株式会社クロス・マーケティンググループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:五十嵐 幹、東証プライム3675)のグループ会社である株式会社メディリード(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:亀井 晋、以下「当社」)は、がん患者さんの薬物治療継続についての現状、およびその背景となる意識や行動についての自主調査(2024年)を行い、632名からの回答を得ました。
第1回~第5回は、「なぜ薬物治療を中断してしまうのか」という観点から、主に中断意向者(薬物治療をやめたいと思ったことはあるが実際にやめたことはない人)と実際中断者(薬物治療を中断した経験のある人)の違いを分析してきました。
今回は第5回に続く形で、「がん相談支援センターの利用者はどのような人たちなのか」に焦点を当てます。
がん相談支援センターは、「がん患者さんが気軽に相談できる場所」とされていますが、実際はどのような人が利用しているのでしょうか。現在の利用者の属性や行動特徴を見ていくことで、がん相談支援センターの実際の位置づけについて紐解いていきたいと思います。
調査概要
| 調査手法: |
インターネット調査 |
| 調査地域: |
全国 |
| 調査対象: |
- がんで薬物治療中、もしくは薬物治療を経験したことのある患者さん
- ステージⅠ~Ⅳの方
|
| 調査期間: |
2024年6月17日(月)~2024年6月21日(金) |
| 有効回答数: |
632 |
※調査結果は、端数処理のため構成比が100%にならない場合があります
回答者属性
本調査回答者の属性は以下の通りです。
<図1>

第6回レポートサマリー
<図2>

調査結果詳細
がん相談支援センター利用者はどんな人か?
がん相談支援センターの利用経験率
まず、回答者全体におけるがん相談支援センターの利用経験率を見てみましょう。
<図3>は、「あなたが薬物治療を行うにあたり、もしくは治療中に感じた悩みについて、相談したいと思ったことがある先のうち実際相談したことのある先をすべてお選びください。」という質問を複数回答形式で尋ねた結果です。
<図3>

「病院内のがん相談支援センター」を利用したことがある人は9%にとどまり、1割にも満たないという結果になっています。がん相談支援センターは、悩みの相談先としてはまだあまり一般的な存在ではないようです。
がん相談支援センター利用者の属性
がん相談支援センターは相談先として一般的ではないことがわかりましたが、現在利用している人はどのような属性なのでしょうか。(ここでは、「がん相談支援センターに相談したことがある人」を利用者とします。)
<図4>は相談先ごとの性別、年代別の内訳を示しています。
<図4>

がん相談支援センター利用者は、男女比は全体と同程度の割合ですが、40代以下の割合が高く、男性40代以下は全体の5.1%に対し14.0%、女性40代以下は全体の9.8%に対して15.8%でした。一方で女性50代の利用率は、全体の17.9%に対し10.5%と低めでした。このことから、がん相談支援センターは比較的若い年代の利用者が多いことがわかります。
<図5>では職業別の割合を示しています。
<図5>

がん相談支援センター利用者で全体と比較して目立つのは、「経営者・役員」が高めであることと、「パート・アルバイト」が低めであることです。「経営者・役員」は全体の3.5%に対し14.0%、逆に「パート・アルバイト」は全体の15.7%に対し7.0%でした。
<図6>は世帯年収別に見たものです。
<図6>

がん相談支援センター利用者は、全体と比較して1,000万円以上の人の割合が高い傾向があります。また平均世帯年収も、全体の590万円に対し772万円と高めです。
がん相談支援センター利用者の病状面での特徴
次に、病状面での特徴を見ていきます。
<図7>は、ステージ、再発状況別の相談先の割合を示したものです。
<図7>

がん相談支援センター利用者はステージⅣの割合が高く、再発経験者の割合も高いことがわかります。
では副作用のつらさについてはどのように感じているでしょうか<図8>。
<図8>

がん相談支援センター利用者はTOP2(副作用が「とてもつらい」「つらい」)が5割を超えており、副作用がつらいと感じている人が多いことがわかります。
薬物治療の中断意向別の割合はいかがでしょうか<図9>。
<図9>

がん相談支援センター利用者は全体と比較して、中断意向者・中断者の割合がともに高く、半数以上が「治療をやめたいと思ったことがある」人であることがわかります。中断経験者の割合もは全体の7%に対し15.8%と2倍以上となっています。
がん相談支援センター利用者の情報収集行動
最後に、情報収集行動の特徴を見ていきます。
<図12>~<図15>では情報を調べた先について尋ねた結果です。「あなたはがんの薬物治療に関してどのようなところで情報を調べていますか。治療のこと、費用のこと、仕事のこと、その他の悩みに関してそれぞれお答えください。」と質問し、それぞれ複数回答形式で回答を求めました。
<図10>

<図11>

<図12>

<図13>

がん相談支援センター利用者は他の相談先と比べ、情報収集を自ら行っている割合が高めで、情報収集先も多いことがわかります。つまり、がん相談センターを利用する人は、様々なメディアを活用して自ら情報収集を行う能力が高い傾向にあることがうかがえます。
まとめ(示唆)
第6回では、番外編として、がん相談支援センターの利用経験がある人はどのような人かについて取り上げました。
第5回の結果でも明らかになったように、がん相談支援センターの利用率は低く、患者さんの悩みの相談先としてはまだ一般的ではありません。そんな中で、がん相談支援センターの特徴として、以下の傾向が見られました。
・症状は重め(ステージⅣの割合が高く、再発経験者が多い、副作用がつらいと感じている人が多い)
・比較的若い(40代以下の割合が高い)
・仕事上でも重要な立場(経営者・役員の割合が高い)
・情報収集能力が高い(多様なメディアを活用して情報を得ている)
このことから、がん相談支援センターは、「誰でも気軽に相談できる場所」というよりは、比較的高度な情報収集能力・選択力がないと足を運べない(たどり着けない)、ハードルの高い場所になっていることが推測されます。
以上6回にわたり、がん患者さんが薬物治療を中断してしまう理由について考察してきました。今回の番外編では、患者さんにとってがん相談支援センターはどのような位置づけになっているのかを、現状の利用者の属性から紐解きました。
詳細なレポートのダウンロードはこちらから
がん患者さんに関する他の記事もご覧ください。