【乾癬患者さん調査 第1回】罹患・受診状況と治療満足度の評価実態ーNPO法人 東京乾癬の会(P-PAT)との共同調査
2025/09/16乾癬は、皮膚に赤い発疹や白いフケのような皮膚の剥がれが見られる、慢性的な皮膚疾患です。今回私たちは、NPO法人 東京乾癬の会(P-PAT)のご協力のもと、乾癬における医師と患者さんのコミュニケーションギャップを明らかにすることを目的に、患者さん198名を対象とした自主調査を実施しました。
本シリーズでは、調査結果をもとに、患者さんの治療評価の背景にある要因や、医師とのコミュニケーションに対する期待・実態を3回にわたって読み解いていきます。第1回となる今回は、患者さんの罹患状況や通院状況、そして治療に対する評価の“温度感”について、ファクトベースでご紹介します。
乾癬におけるUPLIFT試験では「医師と患者の認識ギャップ」が存在することが既に明らかになっています。
しかし、こうしたギャップにはさまざまな側面があり、その背景や実態をさらに掘り下げていく必要があります。本調査では、患者さん理解をより解像度高く捉えることを目的に、既存の調査とはとは異なる観点から、医師と患者さんのコミュニケーションにおけるギャップの深堀りを試みました。
なお本調査は、乾癬患者会であるNPO法人東京乾癬の会(P-PAT)と共同で実施しました。
調査手法: | インターネット調査 |
調査地域: | 全国 |
調査対象: |
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調査期間: | 2025年1月7日(火)~2025年2月7日(金) |
有効回答数: | 198 |
※調査結果は、端数処理のため構成比が100%にならない場合があります
<図1>
患者さんの「積極的評価」の背景には様々な要因がありますが、今回は「医師と患者さんとのコミュニケーション」に着目し、以下を問い(調査課題)として設定しました。
乾癬の治療において、
また、これらの問いに答えるために、今回は以下のアプローチをとりました。
本レポートでは、3回にわたってトピックを取り上げていきます。各回のテーマは以下の通りです。<図2>
<図2>
第1回(本記事):乾癬患者さんの罹患・受診状況概観
第2回:患者さんの期待と実際の医師の実施状況
第3回:注目事項についての医師‐患者間のコミュニケーションギャップ
本調査回答者の属性は以下の通りです。
<図3>
<図4>
<図5>
まずは乾癬患者さんの罹患・受診状況について見ていきます。今回は主に事実(ファクト)に焦点を当ててご紹介します。<図6>~<図9>
<図6>では医療機関での受診状況と現在使用している薬剤・治療法を示しています。
<図6>
医療機関での受診状況(単一回答)を見ると、医療機関に定期的受診していると回答した人が8割以上(85.9%)にのぼりました。受診頻度として最も多かったのは3か月に1度程度の定期的受診で、対象者のうちの半数以上(52.5%)が該当しています。
現在使用している薬剤(複数回答)については、約8割(79.8%)が塗り薬を使用しており、飲み薬の使用者は約4割(38.4%)、注射薬の使用者は約3割(32.8%)でした。
<図7>は乾癬を発症した年齢を示しています。
<図7>
発症年齢の平均は40.3歳で、最も多かったのは40代(21.7%)でした。30代と50代がそれぞれ17.7%、60代以降が16.2%、20代が14.6%、10代以前が12.1%と続いています。
全体として、特定の年代に大きく偏っているわけではなく、比較的幅広い年齢層で発症していることがわかります。
<図8>は乾癬治療のために通っている医療機関の種類について尋ねた結果です。今回は単一回答形式で回答いただいています。
<図8>
最も多かったのは皮膚科クリニック/診療所で、全体の43.9%を占めました。次いで一般病院や総合病院の皮膚科が23.2%、大学病院の皮膚科が16.7%と続いています。皮膚科以外に通っている人も合わせて9.6%おり、乾癬治療の場が必ずしも皮膚科に限定されていない実態も見て取れます。
続いて、患者さんによる現状の治療に対する評価を見ていきます。通常、こうした評価では「満足度」を訪ねるのが一般的ですが、今回はそれに加えて、より直感的に「評価しているかどうか」についても確認しました。
まずは満足度についてです。今回は、「あなたが受けられている乾癬の治療についての、総合的な満足度をお知らせください」と尋ね、「非常に満足」から「全く満足していない」の6段階で回答いただきました(単一回答)。その結果、3割を超える患者さんが「やや満足」と回答しています。<図9>
<図9>
この「やや満足」という選択肢がどの程度の温度感を持つのかは、やや判断が難しい側面があります。
「非常に満足」から「やや満足」までを含めて「満足している」と捉えれば、「患者さんの75%超が満足している」とも解釈できます。
この解釈自体は誤りではありませんが、患者さん自身の実感や温度感をストレートに表しているとは言い切れない部分があります。
そこで今回は、より直感的に「評価しているかどうか」を捉えるため、「あなたが受けられている乾癬の治療について、あなたのお気持ちにもっとも近いものをお選びください。」と尋ね、以下の4段階の選択肢を提示しました(単一回答)。
その結果が<図10>です。
<図10>
「とても良いと積極的に評価している」は28.3%、「積極的に評価しているというほどではないがこんなもんだと思う」は37.9%、「積極的に良いとは思っていないが、不満というほどではない」は、24.2%、「あまり気に入ってはいないが、仕方なく治療を受けている」は9.6%でした。
つまり、現時点の治療に対して、患者さん自身が積極的に良いと感じているのは全体の3割弱にとどまります。一方で、残りの大多数は「こんなものだろう」「不満とまでは言えない」といった、ある程度の妥協を前提に治療を受けている実態が見えてきます。
では、「満足度」で回答した場合に、患者さんが実際にはどのような温度感(治療評価)を持っているのでしょうか。
<図11>は、各「満足度」選択者のうち、治療に対する評価がどう分布しているかを示したものです。
<図11>
「満足している」と回答した層の内訳を見ると、「積極的に評価できるというほどではないがこんなもんだと思う」という妥協的な意見が4割以上(43.4%)を占めていました。
「やや満足している」と回答した層では、「積極的に良いとは思っていないが、不満というほどではない」との回答が3割以上にのぼり、「満足」というより、「不満ではない」という消極的な受け止め方であることがうかがえます。
今回は患者さんの罹患・受診状況について、調査結果にもとづく事実(ファクト)を中心にお伝えしました。
加えて、患者さんの治療評価については、従来の「満足度」ではなく、より直感的な評価軸を用いることで、患者さんの温度感がより鮮明に浮かび上がってきました。
次回は、乾癬治療における患者さんの期待と、医師の実施状況について取り上げます。
今回明らかになった患者さんの評価の背景には何があるのか、何が積極的評価につながっているのか、医師と患者さんとのコミュニケーション面から紐解いていきます。
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