情報収集はがん治療の支えになる?患者さんの行動を調査-がん自主調査【第4回】
2025/02/12株式会社クロス・マーケティンググループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:五十嵐 幹、東証プライム3675)のグループ会社である株式会社メディリード(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:亀井 晋、以下「当社」)は、がん患者さんの薬物治療継続についての現状、およびその背景となる意識や行動についての自主調査(2024年)を行い、632名からの回答を得ました。
前回(第3回)では「がん患者さんの費用の負担感」について深堀りし、「費用の負担感は解決しているか」「解決のための行動として、費用助成制度の認知と利用状況はどのくらいか」という点を取り上げました。
これまでの調査結果から、がん患者さんは様々な不安や負担を感じていることがわかりました。その中でも、特に大きな負担として挙げられるのが費用面です。前回(第3回)は、費用負担感の軽減のために患者さんがどの程度行動をしているのかという観点から、既存の制度の認知・利用について見ました。
今回は、患者さん自身が不安や負担を軽減するために行っている「情報収集」に焦点を当て、どのように情報を得ているのかを詳しく見ていきます。
目次
調査手法: | インターネット調査 |
調査地域: | 全国 |
調査対象: |
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調査期間: | 2024年6月17日(月)~2024年6月21日(金) |
有効回答数: | 632 |
※調査結果は、端数処理のため構成比が100%にならない場合があります
本調査回答者の属性は以下の通りです。
<図1>
<図2>
がん患者さんは自身で情報収集をしているのか、また、どのような媒体で情報収集をしているのかを、情報のカテゴリー別に見ていきます。
一般的に、情報収集の仕方は年代による差が見られることが多いです。年齢が上がるほど紙媒体を利用し、若年層ほどネットやSNSを利用する傾向がありますが、がん患者さんの情報収集においてもこのような傾向が見られるのでしょうか。中断意向別に加え、性別・年代別でも違いについても考察していきたいと思います。
まずは中断意向別(中断意向なし者、中断意向者、中断者)での違いを見てみます。
「あなたはがんの薬物治療に関してどのようなところで情報を調べていますか。」と質問し、複数回答形式で回答を得ました。また、「治療」、「費用」、「仕事」、「その他の悩み」について、それぞれ答えてもらいました。
<図3>は治療についてです。
<図3>
まず、「このことに関して自ら情報は調べない」人が全体で37.0%にのぼりました。中でも中断意向なし者は4割が「自ら調べない」と答えています。中断意向なし者の場合、中断意向者や中断者に比べ不安が少ない傾向がありましたが、不安が少ない分、自ら積極的に情報を集める必要性を感じないのかもしれません。
中断意向者は不安を多く感じる傾向にありましたが、情報収集先も中断者と比較して多岐に渡っています。特に病院内のポスターや冊子、製薬企業のHPを見ている割合が、中断者と比較して高いことがわかりました。対して中断者は書籍、患者会からの情報を利用する割合が高い傾向が見られました。
<図4>~<図6>では、治療以外の情報に関する収集先を見ています。
<図4>
<図5>
<図6>
<図4>は費用、<図5>は仕事・就労、<図6>はその他の悩み(日常生活、家族など)に関する情報収集先を示したものです。いずれの項目においても中断意向なし者は「自ら情報は調べない」という割合が最も高く、一方で中断意向者は中断者よりも情報収集をしている割合が高いという結果でした。
また、<図3>の治療に関する情報収集では、「調べない」人は全体で37%で、63%はなんらかの形で調べていたことがわかりました。しかし、治療以外になると、自ら情報を調べない人の割合が増加し、費用に関しては全体で57.8%が「自ら情報は調べない」と回答しています。費用に対する不安は大きいにもかかわらず、自ら動いて情報収集をしている人はそれほど多くないことが明らかになりました。
情報収集の方法は性別や年代による差が見られる傾向があるため、同じ設問で性別・年代別での違いを見てみました。まずは治療に関するの情報収集先について、性別・年代別でどのような差があるでしょうか。
<図7>
治療について「自ら調べない」割合は男性では50代が最も多くなっています。男性の平均情報収集先の数は、40代以下では2.06個ですが、50代では1.00個と40代以下の約半分です。これは他の年代と比較しても低い値です。
一方、女性では「自ら情報は調べない」割合が、40代以下で25.8%、50代で32.7%、60代では46.0%と、年代が上がるにつれて高まる傾向が見られます。平均情報収集先の数については年代別で差は小さいです。
また、一般的に年代が上がると紙媒体の利用が増えるイメージがありますが、実際には病院のホームページや医療サイトなどのWebサイトは高年代層でも利用されています。年齢が高い=紙媒体利用者という単純なことではないようです。むしろ、「病院内のポスターや冊子」を最も利用しているのは男性の40代以下で、男性全体で19.1%に対して男性40代以下では34.4%と高い利用率を示しています。男性の場合、70代でも「病院内のポスターや冊子」を見ている割合は医療サイトや病院のホームページの半分以下にとどまっており、紙媒体よりWebサイトの方が利用されていることがわかります。
一方、女性は「病院内のポスターや冊子」やWebサイトの利用率に年代における大きな差は見られません。
特に男性では、年齢が高くなるほど紙媒体が情報収集先として使われなくなる傾向が見られます。
その他の項目についても見てみます。(<図8>~<図10>)
<図8>
<図9>
<図10>
<図8>は費用、<図9>は仕事・就労、<図10>はその他の悩みに関する情報収集先を示していますが、これらのデータから以下のような共通の傾向が見られました。
・男性:40代以下と50代以降で傾向が異なる。40代以下は比較的情報収集を行うが、50代以降では情報収集をあまり行わない傾向がある。
・女性:年代が上がるほどに情報収集をしない割合がが高くなる
特に、経済不安や費用に関する負担感が大きかった男性50代ですが、費用に関して「自ら調べない」割合が65.1%にのぼっています。第三回では男性50代は費用助成制度の認知・利用が少ないという結果をご紹介しましたが、今回の結果からも情報収集をあまり行っていないことがわかります。
また、仕事・就労に関しての情報収集も、男性50代はあまり行っていませんでした(「自ら調べない」割合は74.6%)。60代以降は現役世代から外れるため、仕事・就労に関する情報収集の必要性が低くなるのかもしれませんが、現役世代である男性50代でも情報収集をあまり行っていないという結果になりました。
第4回はがん患者さんの情報収集行動について取り上げました。
今回の調査から、がん患者さんが自ら積極的に情報収集を行う割合はそれほど高くないことが明らかになりました。
特に費用については、負担が大きいと感じているにもかかわらず、自ら費用について調べている人が少ないという結果が出ています。費用の負担を感じても、病院などでは高額療養費制度の案内が中心になっており、それ以外の情報は与えてもらうものと考え、それで十分だと感じるケースが多いのかもしれません。その結果、他の支援制度や選択肢について自ら情報を探す動きが少ない状況があると考えられます。
また、中断意向の有無で比較すると、中断者は中断意向者に比べ、自ら情報を調べている割合が低いということもわかりました。中断者は情報へのアクセスが意向者よりも少なく、十分な情報を得られていないことが、治療を諦めたり中断したりする一因となっている可能性があります。
さらに、中断者は中断意向者と比べ、書籍や患者会から情報を得ている割合が高くなっていました。紙媒体やWebサイトは情報が多岐にわたり、それぞれの内容が独立して散らばっているため、患者さんにとって「どうしたらよいかわからない」「面倒だ」と感じてしまうのかもしれません。その結果、情報が整理され、ある程度まとまっている書籍や患者会から情報を収集している可能性が考えられます。ただし、書籍の内容は情報の出典が明確でないものや、個人の体験談が中心のものも含まれるため、偏った情報を得て判断材料としている可能性もあります。
性別・年代別でも興味深い特徴がみられました。特に男性において、40代以下と50代以降で明確な傾向の違いが見られました。40代以下の男性は比較的情報収集をしている一方、50代以降ではあまりしていない傾向がありました。
背景として、情報は医師から提供されるものであり、自ら集めるものではないと考え、受け身の姿勢をとる人が多い可能性が考えられます。
男性50代は経済的不安が大きいにもかかわらず、費用に関する制度の認知や利用が少ないことは第三回で既述しましたが、今回はそれに加え自ら情報収集をあまり行っていないことがわかりました。このように情報へのアクセス機会が少ないことが、さらに不安を強める要因になっている可能性がうかがえます。
また、男性の場合は70代以上であっても、紙媒体よりもWebサイトを利用している割合が高い結果も確認されました。特に男性50代以上に対して情報を届ける際には、紙媒体ではなく医師を通じて伝達する方が効果的であると考えられます。
次回は、「患者さんの悩みの相談状況や問題解決状況はどうなっているか」について取り上げます。
今回の調査では、患者さんは治療にあたり不安を抱えているものの、自ら積極的に情報収集をしているわけではないということが明らかになりました。それでは、そうした不安について、誰かに相談する機会はあるのでしょうか。
病気の状況については医師と話すことが多いと思われますが、看護師やがん相談支援センターへの相談状況はどうなっているのでしょうか。また、相談した結果、問題解決はできたのでしょうか。
次回はこうした点について詳しく見ていきたいと思います。
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