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片頭痛患者の6割以上が未受診—その理由と生活への影響とは?

2025/02/06
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

株式会社クロス・マーケティンググループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:五十嵐 幹、東証プライム3675)のグループ会社である株式会社メディリード(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:亀井 晋、以下「当社」)は、2024年に構築したヘルスケアデータベース(Medilead MarketPlace)をもとに、片頭痛患者に着目したヘルスケアレポートをリリースしました。

片頭痛は単なる頭痛を超えた深刻な影響をもたらし、患者の日常生活や社会活動に大きな支障をきたす疾患です。その症状や影響は患者一人ひとりで異なるため、適切な治療法やサポートの提供が重要となります。本記事では、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するヘルスケアデータベース(Medilead Market Place)を活用し、片頭痛患者の特徴や傾向、日常生活への影響を掘り下げ、より良い支援を提供するための課題と解決策を探ります。

Medilead Market Placeの回答者属性

<図1>


<図2>

回答者の年代は15歳から99歳と幅広い属性となっており、代表的な疾患領域ごとで見ても分析するのに十分な人数から回答を得られているパネルです。

片頭痛の患者属性

<図3>


<図4>

今回の調査によると、片頭痛患者は女性の割合が男性の約2.5倍から5倍と高く、診断される年齢は中央値42.2歳で、39歳から51歳に集中していることがわかります。

片頭痛の罹患率と入通院の割合

<図5>

本調査では、全体の0.77%にあたる2,574人が「片頭痛が気になる」と回答しています。この中には、「片頭痛で1年以内に入通院した」と回答している971人が含まれる可能性があります。片頭痛が気になると回答した2,574人のうち、68.8%にあたる1,771人は医療機関を受診しておらず、受診率は31.2%にとどまりました。

入通院していない理由

<図6>

片頭痛が気になるが入通院していない人に理由を尋ねたところ、最も多かったのが「市販薬で対処できるから」(37.3%)でした。次いで「症状が軽いから」(17.9%)という理由が挙げられました。また、このくらいは普通だと思うから」(10.9%)といった回答も一定数あり、多くの人が症状を自己判断し、市販薬に頼って医療機関を受診していない現状がうかがえます。

一方で、「経済的な理由」(11.1%)、「通院しても続ける自信がない」(4.7%)、「入通院する時間がないから」(5.5%)など、経済的、時間的な理由から受診をためらう人も存在しています。

「病院へ行くことに抵抗があるから」(5.7%)、「信頼できる医師がいないから」(4.9%)という理由からは、医師や病院への不信感やハードルの高さが受診を妨げる要因となっていることが示唆されます。

日常生活への影響

<図7>

<図7>は、片頭痛が日常生活に与える影響を調査したものです。ここからは、片頭痛が身体的な不調を引き起こすだけではなく、労働や日常生活にも大きな制約をもたらしていることがわかります。たとえば、仕事のパフォーマンス低下(Presenteeism)は平均24.88%に及び、日常生活全体への影響(Activity Impairment)は46.18%に及び、患者の生活や生産性に大きな影響を与えていることが明らかになりました。

症状を自己判断や軽視している人が多い一方で、片頭痛が仕事の生産性や生活の質(QOL)を著しく低下させる病気であることを示唆しています。

受診のきっかけ

<図8>


<図9>

片頭痛患者が受診を決断する主なきっかけは「気になる症状が悪化した」(56.1%)、「気になる症状が出てきた」(49.6%) でした。その内訳を見ていくと、「頭が痛い」(93.5%)だけではなく、「こめかみから目のあたりが痛い」(43.9%)、「吐き気がする、おう吐」(42.1%)、「首がこる」(35.5%)、「肩がこる」(34.6%)、「目の前にチカチカもしくはギザギザした光が見える」(33.6%)など、頭痛以外の症状があった人も多く見られました。これらの結果から、患者が片頭痛を適切に認識することが難しく、頭痛以外の症状を片頭痛とは結びつけていない可能性が考えられます。

治療内容

<図10>

片頭痛治療では約96%が飲み薬での治療を経験しています。一方で注射薬の使用状況は約17%と比較的低いものの、処方されている薬剤を見ると抗CGRP抗体薬が一定の割合を占めており、片頭痛の予防治療として利用されていることがわかります。また、イミグラン(スマトリプタン)のような急性期の片頭痛治療に用いられる注射薬も確認されており、急性期と予防の両面からアプローチが行われていることがうかがえます。

薬剤名(注射薬)

人数

エムガルティ(ガルカネズマブ(遺伝子組換え))

6

アジョビ(フレマネズマブ(遺伝子組換え))

5

イミグラン(スマトリプタンコハク酸塩)

5

アイモビーグ(エレヌマブ(遺伝子組換え))

3

情報収集の傾向

<図11>


<図12>

<図11>~<図12>は、病気について情報収集をする際に利用するメディアについて尋ね、患者の属性別にまとめたものです。

患者の属性によって大きな差は見られず、すべての患者において、「医療機関のホームページ」が、利用度、信頼度のいずれも高い割合を示しています。患者が片頭痛に関する情報を得る際、信頼性の高い情報源を優先していることがわかります。

「テレビ」「製薬会社のホームページ」「その他インターネットのホームページ」も、医療機関のホームページに次いですべての層で高い利用率を示しています。しかし、テレビは、医療機関のホームページや製薬会社のホームページに比べると、利用度に対しての信頼度が低い傾向があります。

YouTubeやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSや動画サイトの利用率は全体的に低いものの、一定の割合を占めています。特にYouTubeは、「片頭痛が気になる」「気になるが入通院していない」層で比較的高い利用率を示していますが、信頼度は低く、情報収集手段としてはそれほど重要視されていないことがうかがえます。しかし、若年層を中心に利用が増えているこれらのメディアは、今後の啓発活動における潜在的な可能性を持つと言えます。

まとめ

本調査の結果から、片頭痛は単なる身体的不調ではなく、仕事のパフォーマンスや日常生活に大きな影響を与える疾患であることが明らかになりました。それにもかかわらず、多くの患者が片頭痛を軽視し、「市販薬で対処できる」「症状が軽い」などの理由で医療機関への受診を控えている現状も浮き彫りになりました。さらに、片頭痛に関する情報収集では、「医療機関のホームページ」などの信頼性の高い情報源が主に利用されているものの、専門的な情報を避け、「健康系のまとめサイト」や「テレビ」など簡便性を重視する傾向も見られました。

このことから、患者に適切な治療を促すためには、信頼性の高い情報をわかりやすく提供する取り組みが求められます。特に、頭痛以外の症状や片頭痛の影響を広く認識させることが重要です。適切な受診を促進し、片頭痛がもたらす生活や仕事への支障を軽減するためには、患者一人ひとりのニーズに応じた情報発信や支援策の強化が必要です。今後は、テレビや医療機関のホームページといった既存の情報源を活用しつつ、SNSや動画プラットフォームを補完的に利用することで、特に若年層や未受診者へのアプローチを強化することが期待されます。

「片頭痛」についてのレポートは、以下の記事よりダウンロードいただけます。

■メディリードの ヘルスケアデータベースについて
 
メディリードのヘルスケアデータベースは、国内最大規模の疾患に関するアンケートデータであり、(1)一般生活者の疾患情報に関する大規模調査、(2)何らかの症状・疾患で入通院中の方の主疾患に関する深掘り調査(追跡調査)から構成されています。回答者への追跡調査は、より深いインサイトの獲得を可能にします。また、電子カルテ情報やレセプトデータなどの大規模データベースには含まれないデータも多く、ヘルスリテラシー向上の意義など、社会的に重要な意味を持つ分析も可能です。2019年より、100を超える症状・疾患を調査に追加し、より幅広い領域でご活用いただけるようになりました。また、同年調査より研究倫理審査委員会(IRB)の審査も通し、疫学的研究の資料としても利用していただきやすくなっております。

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<例> 「医療関連調査会社のメディリードの同社が保有する疾患に関するデータベースを用いたコラムによると・・・」


自主調査レポート
この記事の監修者
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部
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