前回(第4回)では、片頭痛患者さんが処方薬選択や治療を進めるうえで、患者さん自身の関わりはまだ限定的であることがわかりました。
では、患者さんは処方薬にどの程度満足しているのでしょうか。
また、自らの希望を伝えることは少ない現状ではあるものの、希望する薬がある場合には、自ら相談をするのでしょうか。
処方薬満足度
処方薬を服用(注射薬投与を含む)している人を対象に、処方薬の満足度について尋ねました。質問文は以下の通りです。
「あなたは現在服用されている頭痛のお薬(注射含む)の効果についてどれくらい満足していますか。複数服用/投与されている方は全体の印象をお答えください」(単一回答)
まずは結果を見ていきます。<図4>
<図4>
処方薬の満足度は、1年内受診あり者全体ではTOP2 BOX(「非常に満足している」「満足している」計)で約4割、「やや満足している」を含めたTOP3 BOXで約8割となっています。
「非常に満足している」人は全体で1割程度ですが、予防薬使用者では高めで15%となっています。
一方で、解熱鎮痛剤使用者で「非常に満足している」人は6.3%で、片頭痛薬使用者の半分以下に下がります。片頭痛薬を使用している人の方が満足度は高めで、その中でも予防薬使用者で満足度が高いことがわかります。
処方薬服用後の状況
処方薬の満足度に関わる要素として、服用/投与後にどのような状態になるのかを詳しく見ていきます。
処方薬服用後の状況(処方薬服用者全体ベース)
処方薬服用後の状況について、処方薬を服用/投与している人(注射薬投与者含む)に尋ねた結果が<図5>です。
設問は「処方薬を服用/投与した後の状態について、Aに近い(1)~Bに近い(5)の5段階で評価してください(各単一回答)」という形式です。
<図5>
<図4>で見たように、処方薬の効果についての総合的な満足度は、「やや満足」まで含めたTOP3 BOXで8割を超えていました。
一方で、<図5>の処方薬服用後の状況を見ると、どの項目でもネガティブ寄りの回答(Aに近い1~2計)をしている人が2~3割程度存在していることがわかります。なかでも、「服薬/注射しても頭痛が改善するのにとても時間がかかる」と回答している人(1~2計)が33.7%と3割程度は存在しており、症状改善までの時間に課題を感じている人が一定数いることが示されました。
また、③の頭痛が起きる頻度(日数)、服薬の頻度・錠数に関してはポジティブ寄りの回答が3割程度(Bに近い4~5計)にとどまっており、そもそも改善している人がかなり少ないことがわかります。これは、予防薬使用者が少ないことにも起因していると思われます。
処方薬服用後の状況(処方薬満足者ベース)
<図6>は処方薬満足度TOP2(「非常に満足している」「満足している」)回答者に限定して、処方薬服用後の状況を確認した結果です。
その結果、処方薬に比較的高い満足を感じている人でも、服用後の状況についてネガティブ寄りの回答(1~2計)が2割前後(項目によっては2割台後半)見られました。つまり、処方薬に「満足」と回答していても、服用後の状態に課題を感じている人が一定数存在していることがわかります。
<図6>
市販薬/処方薬服用後の状況比較(各満足者ベース)
<図7>は市販薬と処方薬の満足者同士で、服用後の状況を比較したものです。①~⑤の各項目で比較しており、上段が市販薬満足者、下段が処方薬満足者の結果を示しています。
回答傾向を見ると、頭痛の改善度(①)や改善の速やかさ(②)では処方薬使用者の方がポジティブ寄りの回答(4~5)が少なく、ネガティブ寄りの回答(1~2)が多い傾向が見られました。この背景には、処方薬を服用している人のほうが、もともとの頭痛の重症度が高い可能性があると推測されます。
<図7>
予防薬/非予防薬服用後の状況比較(各満足者ベース)
<図7>と同様の内容を、処方薬服用者の中で予防薬と非予防薬服用者(どちらも満足者)との比較を示したものが<図8>です。(上段が予防薬、下段が非予防薬服用者の回答)
<図8>
回答傾向を見ると、①「服薬/注射すると頭痛が改善している(痛みを感じない)」や②「頭痛は速やかに改善している」、④「気になる副作用はない」、⑤「頭痛があったらすぐに薬を服用/注射する」では、予防薬服用者の方がポジティブ寄りの回答(4~5計)が低く、ネガティブ寄りの回答(1~2計)が高い傾向がみられます。これは、予防薬服用者の方が頭痛の重症度が高い可能性があるためと推察されます。
一方で、③「頭痛が起きる頻度(日数)もしくは服薬する頻度・錠数が減ってきている」については、予防薬服用者の方がポジティブ寄りの回答(4~5計)が46.1%と、非予防薬服用者(40.9%)よりやや高くなっています。発作頻度や服薬量の減少という観点では、予防薬使用による効果が表れやすい可能性がうかがえます。
前項でも見たように、頭痛の日数・頻度については、市販薬であっても処方薬であっても、改善している人(Bに近い4~5計の人)が相対的に少ない傾向が見られます。 その背景には、頭痛の日数・頻度を減少させる予防薬自体の服用者が限られていることが一因として考えられ、予防治療の必要性がうかがえます。
処方薬の選択において、患者さん自身が自らの希望を伝えることは少ないという調査結果を第4回でご紹介しました。では、希望する効果や服用方法の薬がある場合、患者さんは医師に相談するのでしょうか。
頭痛薬選択の際の重視点
まず、患者さんが頭痛薬を選ぶ際に、どのような点を重視しているのかを見ていきます。
<図9>は、「あなたは頭痛の薬を選ぶときに、どんな点を重視しますか。最も重要なものを5つまでお選びください。」と尋ねたものです(複数回答)。薬を使用したことのない人も含め、全員を対象にお聞きしました。
<図9>
「症状が出た時にすぐに改善できる」が全体では最も高くなっています(50.3%)。頭痛薬の選択においては、症状を速やかに抑えられることが重視されていることがわかります。一方で、第1回で見たように、「予防治療が勧められる」状態にある患者さんが全体で9割近くに達するにもかかわらず、「今後の頭痛の日数が減少する(予防ができる)」は20.3%で、「症状が出た時にすぐ改善できる」の半分以下となっています。
同様に、頭痛薬選択の重視点を性・年代別でみてみたのが<図10>です。
特に女性の40代以降で「症状が出た時にすぐ改善できる」が高くなっています。女性40代以降は、受診経験なしか、片頭痛薬使用はしているが予防薬非使用者の多いセグメントでした。予防治療が勧められる程度に日常生活に支障がある人が多いと考えられる一方で、特に40代以降女性では「都度対応」に頼る傾向が強いことがわかります。
<図10>
希望する薬があった場合の医療機関受診・相談意向
では、希望する薬がある場合、医療機関を受診して医師に相談したいと考える人はどの程度いるのでしょうか。
<図11>は、「もしあなたの希望するような薬があるとしたら、医療機関を受診して相談したいと思いますか。(単一回答)」と尋ねた結果です。
<図11>
受診経験がない人であっても、TOP2(「非常に相談したい」「相談したい」計)では2割程度、「まあ相談したい」まで含めたTOP3では7割近くが「希望する薬があれば相談したい」と考えていることがわかります。受診経験あり・1年内未受診者ではTOP2が3割程度、TOP3では8割を超えています。
この結果から、受診経験のない人や受診を途中でやめてしまった人の中には、自分に合う薬の存在を知らないために未受診となっている(もしくは途中で受診をやめてしまった)可能性が示唆されます。
治療薬選択などについて自ら相談したことのない理由:希望する薬がある場合の相談意向別
希望する薬があれば相談したいと思っている人と、希望する薬があっても相談はしたくないと考える人では、「薬剤選択について自ら相談したことのない理由」にどのような違いがあるのでしょうか。
<図12>は、「診療時にあなたご自身から治療薬の選択や評価、治療変更に関することで医師に相談したことがないのはなぜですか?」と尋ねた結果です(複数回答)。
<図12>
希望するような薬があった場合に「非常に相談したい」と回答した人では、治療選択などについて自ら相談したことがない理由として「どのように相談したらよいかわからなかったから」が44.6%と最も高くなっています。相談したい内容があっても、どのように説明すればよいか、希望をどのように伝えればよいかがわからず、相談に至らない人が多いことがうかがえます。
一方、「まったく相談したくない」人は「医師に聞いても新しい情報や対策は得られないと思ったから」が2割を超えています。受診経験の中で医師に相談しても得られるものが少ないと感じた経験をしている可能性があります。