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患者と医療のパートナーシップ『対話による共同意思決定』の現状と解題【SDMシリーズ 第1回】

2025/07/27
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー

今回は、当社のオンコロジーエキスパートアドバイザー・北郷秀樹氏より寄稿いただいた記事をお届けします。医療現場での豊富な経験をもとに、「共同意思決定(S D M)」について、現状と課題をわかりやすく解説していただきました。

今回は、研究活動として取り組んでいる『患者視点の医療』の一環として、「SDM の現状と課題」についてご紹介します。
『患者視点の医療』とは、患者さんが自身の言葉で気持ちや価値観を医療者に伝え、対話を通じて納得のいく治療選択ができる環境づくりを目指すものです。このたび、株式会社メディリードと、がん患者コミュニティ「キャンサーペアレンツ」のご協力のもと、日本がんサポーティブケア学会の教育講演にて発表する機会をいただきました。その内容を3回シリーズで解説していきたいと思います。
SDMのより良い環境づくりには、みなさん一人ひとりの理解と力が必要です。ぜひ本シリーズをお読みいただき、この環境づくりにご参画いただければ幸いです

SDM(共同意思決定)とは

最近、「共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)」という言葉を、疾患を問わず見聞きする機会が増えてきたと思いませんか。
共同意思決定(SDM)とは、患者さんと医療者が協力して治療方針を決定するプロセスを指します。
このプロセスにおいては、患者さんは自身の治療への考えや価値観(これからの生き方)を医療者と共有し、医療者は専門的な知識や経験をもとに、それらを理解し支援することで、その患者さんにとって最適な治療選択を提案します。これは、患者さんと医療者の対話があってはじめて実現するものです。
特にがん治療においては、SDMの重要性がますます高まっています。


患者さんの「知る権利」を明文化したIC(インフォームド・コンセント)からSDMへ

少し時代を遡りますが、1970年代にアメリカで「患者の権利章典」の一環として生まれたI C(インフォームド・コンセント)は、「医療者は患者さんが知りたいと望めば十分な情報を提供し、患者さんがそれを十分理解した上で治療に同意すること」と定義されています。
しかし、現実には、時間制約や「がん」と診断された直後の混乱の中で、患者さんが本当に知りたいことを十分に質問できないまま、医療者からの説明だけで同意してしまうケースもあると言われています。
そうした課題を受けて、I Cを基盤にしたSDMの考え方が提唱され、日本でも2000年代から明文化され始めました。


対話を通じたの共同意思決定(SDM)の重要性

ここでは、SDMが患者さんと医療者の双方にもたらすメリットについてご紹介します。
患者さんが医療者との対話を通して治療に関与できたと実感できることで、治療に専念しやすくなり、治療効果の向上につながる可能性があると言われています。
また、共同意思決定は医療者にとっても重要です。患者さんの価値観や希望を理解し、それらを支援することで、より適切な治療を提供することができます。さらに、患者さんとの信頼関係を築くことで、医療の質の向上も期待されています。


SDMの現実をより正しく理解するために

SDMが本格的に普及し始めてから約25年が経過しましたが、がん患者さんとの対話を通じて、SDMが十分に浸透しているとは言えない現状があることを実感しました。さらに、現在のS D Mの現状を分析したデータも必ずしも十分とは言えません。
そこで、SDMの最新の現状と課題を明らかにするため、調査を実施しました。
その内容については、次回の記事で解説したいと思います。

北郷 秀樹(Hideki Hongo)  

Medilead Oncology Expert Advisor

外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任
ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

得意分野

Oncology launch strategic marketing / Oncology market research planning/application /design solution thinking

Reference

JSCO日本癌治療学会会員、JASCC日本がんサポーティブケア学会会員

語学

英語、スペイン語 (少々)

私生活

犬大好き、趣味はノルディックスキー


トレンド解説
この記事の監修者
北郷 秀樹 / メディリード オンコロジーエキスパートアドバイザー
外資系製薬企業でオンコロジー領域のブランドマネジャー、製品開発、新製品のマーケティング、グローバルオンコロジーマーケティングリサーチリーダーを歴任 ビジネススクールでマーケティングと経営学を学び、がんの知識を病院研修で習得

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