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関節リウマチとは?原因や症状から最新治療法までくわしく解説

2024/12/02
メディリード / マーケティング&コミュニケーション部

株式会社メディリードでは、当社が保有している国内最大規模の疾患に関するヘルスケアデータベースを活用し、コラム記事としてお届けしています。

関節リウマチは、手足の関節に炎症を引き起こす慢性的な自己免疫疾患で、日本では人口の約0.5~1%が罹患していると言われています。関節リウマチの患者にとって、慢性的な痛みや日常生活への影響が大きく、治療やサポートが欠かせません。本記事では、関節リウマチの基礎知識から治療法、患者が直面する課題について、35万人の患者アンケートからなるメディリードマーケットプレイス(以下、MMP)のデータも交えながら解説いたします。

関節リウマチとは

関節リウマチとは、主に手足の関節で発症しやすい、関節の滑膜(かつまく)が炎症を起こす慢性的な疾患です。滑膜(かつまく)は、関節の内側にある薄い膜のことを指し、関節を慎重に動かすための重要な役割を担っています。この炎症が進行すると、軟骨や骨が破壊され、関節の機能が低下し、最終的には関節が変形してしまうことがあります。腫れや激しい痛みを伴い、関節を動かさなくても痛みが生じるのが特徴です。

関節リウマチ患者の年齢・性別分布

<図1>は、MMPで聴取したデータをもとに、関節リウマチの患者の年齢、性別の分布をまとめたものです。

<図1>


性別で見ると、女性が患者全体の7割を占めており、女性に発症が多いことがわかります。
また、年代では50代から60代にかけて発症率が高いという結果となりました。

関節リウマチの原因

関節リウマチは、IL-6やTNFαといったサイトカインが増えることで発症します。
サイトカインとは、細胞が分泌するタンパク質で、免疫系や炎症反応、細胞の成長や分化など、体内の様々な生理的な反応を調整する働きを持っています。サイトカインが関節の軟骨や骨の細胞に結合すると、細胞内に炎症を引き起こす信号が伝わり、それにより関節の腫れや痛み、破壊が進むと言われています。

サイトカイン増加の背景には、遺伝や、喫煙などの環境要因、免疫システムの異常などが関係していると推測されていますが、詳細はわかっていません。

関節リウマチの症状

関節リウマチの症状は、関節部位の症状と全身に広がる症状に分けられます。

関節における症状

・関節のこわばり
特に朝に関節がこわばり、とても痛くなる「朝のこわばり」があります。このこわばりは数十分から数時間続くことがあり、関節リウマチの初期症状としてよく見られます。

・関節の腫れと痛み
同じく初期症状として多く現れるのが、関節の腫れや痛みです。 特に手指、手首、膝などの関節に多く見られ、左右対称に症状が現れることが特徴です。

・関節の変形
炎症が進行すると、軟骨や骨が破壊され、関節が変形する可能性があります。手の指の変形や、指の関節が曲がってしまうような症状が見られることもあります。

全身に及ぶ症状

・倦怠感やだるさ
初期には、全身の免疫反応により、疲労感や体がだるく感じることがあります。これは炎症によるもので、発熱がみられることもあります。

・体重減少
炎症による代謝の変化や食欲低下により、体重が減少することもあります。

・リンパ節の腫れ
一部の患者では、体内の炎症反応が原因でリンパ節が腫れる場合もあります。

では、関節リウマチの患者はどの程度痛みを感じているのでしょうか。

<図2>


<図2>は、痛みや不快感について、その日の状態をもっともよく表しているものを選んでもらい、関節リウマチ患者と全体を比較したものです。
「痛みや不快感はない」と回答した人は、全体の62.9%に対し、関節リウマチ患者ではわずか20.0%で、5人に1人の割合でした。また、関節リウマチ患者の約半数が、「少し痛みや不快感がある」と回答しており、約5人に1人が、「中程度の痛みや不快感がある」と回答しています。さらに関節リウマチ患者の1割程度が、「かなりの痛みや不快感がある」「極度の痛みや不快感がある」と回答しています。これはいずれも全体と比較して高い割合を示しています。

日常生活への影響はどうでしょうか。

<図3>


<図3>は、ふだんの活動について、その日の状態をもっともよく表しているものを選んでもらった結果です。「ふだんの活動を行うのに問題はない」と答えた関節リウマチ患者は約半数でしたが、全体では86.6%と、差が大きい結果となっています。また、関節リウマチ患者の31.8%は、「ふだんの活動を行うのに少し問題がある」、15.5%は中程度以上の問題があると回答しています。

<図4>


<図4>は、移動の程度について、その日の状態をもっともよく表しているものを選んでもらった結果です。「歩き回るのに問題はない」と回答した人は関節リウマチ患者の約半数程度にとどまっています。約半数は、歩行に困難を抱えていることがわかります。

このように、関節リウマチ患者は、日常生活の活動や移動においても大きな影響を受けていることがわかります。

関節リウマチの治療

関節リウマチの治療は、大きく分けて、薬物治療、リハビリテーション、手術療法の3つがあり、必要に応じて組み合わせて行われます。

薬物療法

関節リウマチ治療の基盤となる方法で、痛みや炎症の緩和、病気の進行を遅らせることを目的に用いられます。詳しくは、次項で解説します。

リハビリテーション

リハビリテーション療法は、関節リウマチ患者の関節機能を維持・改善し、日常生活の自立を支援することを目的としています。リハビリテーションは、主に、理学療法と作業療法に分けられます。

•理学療法(Physical Therapy):関節の柔軟性や筋力を高めるエクササイズ、温熱療法や冷却療法などを用いて、痛みやこわばりを軽減し、関節の可動域を向上させます。

•作業療法( Working Therapy ):日常生活の動作指導や補助器具の使い方、関節に負担をかけない動作や姿勢を学び、生活の質(QOL)の向上を支援します。

手術療法

薬物治療やリハビリテーションで改善が見られない場合、手術が検討されます。手術の目的は、痛みの軽減や機能回復です。

•滑膜切除術:関節の炎症部分である滑膜を除去する手術で、初期の患者に行われることが多いです。

•関節形成術(人工関節置換術):関節の破壊が進行し、機能が著しく低下した場合に行われます。膝や股関節などに人工関節を挿入し、可動域の改善や痛みの軽減を図ります。

<図5>


<図5>は、関節リウマチ患者に、これまでに経験したことがある治療を尋ねた結果です。
ほぼすべての人が飲み薬を処方された経験があり、薬物治療が中心であることがわかります。リハビリテーションや手術療法を含む、薬物療法以外の治療を経験した割合は、わずか6.5%でした。

【T2Tアプローチ】
関節リウマチは、以前は、痛みや炎症を抑える対症療法が治療の中心でした。しかし今は、早期に適切な治療を開始することによって、寛解(症状が軽減またはほぼ消失している状態)を目標とした治療が可能となってきました。

T2Tアプローチ(Treat to Targetアプローチ)とは、関節リウマチの治療に関して、患者が達成すべき目標を明確に設定し、前向きに治療を計画・実行する方法です。

T2Tアプローチの基本的な考え方は、以下の4つです。

A.関節リウマチの治療は,患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである

B.関節リウマチの主要な治療ゴールは,症状のコントロール,関節破壊などの構造的変化の抑制,身体機能の正常化, 社会活動への参加を通じて,患者の長期的QOLを最大限まで改善することである

C.炎症を取り除くことが,治療ゴールを達成するために最も重要である

D.疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標達成に向けた治療(Treat to Target;T2T)」は, 関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である

出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/9/103_2321/_pdf

関節リウマチの治療薬

関節リウマチの治療薬は、以下のように分類されます。

経口薬(飲み薬)

・消炎鎮痛薬(NSAIDs):プロスタグランジン合成阻害を介して鎮痛作用を発揮します。痛みや炎症を抑えるために使用されますが、病気の進行は抑制できません。

・抗リウマチ薬(DMARDs):メトトレキサートなど用いられ、免疫反応を中心に、関節破壊の進行を遅らせます。関節リウマチの治療薬の中ではもっとも多く使用されます。

・副腎皮質ステロイド:強力な抗炎症作用があり、急性期の症状を中心に抗リウマチ薬とともに補助的に用いられます。ただし、副作用を考慮し、短期間かつ少量で使用されることが一般的です。一部、注射で投与される薬もあります。

・JAK阻害薬:分子標的薬の一種です。分子標的薬とは、関節の炎症を考える原因となる特定の分子(主にサイトカインと呼ばれる免疫系の調整物質)に対して直接作用する治療薬のことです。JAKとは「ヤヌスキナーゼ(ヤヌスキナーゼ)」の略で、炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要な酵素です。JAK阻害薬は、このJAK酵素の働きをブロックすることで、炎症の伝達を抑え、結果として免疫反応や炎症反応を軽減させます。

<図6>


<図6>は、関節リウマチ患者に、飲み薬の種類について尋ねた結果です。抗リウマチ薬(DMARDs)が最も多く、抗リウマチ薬が関節リウマチ治療において主流であることがわかります。調査人数である199人を超える298件であることから、多くの人が複数の抗リウマチ薬を処方されていることが読み取れます。続いて消炎鎮痛薬(NSAIDs)、ステロイドと続いています。比較的新しい治療薬であるJAK阻害薬は18件で、まだ使用頻度は低いことがわかります。

非経口薬(注射など)

・生物学的製剤:生物学的製剤は、体内の炎症を考える特定のサイトカイン(免疫に関わる物質)に作用して炎症を抑制します。注射での投与が一般的です。こちらも、JAK阻害薬と同じく分子標的薬に分類されます。

先の<図5>において、生物学的製剤の投与に該当する「注射をしてもらった」と回答した人は28.0%で、全体の3割に及びました。「注射薬を処方された」は27.5%、「点滴をしてもらった」は12.0%で、複数回答のため実際の重複が考えられるもの、最低3割以上の患者が注射による治療を受けていると推測できます。ただし、ステロイド注射も一部含まれる可能性があるため、これらすべてが生物学的製剤とは限らない点にご留意ください。この結果から、生物学的製剤での治療が一定の割合を占めていることがわかります。

生物学的製剤には以下の種類が挙げられます。

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商品名

一般名

薬効分類名

ヒュミラ

アダリムマブ

ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤

インフリキシマブ

レミケード

抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤

エンブレル

エタネルセプト

完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤

シムジア

セルトリズマブ ペゴル

TNFα阻害薬(ペグヒト化抗ヒトTNFαモノクローナル抗体Fab’断片製剤)

シンポニー

ゴリムマブ

ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤

アクテムラ

トシリズマブ

ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体

ケブザラ

サリルマブ

ヒト型抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体

オレンシア

アバタセプト

T細胞選択的共刺激調節剤

リツキサン

リツキシマブ

抗CD20モノクローナル抗体

まとめ

関節リウマチは、自己免疫の異常により手足の関節に炎症が生じ、痛みや腫れ、さらには関節の変形を引き起こす慢性疾患です。特に50代から60代の女性に多く見られます。関節リウマチ患者の多くは、痛みや不快感により日常生活に支障をきたしていることが当社のMMPの調査からもわかりました。近年では、分子標的薬や生物学的製剤が治療に導入され、炎症の原因となる特定の分子やサイトカインに直接作用することで、症状の軽減が期待されています。

「関節リウマチ患者」についてのレポートは、以下の記事よりダウンロードいただけます。

関節リウマチ患者に関するヘルスケアレポート

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この記事の監修者
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