MCI疑いのある人が受診や治療をどのように考えるかは、その人の置かれている生活環境や周囲との関係性とも深く関わっています。
ここでは、性別・年齢といった基本的な属性に加え、経済状況や家族構成、日常生活を支える人の有無などから、MCI疑いのある人はどのような人たちなのかを見ていきます。
もの忘れに関しての入通院状況(セグメント定義)
本調査ではMCI疑いの人の中で「受診して相談に至る人」と「受診に至らない人の違い」という観点で分析を行っています。
具体的には、もの忘れに関しての現在の通院/医師への相談状況から、「受診して相談に至る人」を「入通院経験あり者」、「受診に至らない人」を「入通院経験なし者」としました。
セグメントの定義と今回の調査においての出現率は<図5>の通りです。
<図5>
今回の調査の対象者は、MCI疑いのある人のうち、以下の条件を満たす人です。
何らかの疾患で定期的に通院中 / 50代以上
上記の条件内では、現在もの忘れに関して入通院している人、かつてしていた人(1年内、1年以上前)を合わせて「入通院経験あり」の人は28.4%でした。一方で、もの忘れに関しての「入通院経験なし」の人は71.6%で、MCI疑いの症状があっても受診・相談に至らない人が4分の3近くを占めているという結果になりました。
属性・経済的背景
では各セグメント(入通院経験あり者、入通院経験なし者)はどのような人たちなのでしょうか。
まずは性別、年齢別での特徴を見てみます。<図6>
<図6>
入通院経験あり者(以降、本文では「入通院あり者」もしくは「あり者」とします)は入通院経験なし者(以降「入通院なし者」もしくは「なし者」とします)と比べ、男性および50代の割合が高くなっています。
次に、世帯年収・保有資産額を見てみます。<図7>
<図7>
入通院あり者の方が現役世代である50代の割合が高かったにもかかわらず、世帯年収はなし者の方が高い傾向にありました。また、入通院あり者は「ほとんど年金や貯蓄で生活」の割合が高くなっていました(なし者8.3%に対してあり者では14%)。
保有資産額についても入通院なし者の方が高く、「5,000万円以上」の割合があり者と比べて高くなっています。
経済状況については、入通院なし者の方が相対的に余裕のある傾向が見られました。
生活環境・家族背景
<図8>
普段の生活のサポート者は「特にいない」が全体で25%を占めました(セグメント間では差はほとんどありませんでした)。
入通院あり者は「ヘルパー、ケアマネジャーがいる」割合が1割を超えており、なし者(1.1%)と比較して高い傾向がありました。
<図9>
同居者についても見てみると、<図8>の「普段の生活のサポート者」の結果とも関連する傾向が見られます。入通院あり者では配偶者・パートナーと同居している割合がやや低く、実父、実母の割合が高くなっています。
続いて、家族や身近な人の認知症者の有無について見ていきます。<図10>
<図10>
全体では半数近くの47.2%が家族や身近な人に認知症の人がいる(いた)と回答しています。
入通院あり者ではなし者に比べて「いる/いた」と回答した割合が高く、認知症の状態を見聞きしていることが、早めの受診につながっている可能性があります。
社会的つながり
MCI疑いの人において、受診・非受診を分ける要因として、家族以外の人との活動や交流はどの程度影響があるのでしょうか。
<図11>は、「あなたが参加されている、家族以外の人との活動や交流について、あてはまるものをお選びください。」と尋ねたものです(複数回答)。
<図11>
「特に家族以外との活動や交流はしていない」が全体で半数を超えており、特に入通院なし者でその割合が高くなっています。
一方で入通院あり者の方が「交流はしていない」の割合が低く、なし者と比べて何らかの形で家族以外の人との活動や交流の機会を持っている場合が多いことがわかります。特に「介護サービスの利用によるお出かけをしている」の割合が高く、入通院経験なし者と比較して約14ポイントの差がありました。
既存の通院・受診行動
次に、MCI疑いの人のもの忘れ以外の通院・受診行動について見てみます。
定期的に通院している病気(もの忘れ以外)について尋ねた結果が<図12>、定期的に通院している診療科(もの忘れ以外)について尋ねた結果が<図13>です。
<図12>
入通院経験あり者は「うつ病・不安障害」の割合が高くなっています。
<図13>
医師とのコミュニケーション状況
入通院あり者、なし者では医師とのコミュニケーションの仕方に違いはあるのでしょうか。
<図14>は「あなたが定期的に通院している医療機関の先生はどのような方ですか?複数の先生にかかられている場合は、もっともよくかかる先生についてお考えください。」と尋ねた結果です(複数回答)。
(本調査では、対象者を「もの忘れ以外で定期的に通院している人」としているので、「定期的に通院している医療機関の先生」とはもの忘れ以外の定期通院で受診している医師を指します。)
<図14>
入通院あり者は、医師とのコミュニケーションにおいて、なし者と比べ、「気兼ねなく相談できる」「気持ちに寄り添ってくれる」「困りごとも話を聞いてくれる」など、ポジティブな印象が高めで、医師に対してポジティブな印象を抱き、よいコミュニケーションが取れている傾向があることがわかります。
一方で、あり者は「話をしても聞いてもらえないと感じる」「あまり関心がないように感じる」も入通院なし者より高くなっていますが、医師とのコミュニケーションに関心が高い人が多いことの裏返しであるかもしれません。