TEL : 03-6859-2295 FAX : 03-6745-1168