本記事は、片頭痛患者さんの医療機関受診、薬剤の選択・服用における障壁及び促進要因に焦点を当てています。
前回(第3回)では、「片頭痛患者さんが片頭痛に関する情報を知ることで、相談意向は変化するか?」について取り上げました。第4回の今回は、「薬剤選択において、患者さんの意向はどのくらい反映されているか?」について取り上げます。
本記事に掲載している画像は、一部加工を施したものです。
文中の画像の正式版は、有料レポートをご購入いただいた方に配布しております。
ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ有料レポートのご購入をご検討ください。
調査概要
| 調査手法: |
インターネット調査 |
| 調査地域: |
全国 |
| 調査対象: |
片頭痛と診断されている、もしくは片頭痛の症状を持っている人、かつ下記の条件を満たしている人
- 1年以内受診あり、かつ現在処方薬を服薬している人
- もしくは1年以内受診なしの人
|
| 調査期間: |
2024年10月22日(火)~2024年10月30日(水) |
| 有効回答数: |
6,753 |
※調査結果は、端数処理のため構成比が100%にならない場合があります
回答者属性
本調査回答者の属性は以下のようになっています。

<図1>
また、本記事で扱う患者さんのセグメントは以下の通りです。

<図2>
第4回レポートサマリー

<図3>
薬剤選択において、患者さんの意向はどのくらい反映されているか?
近年、日本においても、医師が一方的に治療や薬剤を決定するのではなく、患者自身が主体的に選択に関与する「SDM(Shared Decision Making:共有意思決定)」が患者中心医療の重要な要素とされ、その普及・推進が進んでいます。 そのような中、片頭痛治療においてはSDMの状況はどうなっているのでしょうか。処方する薬はどのように決定されているのでしょうか。
SDM(Shared Decision Making:共有意思決定)の状況
<図4>は、処方薬を服用している人に、現在服用している薬剤(注射含む)を選択するにあたって、自身がどのくらい関わったかについて尋ねた結果です(単一回答)。

<図4>
片頭痛薬を使用しているか否かにかかわらず、すべてのセグメントで最も多かった回答は「主治医が全て決めた(選択肢は提示されなかった)」でした。「1年内受診あり者」全体で44.8%となっています。
セグメント間でもほとんど差は見られません。つまり、使用している薬と、患者さんが薬剤選択に関与する度合いとの関連は低いことがうかがえます。
医師への相談、医師からの説明状況
診察の際、患者さんは、医師から受ける基本的な説明以外に自ら主体的に相談することはどのくらいあるのでしょうか。また、どのような内容を相談しているのでしょうか。
<図5>は、「診療時に医師に言われること以外であなたから相談したことはありますか? 」と尋ねた結果を示したものです。(水色の横棒)
同時に「あなたご自身から相談はしていないけれど医師から説明を受けたこと、医師と話したことはありますか?」と尋ねた結果も並べて示しています。(濃い青色の横棒)

<図5>
「自分から相談はしたことがない/説明は受けていない」が最も高く、50%前後となっています。今回提示したような内容は、患者さんから相談することも、医師から説明を受けることもないというケースが、約半数を占めることがわかります。)
また、薬剤選択において患者さんの意向がどの程度反映されているのかに着目してみると(黄色で囲んだ項目)、「治療薬の選択について」や「現在の治療薬の問題と、違う薬の変更について」などにおいて、自ら相談した(希望を伝えた)経験のある人は13~14%程度にとどまりました。「治療薬の服薬/投与したことによる効果と自分にあっているかについて」においても15%程度にとどまっています。
患者さんから医師に相談した内容
患者さんが自主的に医師に相談した内容について、セグメント別に見てみました<図6>。

<図6>
「受診経験あり・1年内未受診者」は「自分から相談はしたことがない」が6割を超えており、特に自ら主体的に相談している割合が低いことがわかります。
また、薬剤選択に関する項目(黄色で囲んだ部分)に関しても、「受診経験あり・1年内未受診者」では7~9%弱程度と1割にも届いていません。一方で「1年内受診あり者」は20%前後と、3倍近い差が見られます。
また、予防薬使用者は、「自分からは相談はしたことがない」と回答した人の割合が22.6%と低く、自ら何かしらの相談を行っている人が比較的多いことがわかります。
医師から説明を受けた内容
患者さん自身からは相談していないものの、医師から説明を受けた内容についても、セグメント別に見てみました<図7>。

<図7>
患者さんから相談した場合と同じ傾向が見られます。「受診経験あり・1年内未受診者」は「説明は受けていない」が6割を超えています。<図6>で見たように自ら相談する割合も低く、医師からの説明も少ないことから、治療満足につながりにくい状況がうかがえます。その結果、「受診しても市販薬を服用するのと変わらない」と考え、継続受診に至らなくなってしまった可能性があります。
診療科別
患者さんから医師に自主的に相談した内容および医師から説明を受けた内容を、診療科別に見たものが<図8><図9>です。
<図8>
<図9>
一般内科では「自分から相談したことがない」「説明は受けていない」が頭痛外来など他診療科と比較してやや高い傾向にあります。一般内科にかかっている人は薬剤選択や治療に関しての関与度が低く、医師からの説明も少なめであることがうかがえます。
一方で、「自分から相談したことがない」の割合が低い、つまり比較的患者さん自身から相談している割合が高いのは、頭痛外来・心療内科・ペインクリニックです。 また「医師から説明は受けていない」の割合が低い、つまり医師からの説明があった割合が高いのは、頭痛外来とペインクリニックでした。
治療薬選択などについて自ら相談したことのない理由
前項で治療薬選択などについて「自分からは相談はしたことがない」と答えた人(注)に対し、「診療時にあなたご自身から治療薬の選択や評価、治療変更に関することで医師に相談したことがないのはなぜですか?」と尋ねみました<図10>。
(注)医師に自ら相談した項目として、下記を選択しなかった人
☑治療薬の選択について
☑現在の治療薬の問題と、違う薬への変更について
☑治療薬を服薬/注射を投与したことによる効果(頭痛の改善状況)と、自分にあっているかについて

<図10>
「受診経験あり・1年内未受診者」においては「相談するほどではないと思ったから」が38.1%と最も多く、「どのように相談したらよいかわからなかったから」(33.0%)を5ポイント以上上回っています。
一方で、「1年内受診あり者」は「相談するほどではないと思った」と「どのように相談するかわからなかった」がほぼ同程度の割合でした。
第1回で取り上げましたが、継続受診をやめてしまった「受診経験あり・1年内未受診者」は、頭痛により支障を覚える日数は少なめだったものの、頭痛による支障度自体は他のセグメントとの差はありませんでした。つまり、頭痛による支障は「相談するほどでもない」と言えるほど軽いわけではなく、回答傾向からは、自らの症状を過小評価する「片頭痛のスティグマ」がうかがえます。 また、治療薬の選択や評価、治療変更についての相談自体をあまり重視していないか、「自ら主体的に希望するものではない」とみなしている可能性もあります。
まとめ(示唆)
今回は、「薬剤選択において、患者さんの意向はどのくらい反映されているか?」について見てきました。
欧米では推進されている「SDM (Shared Decision Making:共有意思決定)」ですが、日本の片頭痛患者さんの処方薬選択や治療においては、患者さん自身の関わりはまだ限定的であることがわかりました。
特に、受診経験はあっても継続受診はしていない「受診経験あり・1年内未受診者」は、継続受診をしている人(「1年内受診あり者」)と比べて自ら医師に相談することが少ない傾向があり、薬剤選択においての相談率も低めでした。
同様に、一般内科を受診した人でも、自ら医師に相談する割合は比較的少なめでした。
現状のSDMの浸透度と、現在使用している薬剤の種類─(片頭痛薬や予防薬を使用しているかどうか)との間に明確な関連は見られませんでした。
一方で、「継続して受診をしているかどうか」と、「自ら医師に相談するかどうか」の間には一定の関連が見られます。
第3回でもご紹介したように、「受診経験あり・1年内未受診者」は「医師に相談しても改善しない」「受診はしたものの改善しなかった」という印象を持つ傾向がありました。こういった印象の背景には、自ら医師に相談することが少なく、また医師からの説明も少なかったという、医師とのコミュニケーション不足が影響していると考えられます。
また、予防薬使用者では、自ら医師に相談している割合が高いこともわかりました。
第1回でも触れたように、「予防治療が勧められる人」が全体の9割近くを占めているにもかかわらず、実際に予防薬を使用している人は1割未満という状況にあります。現状の予防薬使用者は、自ら医師に相談をし、適切な治療(予防治療)につながった結果、予防薬を使用するに至った人たちなのかもしれません。
次回(第5回)は、「患者さんは処方薬に十分に満足しているか?希望する薬があれば医師に相談するか?」について取り上げます。
■メディリードの ヘルスケアデータベースについて
メディリードのヘルスケアデータベースは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。
≪引用・転載時のクレジット表記のお願い≫
本リリースの引用・転載時には、必ずクレジットを明記いただけますようお願い申し上げます。
<例> 「医療関連調査会社のメディリードの同社が保有する疾患に関するデータベースを用いたコラムによると・・・」