株式会社クロス・マーケティンググループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:五十嵐 幹、東証プライム3675)のグループ会社である株式会社メディリード(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:亀井 晋、以下「当社」)は、炎症性腸疾患(IBD)患者の治療の満足度及びその背景となる医療従事者とのコミュニケーションなどについての自主調査(2023年)を行い、426名からの回答を得ました。
 
近年患者数が急増し、社会的影響も大きい炎症性腸疾患(IBD)の患者さんに焦点を当て、
「なぜ患者さんは、治療を中断したくなってしまうのか」
「特に課題のありそうなセグメント(年代)はどこか」
をテーマに、患者さんの治療の満足度や自身の治療へのかかわり度、主治医や看護師とのコミュニケーションを切り口として、5回にわたって見てまいりました。
今回は総括として、これまで明らかになったことを振り返るとともに、そこから得られる洞察についてまとめたいと思います。
これまでの記事については以下をご覧ください。
 
なぜ患者さんは、治療を中断したくなってしまうのか
今回の調査では、IBDの患者さんのうち、治療中断意向あり者(現在治療をやめたいと感じている人及び過去に治療をやめたくなったことがある人)と中断意向なし者(治療をやめたいと思ったことのない人)の違いを比較することで「なぜ患者さんは治療を中断したくなってしまうのか」という問いについての理解を明らかにすることを目的として調査をしました。
治療中断意向あり者の特徴
今回の調査では、治療中断意向あり者はなし者と比べ、以下の特徴があることがわかりました。
- 症状は重めで、仕事や学業、日常生活などに影響を受け、QOLが下がっている
- 治療以外についても医師とコミュニケーションをしたいと思っているが満たされていないと感じている
- 看護師とのコミュニケーションも不十分であり、特に治療以外についてのサポートに不満を持っている
- 中断意向あり者は病気や薬についての知識、つまり病態そのものや、「薬が効くとは限らない」などについての知識は、中断意向なし者よりもある
当社は「治療や薬剤の情報についての理解が深いほうが、中断意向は低くなる」という仮説を立てていたため、この四番目の点については、仮説とは異なる結果が示されました。
治療継続のモチベーション低下の背景
より知識があるにも関わらず、なぜ、治療継続のモチベーションにはつながらないのでしょうか。この結果が意味することについて読み解くと、背景に以下の点があると考えられます。
- 「主治医の指示を守ることで、長期の寛解を達成できる」と思えていない(同意度が低い)
- 病態そのものや、「薬が効くとは限らない」などの事実そのものを知ってはいるものの、「主治医の指示を守ること」による「長期の寛解」と、「日常生活にかかわるQOLの向上にどうしたらつながるのか」の理解がない
- 治療継続のモチベーションを保てず、むしろ「治療をしても薬が効かないのなら治療をしても意味がない」という考えにつながってしまう
結果、治療をやめたいと思ってしまう状況にあると考えられます。
特に課題のありそうなセグメントはどこか
今回の調査では、特に課題がありそうなセグメントは40代という結果になりました。
40代は今回の調査範囲(治療や結果としての自身の状態、医師や看護師とのコミュニケーション)において全体的に満足度が低く出ていましたが、中でも、以下のような特徴があることが明らかとなりました。
- 仕事や生活についての悩みが深い
- 仕事や家庭で忙しく、お金もかかる年代なので、治療にあたっての費用の負担感も大きい
- 疾患によりQOLが下がっていることが大きな悩みとなっているにも関わらず、医師にはそこまでのケアはしてもらえず(不十分と感じ)、何となくの不満を抱えている
このように、40代は他の年代よりも悩みや不満がある一方で、以下の特徴も持っています。
- 医師とのコミュニケーションにははっきりと「不満」とまでは思っていない
- 生活についての悩み相談は看護師よりもむしろソーシャルワーカーや臨床心理士にしている
このことから、40代は「悩みは深い」一方で「医師や看護師を相談相手の選択肢にない状態」であるのかもしれません。
IBD患者さんの治療継続モチベーションを保つために必要なこととは
以上を踏まえ、主に患者さんにアプローチする側の方々が患者さんの治療継続モチベーションを保つために必要なこととして、以下の二点を挙げさせていただきます。
- 「薬の効き方」「病態」だけではなく、「患者さんのQOLを上げる」観点からコミュニケーションをすることが必要である。
- 主治医の指示を守ることが患者さんのQOLを上げるために重要であることを伝える
- 「薬は効くとは限らないが、あきらめずにこうすることで長期の寛解が達成できる」という希望を与えること
 
- 患者さんの悩みや困りごとの相談先として、看護師の役割を拡大していく必要がある。
- まずは、患者さんのQOLを上げるために、医師だけではなく、看護師も頼りになる存在であることを患者さんに認識してもらうことが重要になる
 
以上、今回の総括を含めて全6回にわたり「IBD患者さんが、治療継続のモチベーションを維持していくために必要なこととは」について見てきました。いかがでしたでしょうか。
今回の調査及び本記事が、IBD患者さんの理解を深めるための一助となれば幸いです。
 
IBD患者さんに関する詳細な分析レポートは以下よりご覧いただけます。
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<例> 「医療関連調査会社のメディリードの同社が保有する疾患に関するデータベースを用いたコラムによると・・・」